離宮付きの精霊
いつまでも文章が整わず、かなり時間があいてしまいました。
まだ文章がおかしい気がする……。
パーシーは、この離宮についている、いわゆる家付き精霊である。見た目は王子と変わらぬくらいの年齢の子どもに見える。ただし、その姿が見えるのは、おそらくリリアナと、アドリアンくらいのものだろう。この魔術師は、おそろしく目がいい。常人とは違う視界をもっているのではないかとリリアナは思う。そのアドリアンから見ても、パーシーは特異に映るらしい。急に存在が重くなった、というのである。
おそらく、それは、パーシーが名前を得たことによるのだろう。彼は、自分で自らに名を付けたのだ。彼は、予言じみた重々しさでこう言ったのだった。
「突然、わたしは自分がパーシーだと気がついたのだ」
リリアナは詳しくないが、これは結構珍しいことなのではないか。彼女が感心していると、パーシーは、こう続けた。
「それもこれも全部、おぬしのせいだ、妖精リリアナ」
「えぇぇぇ!?」
関係ないと思ってぼんやり持ち場を守っていたら、突然、ボールが飛んできたみたいなもので、リリアナは困惑した。どうして自分に関係があるのか分からない。それに、その言い方だと、
「まるで、わたくしが悪いみたいではないですか。わたくしは、何もしておりませんよ」
リリアナの抗議に、パーシーは、見た目にそぐわぬ重々しさで応えた。いつだって、この精霊は無駄に重々しいのだ。
「うむ。別に悪いばかりではないのは確かだ。だが、良いことばかりでもない。おぬしがいなければ、わたしが目覚めなかったのも本当のことだ。おぬしは気づいていないのだろうが、じつに力の強い精霊だ。そこにあるだけで、周囲に影響がある」
「影響ですって」
「さよう。妖精リリアナ。おぬしは、この離宮の敷地内のマナが他と比べて異常に濃いことに気づいておるか?」
「えっ」
リリアナは、虚を突かれて声をあげた。マナの濃さは、この世界特有のことで、場所による違いがあるとは考えていなかったし、特に不快でもなかったため、意識してさえいなかった。第一、リリアナは、王子を見守るためにこの地に降りたのだから、ほかの場所と比べることなどできない。
「わたしも以前なら、考えもしなかったがな。そも妖精には魂がないゆえ、考えるなぞできぬ。名を得たことで、分かるようになったことが随分とある。ここは変わった。それは人手が増えただけのことではない。霊的に守りの固い場所になってしまったのだ。そして、それはおぬしのせいだ。おぬしの魂の力にマナが引かれるのだ」
「魂の、力?」
「うむ。位相が違うだの何だのとあるのだろうが、遮られてもなお、その力はわたしにも分かる。おぬしは、それだけ高位の存在なのだろう。その、おぬしが付けられているのだ、王子殿下も高貴な存在であるのに違いあるまい。おぬしが無意識に強化しておる結界は、殿下をお守りするであろう」
「そうなんですの? よく分からないですけれど、 もし、そうだとするなら、高貴なる存在のご意志でしょう。わたくしにこの仕事を与えたのは、かの方ですから」
リリアナは、ふと妖精のスカウトを受けた時のことを思い出していた。妖精の仕事は、このような、特定の人間を見守るものばかりではない。だが、あの時、ほかの仕事内容など全く説明されなかった。はじめから、この仕事をさせるつもりだったのだろう。その相手も、はじめから決まっていたのだろうか。それとも……。
リリアナには分からない。必要な知識は与えられているが、必要となるまでは、彼女自身も意識することはできないのだから。