水中魍魎
招く手の筋から血流が爛れ込む背中。
悴むように、ボソボソと人気の無い青白い街灯が差し込む光は、刃物を示すかのよう。
氷河のように、鋭角な遮断機が、僕の後ろに佇んでいる。
あまねく旋律の不協和音は、消し飛ぶ放出線を描きながら、筋道を予測し得ない。
ノイズを感情とし、身を粉にして、右半分が、機械と化した眼をそちらに回し「ニヤリ」。
仄暗い昼というだけあって、灼熱の太陽が喉の水分を枯渇するようだ。
私は最近、夜中になると田舎にマフラー音を響かせるヤンチャ盛りの若者を懲らしめるようにする。
「事故がやけに多いな」、と思う節があれば呪いの仕業かも知れない。
光る線が無数に張ってあり、御札には、「今までありがとう」という呪怨の数々を同封致す。
急に視界が悪くなる事も多し、急に子供の幽霊があなたの視界に現れる。
危ないと感じ、クラクションを鳴らしては、余計に災いが降り掛かる仕掛けになっている。
何故なら?
それは私だからです。コロシマスヨ。
洞穴の中を、懐中電灯片手に眠る遺恨日を数えながら、寝台列車を探す。
新緑の生い茂った、昆虫ままならない鬱蒼と茂っている。
洞穴の色は、赤錆のような血にも似た色であった。
中をズンズンと進んでいくと、次第に何か変わった所はあるか、確認を行う。
特に何もなかった。ただ、帰り道は保証されていない状況が彼等の不安となり、また恐怖でもあった。
「新たなる道は進んではならぬ、過去なる道はどうぞご自由に」という立て札が目の前に現れる。
スッと取り憑かれたように進んでいく連れ添いに彼等はつい、寄せられるように進む。
が、「ドスン」と大きな木槌で叩かれるような衝撃に見舞われる。
「は?なんだよこれ・・・。」背中には泣いた赤ん・・・血の塊であった。
実験によって見るも無残な姿になってしまい、どうするこうするも外には出られない。
何気なく、階段を少し減らそうと思いを込めて数を数え直してみると、ない。
それは現象というよりも私の思い過ごしであろうと考えるようにした。
けれど、何度も試したくなる衝動でつい、階段を減らそうと思いながらも階段の数を数えている。
不安は相手を巻き込んで、グシャグシャになった肉片が転がり続ける。
正に滑稽だった。内心、嬉しくてたまらなかった。
階段を数える声は、聞き手から「コンッ、コンッ」という金属音だという趣旨が、言い伝えに載せられていた。
僕はただ、階段を数えているだけなのに。