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サペリアーズ-空想科学怪奇冒険譚-  作者: 才 希
第1章「苦難の大学生とお化け屋敷の主」(シーズン壱)
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第1話「遭遇」(6)

 大学敷地外に停めてあるパトカーの中では高山が運転席、後部座席に光太と涼がそれぞれ座っていた。


「F大学で事件って聞いて嫌な予感がしていたぜ。そういえばお前らの大学だったな。」

 

 高山が頭上のバックミラーを見ながら、後部座席に座る二人に向かって言った。光太は涼に対して「お前」という単数形ではなく、「お前ら」という複数形の呼び方を高山が使用したことも気になったが、それ以上に一番気になっていることを質問した。


「あの・・・おふたりはどういう関係なんです?」

「まぁ・・・なんというか・・・・」


 何やら言葉に困っている涼。


「腐れ縁って奴だな。」

「そうそう!それそれ!」


と高山と涼は答えた。


「はぁ・・・・・?」

 

 どういう関係かはわからんが、とにかく知り合いらしい。


「で、天野は何をしたのさ?」

「それはなぁ・・・・」


高山が説明をし始めた。


「ほーん。波平さんお亡くなりになったのか。」


 説明を聞き終わった涼が既に波平を故人扱いしていた。


「いや、まだ死んでない。手術中だ。」


 高山が即座に訂正した。


 涼は横に項垂れて座っている後輩を見た。


「天野、お前本当にやってしまったの?」

「やってないですよ!」

「・・・本人が目の前にいるのもあれだが、涼よ。お前の目からして天野君は殺人を行うような凶暴な人間に見えるか?」


 高山が大胆な質問を涼にぶつけた。

「ふーむ・・・・・」としばし涼は考えて


「天野はなぁ・・・人殺しをするような人間には見えない!・・・・・と思うぜ?」

 

 首を傾げながら何故か疑問形で言った。


「先輩!そこは「こいつは人殺しするような人間ではない!」って言い切ってくださいよ!」


 光太は悲鳴に近い声を出した。


「いやぁ・・・・もしかしてつい人間なにかの間違いを犯してしまうことだってあるはずだ。長い人生だ。お前が真面目君というのは知っているけど、1回ぐらい人を殺したいと思うこともあるかもしれない。」

(確かにそのとおりかもしれないが・・・)

「天野は殺人未遂容疑で捕まっちゃうの?」

「まだ重要参考人というだけさ。署で詳しい話を聞くだけだ。」


 高山の口から出た「重要参考人」という言葉が妙に重く光太に乗し掛った。


「ふーん」

 高山のその言葉を聞いて涼はなにか考えていた。


「なぁ天野?お前は無実なんだよな?」

「そうですよ!」

「本当に?」

「絶対やっていないです!」

「・・・・なら助けてやろうか?」

「え!?」


 言葉の意味が分からず固まる光太を尻目に涼はこう続けた。


「可愛い後輩が殺人未遂で捕まったっていうのは目覚めが悪い話じゃないか。」

「せ、先輩・・・・」

「涼、お前何勝手なことを・・・・」


 感動の言葉を発する後輩を無視し、さらに知り合いの刑事の言葉を途中で遮りながら涼は


「なぁ勇兄。あいつここに呼んでもいい?」


と高山に聞いた。


「あいつ・・・・あいつってあの変態野郎をか!?」


 高山の声が荒がる。


「そうそう。あいつあいつ。」


(先輩の知り合いで変態野郎・・・・)光太の頭には月曜日に出会ったお化け屋敷の主の顔が過ぎった。


「変態であることは確かに間違いないけどさぁ。勇兄もあいつにこれまでに何回も色々助けてもらったじゃない。」

「・・・・・・」


 高山は黙った

「それにもし天野が殺人容疑で捕まって、実は冤罪だったなんてわかったら後々問題でしょう?」

「・・・・うむ・・・・」と唸り「・・・・・正直言う。俺はあいつが嫌いだ。」と高山は呟いた。


「わかるよ。その気持ち。あいつは万人に好かれるようなタイプではないからね。」

 

 その変人は余程嫌われているのか酷い言われようだ。目を閉じて何かを考える高山。そして


「1時間だ。1時間だけ現場を自由にさせる。その間にあいつを呼べ、そして調べさせろ。

1時間経過しても何もわからなければ、天野君を署に連行する。」


と彼は言った。


「OKOK!天野良かったな。警部補殿のお許しをいただいた。助かるかも知れない。」

 

 二人のやり取りの意味が分からず黙っていた光太は喜びの声を挙げた。


「ほ、本当ですか!?」

「ただし、1つ条件がある!」


と涼は右手の人差し指を立てた。


「条件!?いいですよ!なんでもやりますから!俺の無実を証明してください!」

「月曜日の話覚えているか?」

(月曜日の話って・・・・まさか・・・)

「千里と同居しろ!」

(そ、そう来たかあああああああああ。)

 

 どうしても涼は千里と光太を同居させたいらしい。光太が返答に困っている。黙っていると


「どうした?嫌ならいいんだぜ?警察署の取調室で怖い顔した刑事達に睨まれながら出前のカツ丼でも食べる羽目になるぜ。」


と涼が詰め寄ってきた。

 一瞬そっちのほうがマシかもしれないとも考えたが(もうどうにでもなれ!)


「お、お願いします・・・・。」

 震えながら光太答えた。

 その言葉を聞くや涼は即座にスマートフォンでどこかに電話をした。


「もしもし・・・お!今回は電話に出たな。ちょっと色々あってな。家にいるよな?今すぐ大学に来られるか?何?もうすぐ見たい映画が衛星放送でやる!?知らねぇよ!ダッシュで来いよ!いいな!大学の校門前にだ!」


と乱暴に電話越しの相手に伝えた。


「先輩、誰に電話したんですか?」


 光太にはもうその答えが分かっていたがあえて確認をした。


「お化け屋敷の主だ。」


とニヤリと涼は答えた。


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