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サペリアーズ-空想科学怪奇冒険譚-  作者: 才 希
第1章「苦難の大学生とお化け屋敷の主」(シーズン壱)
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第1話「遭遇」(7)

 大学の校門前に光太、涼、高山はお化け屋敷の主の到着を待つ。


「先輩、なんであの人をここに呼ぶんですか?」

「ふむ・・・まぁあいつは一応周りには秘密にしているらしいが、どうせお前たちは一緒に住むんだ。遅かれ早かれバレると思うから言うぞ・・・・実はな・・・あいつは不思議な力を持っているんだ。」


と涼は小声で光太に耳打ちした。


「ふ、不思議な力?」

「そうだ。過去や未来の出来事を見る力・・・そう簡単にいうと超能力というべきか・・・」

「ち、超能力?」

 

 漫画や映画とかでよく聞くが普段ではそう聞かない言葉を聞いて「そんな馬鹿な・・・・」と光太は思ったが彼の屋敷に行った時の事を思い返した。


「俺の食べた物や、家の場所を言い当てたのもその超能力のおかげなんですか?」

「そうそう。お前の彼女いない歴=年齢って事を言い当てたこともな!」

(そこは忘れてくれよ!)

「勇兄もあいつと知り合いでね。何回か捜査協力してもらったんだよな!」

「そうなんですか!?」

 

 光太は横にいる刑事を見た。高山は機嫌が悪そうな声で答えた。


「・・・・事実だ。あいつは普通の人間にはない力を持っている事は確かだ。行方不明になった人間がいてあいつの指示した場所を捜索したら発見されたこともあった。殺人事件の真犯人を言い当てたこともあった。」

(そうなのか・・・)


 信じられない・・・・という表情をする光太に向かって高山は


「だがな!俺はあいつの能力を完全に信用した訳じゃないぞ!これまで言い当てたのは、偶偶でなにかの、まぐれだったなんて可能性も捨ててはないぞ!」と慌てて補足した。




「おはよう」

 

 15分後、光太達の目の前にお化け屋敷の主・・・早先見千里が大学の校門前に現れ、使う時間帯を間違えている無気力な挨拶をした。今日は「アイアンマン」のTシャツを着ていた。


「おはようじゃない!」


 そんな千里を見て涼が怒鳴る。


「うるさいなぁ!お、君は天野君じゃないか。」


と千里は光太の顔を見る。相変わらず彼は透き通った目をしていた。


「早先見ぃ・・・久しぶりだな・・・・」

「おやおや、こちらは高山警部じゃないですか。」

 

 二人の横で腕を組んで立っている刑事の存在にも千里が気付く。


「警部じゃない!警部補だ!」

「あれ?まだ出世していないんですか!?ダメじゃないですか!」

「大きなお世話だ!」


 パトカーでの話からも察するに高山警部補は千里を余程嫌っているらしい。


「なんか人が研究棟に群がっているね。制服姿のお巡りさんも沢山いるねぇ・・・何があったのかい?」


と呑気な声で質問する千里。

 涼は今までの経緯を千里にした。


「何!?天野君が連続殺人事件の容疑で全国に緊急指名手配だって!?」

(なんで罪状がかなり大きくなっているんだよ!?)

「そうじゃないだろ!」と突っ込む涼。

「冗談だよ!アメリカンジョーク!」

 

 千里は笑いながら言った。

(どこにアメリカ要素が!?大丈夫なのだろうか・・・)と光太は不安になってくる。


「あ、あの・・・先輩から早先見さんには不思議な力があるって聞きました。本当なんですか?もしそうなら俺の無実を証明してください!お願いします!」


と光太は千里に頭を下げた。

 その言葉を聞いて千里は涼を睨んだ。


「涼、天野君に僕の力の事喋ったの!?」

 

 涼は詫び入れる様子もなく


「いやぁ悪い悪い。でもさぁ今回の一件を解決すれば天野は同居してくれるってさ。」


と言った。

「マジでぇ!?」

 驚喜する千里。

「・・・・・」檻の中に入るよりはこの男との共同生活の方がマシだ!と頭の中で光太は繰り返した。


「千里、お前の未来の同居人がピンチだ!力を貸してやってくれ!」

「わかったよ。じゃあ研究棟に行こうか。」


 4人で研究棟に向かう。野次馬をかき分けながら歩いていく。先頭の千里が黄色いテープ潜ろうとした時だ。一人の若い制服警官が「コラ!勝手に入っちゃいかん!」と注意してきた。

「いや、彼らはいいんだ。」


 背後の高山が警官を制した


「高山警部補!?しかし・・・」

「いいんだ!彼らは今回の事件の重要参考人兼協力者だ。このことは現場にいる警察関係者全員に伝えろ!あと、署にいるはずの課長には黙っていろ!いいな!」


と怖い顔で制服警官に怒鳴った。


 波平の教授室にやってきた。

 部屋の床にはA、B、C・・・・書かれた黒いプラスチックの小さなプレートが立ててあり、波平が倒れていた場所は白いテープで人型が作ってあった。血も残ったままだ。

(これもまるでドラマだな・・・・あそこに波平が倒れていたんだよな)と先程の光景を思い浮かべながら光太は考えた。

 部屋は高山のはからいで人払いがしてあり、光太、高山、涼、千里の4名のみがいた。高山の指示により捜査官や鑑識の人間達は部屋を出て行く際、彼らを怪訝な顔で見つめていた。


「さぁ早速やってくれ。」

 

 涼が千里を促す。


「お願いします!」

 

 光太も続けて懇願する。


「わかった。わかった。」


 千里はじっと部屋中を見つめる。


「・・・・・・・・・」沈黙が部屋全体に流れる。

しばらくして、


「ダメだ。見えない。」


と困った顔して千里が呟いた。


「えええ!?」光太がびっくりする。(おい話が違うぞ!)


「どうした?千里?調子悪いのか?」

 

 涼の顔が覗き込む。


「う~ん・・・なんというか・・・スイッチが入らない?というべきか」


と千里はさらに困った顔をした。


「ス、スイッチ?この前は俺の食事メニューや家の場所言い当てたじゃないですか!」

「そうだ!天野に彼女がいないことも言い切ったじゃないか!」


と光太の言葉にそう続ける涼。


(それはもういいだろ!)


「あの時は半分寝ぼけていたから力が暴走しているような状態だったというか・・・・。天野君には彼女がいない云々は確か彼が、僕が消し忘れたAVが映る画面をガン見していたから「ああこいつは女慣れしていないナチュラルボーイなのだろう。」と推測混じりで言ったんだけどな。やっぱり合っていたのかい?」


 千里は先日の件を語った。


(そ、そうだったのか・・・)

 自分は気づかないうちにAVを凝視していたのか・・・そんな事を指摘されて今さながら光太は恥ずかしくなってくる。


「どうしたらそのスイッチが入る?」

 

 涼が千里に聞く。


「うーん・・・・そうだ涼、僕顔を叩け!」


「え!?」とまさかの千里の言葉に涼は驚く。


「マゾ趣味があったのかよお前!?」

「違うよ。嫌いじゃないけど。多分、なにか刺激というか、ショックが入れば脳が覚醒してスイッチが入り、能力が発動するかもしれない。」

「そうか・・・思いっきりやっていいのか!?」


と確認する涼。その言葉には若干嬉しさが混ざっているような風にも聞こえた。

 「ああ!」と千里が言い切る前に、彼の顔面には「オラァア!」という叫びと共に涼の強烈な右手ストレートが入った。鈍い音が部屋に響く。千里は自分の顔を両手で押さえうずくまり「痛あああああああ!」と絶叫した。

(うわぁ・・・・)とその光景を見て光太はドン引きした。


「どうだ?スイッチとかは入ったか?」

「痛いじゃないか!」

 

 千里は涙目になりながら涼を睨んだ。


「お前が自分を殴れ!って言ったじゃねえかよ!」

「僕は叩け!と言ったんだ!殴れとは言ってない!それに少しは加減しろ!」

「似たようなもんだろが!」

 

 千里と涼は口論を開始していた。

(やっぱり大丈夫かな・・・この人に任せて・・・)とより不安な気持ちに襲われる光太。


「お前ら・・・どうでもいいけど早くしろよ・・・・時間がないぞ!時間が!」


 そのやり取りを見て高山が呆れながら言った。


「おうそうだった。1時間しかないんだった。で、どうなんだ?スイッチとやらは入ったか。」


と涼は千里に再確認した。


「ああ・・・多分」

 

 赤くなった鼻を撫でながら彼は答えた。


「じゃあやりますか。」


 部屋を再度見回し、部屋の中を歩き始めた。

「どうだ?なにか見えたか?」と催促する涼に千里は

「ちょっと黙ってて!」と強い口調で言った。

 

 光太も固唾を飲んでそれを見守っていた。千里の黒い透き通った目が光っているようにも見えた。

(何が始まるんだろ・・・・)と光太が考えていた時だ。


「天野君!」


 千里の言葉に光太は我に返る。


「はい!」

「君がこの部屋を訪れた時間は18時少し前だよな?」


と千里が確認してきた。


「そうです。」


と光太は答える。


 それを聞いて、千里は空中を両手で何かを探っているような仕草をした。「・・・違う。これじゃない。これでもない。あれでもない。それでもない・・・・」何かをぶつぶつ呟く。   そして、「・・・・見えた!」と小さく言い、彼は目を閉じた。


「この部屋で・・・夕暮れときの部屋で・・・波野教授は椅子に座って面と向かって誰かと喋っている・・・・」


 千里が語り始めた。


「誰か?」


と高山が聞く。

「うーん女だ。女と喋っている。カバンから何かを取り出したぞ。小さな本だ・・・本というよりは冊子というべきかな?」


(本?冊子?)さてなんのことだろうか・・・涼達は首を傾げる。


「・・・・冊子を持った女が教授に向かってなにか叫んでいる。それを見た教授が鬱陶しいって感じでそれを払いのけて、冊子が床に落ちたよ・・・・・。

女が一瞬すごく悲しそうな顔して泣き始めた。カバンからハンカチを取り出して涙を拭う。でもすぐ怖い顔になった。教授と彼女が口論になったようだ。教授が彼女の右腕を強く掴んだ。女は「離してよ!」とか言っているのかな?何かを叫んでいる・・・・その時だ。部屋の扉が誰かにノックされた。一瞬教授が扉の方に気を取られる・・・・その隙きを付いて彼女は」


 千里は話を区切りそして


「机の灰皿を左手で取ってそれで教授の頭を殴った!」


と目を開け叫んだ。そして続けてこう語る。


「・・・苦しみながら床に倒れる教授。もがいているようにも見えるがすぐ動きが止まったよ・・・・一瞬ぼう然とした女がこの部屋に誰かが入ってくると察したのか、入口の方に向かって壁に寄り添う。ドアが押されて扉が開く。女はドアの内側に隠れたようだ。」


 (すげぇ・・・本当に見てきたみたいに語っている!?)と心の中で驚く光太。千里は尚も説明を続けた。


「部屋に入ってきたのは天野君・・・君だよ。」

「俺!?」

「そう。天野君は倒れた教授に気を取られているのもあってかドアの内側隠れている女に気づかない。偶然が産んだ死角って奴だな。そして天野君の背後に立って、後頭部を灰皿で殴った。そして天野君は気を失ったのかそのまま倒れた。」


(そうだったのか)殴られた時の痛みを思い出しながら「よかった俺は気絶で済んで」と安堵した。


「そして女は部屋に灰皿を投げ捨てて逃げたみたいだ。」


 千里は自分の特殊能力で見た事件の一部始終を語った。


「灰皿から天野君と教授の指紋しか出ないっていうのはどういう訳だ?」


 黙って聞いていた高山が千里に問う。聞かれた千里は


「その女はハンカチ越しで灰皿を持ったからですよ。」


と答えた。


「うむ・・・確かに合点がいくようにも思える。」


 高山は顎に手を当て考え、


「だがその女は一体どんな女なんだ?特徴は?」


と再び質問した。


「そうですね・・・・どんな女かっていうと・・・・」

 

 千里が急に部屋を飛び出した。どうしたというのか。走っていく彼を「おい!待てよ!」と慌てて3人が追いかける。階段を急いで降りる千里。皆がそれに続いた。全員が1階に降りたときだ。千里は「彼女です。」と言った。

 彼は制服を来た婦人警官に連れられ研究棟を出ようとしていた彼女・・・・・木原景子を指さした。


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