泣き止み様
泣き止み様
『びえーんびえーん』
『泣きなされ泣きなされ』
全国津々浦々を旅している御一行が拾った赤ん坊。
畑広がるこの土地で赤ん坊は泣き叫んでいた。
赤ん坊は泣き止まず周りの者にも不快感を与えた。
『えーい! うるさい! さっさとその赤ん坊を黙らせんかい!』
畑仕事に従事していた百姓が御一行に対して文句を付けた。
『安心しなされ。じきに泣き止み様がやってくるじゃろう』
はて? と百姓が思っていると、眩い光が空を覆った。
『この子が泣き止み様を欲しているのね』
光から現れたは、絶世の美女であった。
髪は腰まで長く、色は金色、肌は純白、この世の者とは思えないほどの絶世の美女であった。
『なんとまあ…別嬪さん…』
百姓は持っていた鍬を落とし、ただただ美女を眺めていた。
一方美女は務めを果たすべく、赤ん坊に寄り添った。
『赤ん坊よ。安心しなさい。それはただの錯覚だ』
美女が手から光を送ると赤ん坊は徐々に泣き止んだ。
美女はニッコリと微笑むと光の中へと去っていった。
我に帰った百姓は御一行に問いかける。
『一体あの別嬪さんは誰なんでい?』
すると御一行はこう答えた。
『あの方こそが泣き止み様じゃよ』