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コンチェルト。アゲイン  作者: 煮込みハンバーグ
12/51

12【四方の嵐】

  【四方の嵐】


 目を開くと、目の前に女神が居た。

「優一さん、おはよう」

「…………えっ?」

 目の前で見えてる光景に正しい判断が出来ない。目の前に居るのは、女神は女神だが本来の意味での女神ではなく、香織だった。

「な、なんで香織が!?」

「えっと、昨日、夜に聖雪ちゃんと電話で話してて、優一さんが朝なかなか起きないって話題になって、そしたら聖雪ちゃんが起こしに来てって」

「い、一発で目が覚めたわ……」

 香織はニッコリと笑い、ベッドに両肘をついて手の甲に顎を置く。

「優一さんって、寝てる時、可愛いね」

「……その感想はコメントに困るな」

「毎日起こしに来たいな」

「……し、心臓に悪いからやめてくれ」

 一瞬、毎日でも来てほしい。そう言いそうになったが、気恥ずかしさに負けてそう言ってしまう。それに、俺を起こしに来るという事は、俺より遥か早く起きなければいけないという事だ。部活で疲れている香織にそんな事はさせられない。

「優一さん、昨日はごめんね」

「メールでも書いたけど、香織は悪くないから謝るな」

「あの後、二ノ宮先輩と音瀬先輩が私を挟んでくれてずっと三人で話してたの。そしたら、生駒先輩は一年生とずっと話してたよ」

「そっか」

「心配してくれてありがとう」

「それってお礼を言うことか?」

「だって、嬉しかったから」

 やばい、朝っぱらからこのやり取りはヤバイ。朝からこんな幸せな事が起こったら、今日一日不幸に遭い続けるのではないかと不安になる。

「あのー、朝からラブラブなのは分かるけど、そろそろご飯食べないと遅れちゃうよー」

「聖雪!」「聖雪ちゃん!」

 ドアの隙間から顔を覗かせて二ターっと笑う聖雪に二人して驚き、少し距離を互いに離す。

「じゃあ、私は下に行ってるからねー」

 聖雪が階段下りていく音を聞きながら、深いため息を吐く。

「ちょっと恥ずかしかった」

「聖雪にはもうちょっとプライバシーについて教育しないとな」

 互いに照れ笑いをして見合い、また気恥ずかしくなってアハハと笑う。

 不意に笑う香織の唇に視線が向き、ドキンと胸が高鳴った。

 艶やかで柔らかそうな香織の唇。その唇に目を奪われ、心に一つの欲求が生まれる。でも、必死にそれを振り払い俺は口を開いた。

「よし、着替えるから先に下に下りててくれ」

「うん、じゃあ下で待ってるね」

 手を振って香織が下に下りて行く。それを見送った直後、俺は自分の右頬を平手打ちした。

 ヤバイヤバイヤバイヤバイ! もう少しで、香織の唇を奪うところだった。キスで相手に承諾を得るのは有り得ない、という事ぐらい俺も知っている。だが、今回のは承諾を得る以前の問題だ。

 朝起きたら彼女が起こしに来てくれていて、寝癖で乱れた髪寝ぼけた顔で彼女に初めてキスをする。…………有り得ない、ムードも何もあったもんじゃない。

 それにやっと香織か俺に敬語を使わない事に慣れ始めた頃だ。まだ早い。

「と、とにかく早く下りて飯食わないと」

 いつもなら、まだウダウダ言って布団から出てない時間だが、今日は香織を待たせるわけにはいかない。

「結構、この目覚ましは効果的だな」

 香織に多大な負担を掛けてしまうという問題はあるが、聖雪に起こされるよりも嬉しいし素直に起きれる。ただ、あのどうしょうもなく唇を奪いたい衝動に堪えないといけない事も考えると、毎日は俺の精神が持ちそうにない。


 朝食を終えて、聖雪と香織の三人で外に出る。道に出てすぐ、聖雪が一歩前に出て振り返る。

「じゃあお二人さんはごゆっくりー。私は先に行くから!」

 聖雪はそう言い残して小走りに学校へ向かう道を行ってしまう。その後ろ姿を見ていた香織が困ったような笑顔を浮かべた。

「聖雪ちゃんに気を遣わせちゃったなー」

「あれは気を遣ってないぞ。気を遣う人はもう少し分かりにくく気を遣うものだ。だから聖雪は面白がってるだけだよ」

「それでも、私達を二人きりにしてくれようとしてくれたのは変わらないから」

 ふと目が合う。そして互いに笑う。

「生駒先輩、サッカー部の練習にも顔出してるのか?」

「うん、サッカー部のOBだし、一応先生に頼まれてるみたいで。選手のみんなはミニゲームの時間を長くとってくれるから嬉しいみたい」

「そうか」

「それでマネージャーの仕事も手伝ってくれるんだけど、そっちの方はイマイチかな」

 香織が微妙な顔になる。一応先輩に対する事だから言葉は選んだし笑顔もそれなりに見せるが、結構酷かったようだ。

「先輩も一年の時は雑用やってたはずだけど、一年のレギュラー組だったのかな?」

「顧問の先生に二ノ宮先輩が聞いてたんだけど、優一さんの言う通りそうみたい」

 一年でレギュラーやベンチ内に食い込む人なら、当時は雑用なんてろくにやった事がなかったはずだ。だったら、マネージャーの仕事が出来なくても不思議ではない。

「コップの洗い方が適当だったし、備品の片付けも置き方とか並べ方とか、そもそも置く場所が違ったりで結局もう一回私達でやらないといけなくて」

「でも、先輩だし注意も指導もしづらいよな」

「だから、今日からは選手の指導に集中してもらおうって二ノ宮先輩が」

 香織がそう言って苦笑いを浮かべる。どうせ、二ノ宮が散々な事を言っていて、それをどうにか香織の口から話せるレベルに変換したのだろう。あいつは嫌いだと思ったやつにはとことん厳しい奴だ。

「手伝ってくれるのが優一さんだったら良かったのに」

 ちょっと拗ねたような声で言う香織。その香織がハッとして俯く。

「ごめんなさい」

「なんで謝るんだよ」

「だって、優一さん、あまり部活自体には関わらないようにするって言ってたから。こんな話をされても困っちゃうでしょ?」

「手伝えって言われるのは困るけど、彼女の愚痴聞くくらいなんてことないぞ」

「ありがとう。それでね……」

 香織の、手伝うのが俺だったら良かった。その言葉は正直嬉しかった。香織に頼りにされているというか、香織に必要とされていると分かることが、実感出来ることが嬉しかった。

 香織の話は最初は愚痴だったものの、すぐにいつも通りの他愛のない話に戻った。どうやら、聖雪と今度お泊まり会なる事をすることになったようで、近々泊まりに来るかもしれないらしい。

 …………いやいや、らしいって、それはかなりマズイんじゃ?

 香織は仲の良い友達である、聖雪の家に泊まりに来るつもりなのかもしれない。だが、その仲の良い友達の兄である俺は、香織の彼氏であって…。まあ、そんなのは香織の父親が許さないだろうから流れてしまうだろうが。

 一日まともに話せなかっただけだが、久しぶりにゆっくり話せた気がして楽しかった。しかし、校門が見えてくると、その楽しい気分が薄れた。

「おはよう、香織ちゃん」

「生駒先輩、おはようございます」

 ニッコリ笑って挨拶する香織を見て笑顔を返した生駒先輩は、俺の方を見て驚いた顔をしてニッコリ笑う。

「おお、跡野くん。おはよう」

 いかにも「えっ! 居たんだ、全然気が付かなかった」みたいな顔で挨拶をする生駒先輩。俺は生駒先輩と香織の間に立っている。気が付かなかったなんてことは有り得ない。明らかに俺は無視されていたか、もしくはそもそも視界にさえ入れていなかったか。多分、後者だろう。

「昨日は楽しかったね」

「昨日はご馳走でした」

「また一緒に行こうよ」

「今度は部全体の親睦会をやりましょう」

 香織と生駒先輩との会話の間突っ立っているだけだが、このまま二人きりで話させる気は毛頭ない。それに、ニッコリ笑う香織が上手くかわそうとしているのを見るのは嬉しい。

「ああ、もう行ってもいいよ」

 俺に目を向けた生駒先輩が、言う。オブラートに包む気のないストレートな拒絶。まあ、香織と二人で話したいのに俺がその間に立っている。相当イラついたのだろう。しかし、そうだとしても、こっちは自分の彼女にちょっかいを出されてる立場だ。このまま「失礼します。ごゆっくりどうぞ」なんて事にはしない。

「香織、行っていいってさ。早く行こうぜ」

「う、うん」

 俺はとっさに香織の手を取り、歩き出す。後ろは振り返らない。生駒先輩はどんな顔をしているだろう。いや、きっと気にも止めず他の女子生徒に目を移して談笑を始めているだろう。

 しかし、なんだかスッキリとした気分だ。してやったり、とまではいかないが、やってやったとは思う。

「ゆ、優一さん、あの……」

「ん?」

 校舎の中に入ってロッカータイプの下駄箱前に来たところで、隣の香織がそう恐る恐る俺に声を掛ける。

「あの、凄く嬉しいんだけど、みんなに見られてるから、ちょっとだけ恥ずかしいかな?」

 照れ笑いを浮かべる香織を見て、俺は香織が持ち上げた手を見る。

 細くて柔らかく綺麗な香織の手を、よく見慣れた手が握っている。……紛れもなく俺の手だ。

「ごめん!」

「あっ……」

 思わず手を離し、香織は離れた手を見てそう声を漏らす。やってしまった。初めて手を繋いだのに、こんな微妙なシチュエーションなんて最低だ。

「初めて、手、繋いだね」

「ごめん、もうちょいムードのある機会に繋ごうと思ってたんだが……」

「ううん、ありがとう。優一さんが手を繋いで引っ張ってくれて嬉しかったよ」

 ニッコリ笑う香織に、俺は照れ笑いを返す。

「オー! 朝からラブラブ、デスネー!」

 後ろから突然聞こえた声に振り返ると、セリアが右手を挙げてニコニコ笑っていた。

「ユーイチ、カオリ、おはよーございマース!」

 周囲を見れば俺達を見てヒソヒソと話したりクスクスと笑ったりしている生徒達が見えた。

 そこで俺は、今ここが人通りの多い下駄箱前だと言う事を思い出した。

 そして、俺と同じくその事を思い出したらしい香織は、俯き耳を赤く染めていた。


 学校の体育の授業は、新学期のはじめは見学する事が多かった。まだ体力も戻って間もない頃だったし、大事をとってという意味合いが強かった。でも今は、普通に受けなくてはいけない。

 体育の授業はほとんど遊びみたいなものだから内容自体はあまり問題じゃない。ただ、体育館競技の女子とは違い、男子は外でやらなくてはいけない。

 六月中旬を過ぎれば、気温もそれなりに高くなる。しかも真っ昼間に晴天のグラウンドでやる体育はしんどい。

「暑ぃー……」

 空を見上げれば太陽が俺に向かってニコニコと眩しく笑いかける。いや、お前の笑顔とか要らないから。

 香織が笑いかけてくれればやる気も出るのに、なんて思っていると遠くからボールが蹴られる音が聞こえる。

 高校生の授業でやるサッカーは、案外本格的だ。試合をやってないやつは主審副審をやるし、オフサイドだって取る。ただ、サッカーをやった事がある奴とない奴ではボールの扱い方には差が出るが。

「やべ、高く上げすぎた」

 蹴り損ねたのか、バレーの天井サーブ、いや、野球の外野フライのように打ち上がったボールは悲しいかな、俺の真上に来ている。このままだと、十中八九俺の所に落ちてくるだろう。

「あー、ヘディング嫌だなー」

 普通、高く上がったボールはヘディングで競り合うものだ。でも、下手くその俺がヘディングをしたって痛いだけだし、たかが体育の授業でそもそも痛い思いをしてまで競り合う必要も無い。

「跡野さんすみません!」

「あー、大丈夫、気にしない気にしない」

 俺はその高く上がったボールを見て、サッカー部時代にやったボール追いを思い出す。

 高く上がったボールの落下地点に入り少し右足を持ち上げる。ボールが勢い良く落下してくる場所に右足を移動させ、地面に当たって跳ね上がる前のボールに右足の裏を重ねる。

「跡野さん、相変わらずですね」

「これしか出来ないからなー」

 隣を走ってきたサッカー部員に保持したボールをパスし、ボケーッとドリブルしていく後ろ姿を眺める。

 俺は下手くそだったが、早く練習を上がりたい一心でボール追いをやってた。そしたらいつの間にか”ボール追いだけ”上達していた。全く誇れる事ではないが。

「跡野さん!」

 またボールが飛んできて、今度は高さが胸の高さだったために胸でトラップをしようとする。しかし、ボールが俺の胸に接するより前に、俺は右側にすごい勢いで吹っ飛んだ。

「ボケッとしてると取られっぞ」

 そう吐き捨てたのは生駒先輩で、生駒先輩は涼しい顔で味方にパスを回す。

「マジなタックルやってきたな」

 運動が出来るようになったと言っても、部活をやっていた時よりかなり体力も落ちている。体格も大きい大学生かつサッカーを毎日やっているような人のタックルを不意にされたら受け切れるわけない。

 派手に吹っ飛ばされて砂塗れになった体操服をはたきながら、生駒先輩の走り去った方に視線を向ける。

「んにゃろー」

 俺はタックルを受けた時にボールを持っていなかった。体を当てて押し合って競るならまだしも、肩をぶつけるショルダータックルは、ボールを保持していない選手へやれば違反行為だ。主審がまともだったら完全にファウルを取られている。主審をやっている二年のサッカー部員は笑いながら楽しそうにしている。まあ、別に主審をしている奴が悪い訳ではないし、彼を咎めるのもお門違いだ。

 俺はボールを持った生駒先輩が、サッカー未経験者三人を手玉に取って遊んでいる横から、足を伸ばしてボールをかっさらって前線にパスを送る。

「ボケッとしてると取られますよ~」

「おお、良い度胸してるじゃないか」

 出来るだけ朗らかな声を演じるが、目の前に立つ生駒先輩の方はいかにも気に食わないという顔を向ける。

「生駒先輩!」

 生駒先輩にパスを出した男子のその声に二人で反応し、体をぶつけて競る。しかしすぐに体格差と筋力差で生駒先輩に押し負けた。しかし、弾かれた勢いで反転し、ドリブルを始めようとした生駒先輩の足元に右足を伸ばす。右足の甲がボールに当たり、俺の足と生駒先輩の足で挟まれたボールは弾かれる。それを更に右足を伸ばして味方の方向へ蹴り飛ばす。

「チッ」

「うおっ!」

 急に体が反対方向に引っ張られ背中から地面に倒れ込む。理由は分かってる、生駒先輩が体を反転させたときに後ろ手で俺のシャツを引っ張ったのだ。

「なるほどね、主審が取らなければファウルじゃないですしね」

「どうした? 大丈夫か?」

 ラフプレー、通常のタックル等の規定されたボール奪取方法を超えた乱暴なプレー。そのほとんどがルールに触れる反則行為だが、プロで活躍する選手の一部ではラフプレーもテクニックの一つだと考える人も居る。

 サッカーを含めた全ての競技で、審判がファウルと認めなければ反則行為にならない。反則行為を冒した選手が自分から進言しても、主審が違うと言えば違うのだ。それは、裏を返せばラフプレーをしても、審判が見ていなければファウルにはならないという事。

 俺は再びボールを持った生駒先輩にショルダータックルを仕掛ける。しかし、体格差で簡単に受けられてしまい、フッと俺の方をバカにした笑いと共に俺を見る。その隙を突いてボールを奪おうと足を伸ばす。だが、やはりサッカーをやり慣れているだけはある。巧みな足捌きで俺の足をブロックする。

「そう何度も取られて――」

「もらい!」

 サッカー未経験者と特有の何も考えない突撃であっさりと後ろからボールを奪われる。その生駒先輩を俺は反転して置き去ってゴールに向かって走る。

「――ッ!?」

 再び体が後ろに引かれる。しかし、今度は受け身を取れず地面に背中を打った後に後頭部を打ち付ける。視界が揺れて胸から吐き気が込み上げる。

 流石に主審をしていた生徒がホイッスルを吹いて試合を止める。

「ってえな!」

 後頭部の痛みが引いてくると今度は怒りの方が込み上げてきて、すぐ側に立っていた生駒先輩をそう怒鳴り付ける。

「んだよ」

「てめえがシャツ掴んだんだろうが! ふざけんな」

「生駒先輩、流石に今のは――」

「あ?」

「い、いえ……」

 大学生の睨みを受けて主審の生徒が一歩後退る。おいおい、俺の味方してくれるんじゃなかったのかよ……。

「教師目指してるくせにラフプレーはするわ、主審のジャッジに睨み利かすわ、やりたい放題だな」

「お前、先輩にそんな口利いてただで済むと思ってんのか? ああ?」

「先輩だろうがなんだろうが関係あるか!」

「ちょ、二人とも落ち着いて!」

 胸ぐらを掴んだ生駒先輩と掴まれた俺を見て、すぐ側に居た主審の生徒が止めに入ってくる。しかし生駒先輩に突き飛ばされて俺の視界の端で尻餅を付いた。

「お前、駿河香織と付き合ってるんだってな。聞いたよ、お前それ狙って代わりにトラックに引かれたんだろ。良くやるよ」

「あんたも女子高生相手に手当たり次第によくやるな。でも、本当に察しの良い奴はあんたがただの女たらしのクソ野郎だって気付いてるぞ」

 俺は胸ぐらを掴まれながら笑って言う。すると生駒先輩はスッと俺の胸ぐらから手を離し、俺の目の前に憎しみに満ちた顔を向けた。

「あんま調子に乗ってっと、お前の女、犯すぞ」

 右手を伸ばし、ジャージの襟と一緒に生駒先輩の首を掴む。そして一緒に踏み出した体の全体重を使って地面に首を掴んで引き倒した。

「いってえなッ!!」

 下から怒鳴り付ける生駒先輩に振り下ろすため右腕を振り上げた。しかし、その振り上げた手は下りてこなかった。

「ハァハァ……。はーい、ストップ。やっすい挑発に乗らないの。全く何してんのよ、跡野らしくない……」

「二ノ宮……なんでお前、居るんだよ」

「あっち」

 二ノ宮が指差した方向を見ると、そっちには校舎があり、丁度教室の窓際になっている。その窓際から何人もの生徒がこっちを指差して見ていた。

「授業が暇で暇で外見てたら、久しぶりにサッカーなんてやってるヘタクソが居てさ。おーなかなか頑張ってるな~って見てたら、そこのクズにシャツ掴まれて二回も引き倒されてるの見えたのよ。んで、あとで顧問の先生に報告しないとな~って思ってたら、いきなり取っ組み合い始めるでしょ? だから走ってきたのよ」

「走ってきたって、二ノ宮の教室、三階じゃ――」

「サッカー部の女子マネ舐めんじゃないわよ。これでも五〇メートル七秒五〇よ」

「お、俺より速い……」

「ったく、どうしたのよ。何があったの? まあ、あんたがキレる事って言ったら一つしかないだろうけど……」

 二ノ宮に引っ張られ生駒先輩から引き剥がされる。すると体育館から体育の先生が走ってきて、その後ろから出てくる女子達の中から香織が飛び出して来た。

「優一さん、えっ!? それ、どうしたの?」

 砂まみれの俺を見て目を丸くする香織に、俺は何も言えず視線を逸らすしかない。理由なんて言える訳ないだろう。

「生駒ッ! お前は何をしとるんだぁッ!」

 耳をつんざく怒鳴り声がグラウンドに響く。この怒鳴り声はサッカー部に入部した事がある奴なら聞き間違えるわけがない。

「教育実習生が問題を起こすとは何を考えとるんだ!」

「この二年が――」

「この二年がどうした! お前は大学生だろうが! 適当に受け流す事も出来んのか! 跡野! お前もお前だ! こんなバカに構うような奴じゃないだろう! それに二ノ宮!」

「わ、私もですか?」

「当たり前だ! 授業飛び出して何しとるんだ! 三人とも付いてこいっ!」

 完全に堪忍袋の緒がブチ切れている先生の説教を受けなければならないとは憂鬱だ。

 隣では二ノ宮が俺に視線を向けて不平不満を視線だけで訴えている。これは、ケーキワンホールくらい奢らないと許してもらえなさそうだ。


 説教はとりあえず空き教室に三人で正座させられ、二ノ宮、生駒先輩、俺の順で怒鳴られてから事情を聞かれるという流れを受けた。二ノ宮は止めに入ってくれただけだったから比較的早く釈放された。

 その次に事情を聞かれた生駒先輩は、サッカーのミニゲームで競り合いをしたら熱が入りすぎてしまったと弁明した。しかし、先生が俺を指差して言ったのだ。

「こいつは部活をやってるときから滅多に試合では熱くならん! そもそもコイツは練習試合くらいしか出てないから熱くなりようがない! 何か他に理由があるだろうが! 隠さず言え!」

 全く、失礼な話だが、事実だから否定も出来ない。しかし、この先生、怒ってるのか笑いを取ろうとしているのか全く分からない。

 その後、同じ「熱が入りすぎた」を繰り返すしかしない生駒先輩に見切りを付け、先生は「お前、実習の単位取れると思うなよ」と言って空き教室から放り出した。それが、今から約一時間前である。

「跡野~、俺もそろそろ疲れたんだが」

 弁当を突きながら、本当に疲れた表情を俺に向けそう言う先生がため息を吐く。先生は俺に一体何があったのかを尋ねた。それに俺は無言で答え、その質問と無言の応酬が十分程度続いた後、先生が「ちゃんと話すまでここから出さん」そう言ったのが、今から約五十分前。それから今まで、正座を解くことも出来ず足は完全に痺れるを通り越して麻痺しかけている。それに昼飯はもちろんまだ食べていない。先生が授業で席を外す前に目の前に置いた水のペットボトルも、蓋を開けずそのまま一ミリも動いていない。

「跡野、とりあえず水だけは飲んでくれ。こうやって空き教室に拘束してるのもマズイからな。その上で水も飲ませてないとなったら、俺の首が飛ぶだけじゃ済まん」

「先生は悪くありません。なにかあってもそう言いますよ」

「頼もしいな。まあ、とりあえず水を飲め」

「……いただきます」

 久しぶりに言葉を発したせいで喉の渇きが進み、俺は正座したままペットボトルを掴む。そして蓋を開けて中身を一口二口飲むと、蓋を閉めて元の場所に置いた。

「跡野、お前は同年代じゃ冷めた方だ。まあ見方を変えれば同年代より大人とも言えるが、そんなお前がなんであのバカに取り合った。あいつは昔から問題ばかりのアホだ。そんな奴に構う性格じゃないだろう」

「…………」

「そこだけはどうしても喋らん気か。全く、頑固な奴だ」

 先生は床にあぐらをかいて俺の目の前に座り込む。そして、自分の持ってきた水筒で水分を補給するとため息を吐く。

「お前は昔っからそうだったな。“自分以外の誰かが傷付きそうだと”いつだってそうやって自分一人だけに責任を被ってきた。おお、意外な顔をしてるな。俺がそれに気付いてないと思っていたのか、それは少し心外だな」

「すみません。俺はBチームでしたし、あまりそういうのは見ていないものかと」

「確かにAチームよりもBチームの方が目を向ける機会は少ないかもしれないな。でもBチームでも頑張っている奴は居る。そういう頑張りを続けている奴は自然と目に入るものだ。まあ、お前の場合はサッカーの方は全く頑張ってなかったがな。ああ、練習を早く上がるためにボール追いも上達してたな。他は全くだったが」

「……そんな所まで」

 先生は俺の反応を見てガハハと大きく笑う。そして、真剣な表情を俺に向ける。

「どうしても言えんか?」

「…………」

「お前が言わなければ、生駒は単位はやらんが明確な処分はされない。一応、報告はするが理由が分からんかったら処分のしようがないからな。そうしたら、あいつはまた別の学校で実習を受けて条件をクリアすれば教員免許を取得、それで採用試験に合格すれば晴れて教師だ。あれだけのつかみ合いをしたんだ、相当腹に据えかねているんだろう? ここだけの話だが、俺は生駒は教師に向いとらんと思っている」

 確かに、他の先生や生徒に聞かれたら問題になりそうな発言だ。まあ、最近の先生という職業は、どんな些細な事でも体罰だ、暴言だと言われてしまう職業だ。先生も言動行動には多少気を遣うのだろう。

「生駒は視野が狭い。それに年下を見下すという教師としては致命的な性格だ。教師というものは年下である生徒を教え導く仕事だ。見下すような奴には向かん。そんな奴が教師になるのはムカつかんか」

「生駒先輩の将来には興味ありません」

「そうか。じゃあ、俺はお前を全くの無実だとは処理出来ん。お前があいつに掴みかかる正当な理由があれば、話は別だが」

「…………」

「分かった。もう行っていい。ただし、それなりの処分は覚悟しておけ」

「はい。長い時間、ご迷惑をおかけいたしました」

「ったく、真面目なんだか不真面目なんだか分からん奴だなお前は」

 先生が出て行き、ホッと一息を吐く。足を崩して伸ばすと、一気に痺れが足全体に広がり呻きたくなるような感覚に襲われる。

 その感覚に必死に耐えていると、教室の扉が勢い良く開いた。そして、俺は横から襲った衝撃にバランスを崩しそうになる。

「ウギャッ!」

 足に振動が伝わり思わず悲鳴を上げる。しかし、すぐに俺は俺に誰かが抱きついている事に気が付いた。

「か、香織?」

「大丈夫。先生、もう行ったから」

「いや、そうじゃなくて」

「バカ……」

「いや、バカって」

「バカ……すごく心配したんだから……」

「心配って言っても、問題起こして説教されてた――」

「二ノ宮先輩も生駒先輩も戻ってきたのに、いつまで経っても優一さんだけ戻って来ないんだから、心配するに決まってるじゃないっ!」

「す、すまん」

 確かに、香織の主張はごもっともだ。俺がもし香織の立場で、いつまで経っても香織が戻って来なかったら心配する。

「香織、俺、汗、掻いてるんだけど……」

「分かってる」

「かなり砂まみれなんだけど……」

「知ってる」

 香織が汚れるのを心配して言うが、香織は一向に離れようとしない。

「二ノ宮先輩から、生駒先輩から故意に引き倒されてたって聞いたよ。一体、何があったの? ……優一、さん?」

 その香織の言葉を聞いて、俺は、俺に生駒先輩が言った言葉を思い出して堪らなくなり、ギュッと香織を抱き寄せる。

 足の痺れが治まった途端、心がズキズキと痛み始めた。

 香織は無事だ。いつも通り元気にしている。ちょっと心配掛けたせいで怒っているが、それでも香織は無事だ。それが分かって、それを認識して、涙が出るくらいホッとした。

「香織」

「ゆっ――…………」

 我慢出来なかった。堪えられなかった。他の誰かに穢されるくらいなら、ムードなんか気にしていられない。

 奪った香織の唇は柔らかく、吸い付くような弾力があった。いつまでもいつまでも、その感触を抱いていたい。いつまでもいつまでも、この唇を重ねていたい。いつまでもいつまでもいつまでも、香織を、独り占めしていたい。

 どれくらい時間が経っただろうか。唇を奪われていた香織が、ンっと吐息を唇の隙間から漏らしたのを聞いて、俺は唇を離した。

「香織……」

「優一さん、やっと、キスしてくれた」

「え?」

「……いつしてくれるのかなって、結構期待してた」

「だって、まだ付き合って三日目だぞ」

「だって、優一さんの事大好きだから、してほしかったんだもん。それに、やっぱりずっと片思いだったから、優一さんに好かれてるか心配で」

「俺は香織が好きだよ。それは絶対だ」

「ありがとう。そろそろ戻ろうか、お昼食べる時間無くなっちゃうし、それにセリアさんも待ってるから」

 香織に手を引かれて立ち上がる。香織は俺の手をギュッと握り廊下に出ていく。その香織の手は、教室に着くまで離される事はなかった。


 教育実習生、生駒修介の教育実習は中止。それがうちのクラスの生徒に通達されたのがついさっきのショートホームルーム。それから間がほとんど経っていないのに、下駄箱では他クラスの女子生徒の視線が集まる。

「生駒先輩、あいつのせいで実習中止だって」

「マジ? それじゃ先輩、先生なれないじゃん」

「どうせ、先輩がイケメンだから嫉妬して突っかかったんでしょ?」

 なんとも言えない状況だ。隣に立つ香織がこちらを見ているが、俺はそれに苦笑いを返すしかない。

「優一さんの事をちゃんと知ってる人は、絶対に優一さんの味方だから安心して。それに私は、優一さんの一番の味方だよ」

「ありがとう香織、心強いよ」

 俺よりも、香織の事の方が心配だが、二ノ宮の話を聞いていた限りでは、サッカー部のマネージャー達と一緒に居れば問題ないだろう。

 校舎を出て、グラウンドまで香織を送っていくと、制服姿の二ノ宮が俺の方に歩いてきた。

「あんたを止めに入ったせいで一日の活動禁止処分よ、私だけ」

「悪かった」

「いい機会だからちゃんとお詫びしてもらわないとね」

「なんでも言ってくれ」

 今回は二ノ宮に二度助けられた。生駒先輩から香織を守ってくれたし、今日も問題が大きくなる前に止めに入ってくれた。

「とりあえず付き合いなさいよ。ああ、香織」

「は、はい」

「生駒先輩、もう来ないと思うけど、もし来たら三年のマネージャーの誰かに言いなさい。すぐに先生に知らせるように言ってあるから」

「あ、ありがとうございます」

「じゃあ、今日は頼んだわよ」

「はい」

 香織は頭を下げて、それから遠慮しがちに俺へ手を振ってグラウンドに駆けていった。

「上手くいってるみたいじゃない」

「お陰様でな」

「さて、今日は何奢ってもらおうかしら」

「二ノ宮」

 ニコニコ笑いながら歩き出す二ノ宮に後ろから声を掛ける。二ノ宮は首だけ振り返る。

「なんでも好きな物を奢る。ちゃんと理由を話す。だから、話すのは俺の家でいいか?」

「そう、じゃああんたの家に行きましょう。奢りの件は貯めといてあげる。貯めに貯めて、一気に払ってもらうから」


 部屋に入って床に座り込むとドッと疲れが出てきた。

 二回引き倒されてた挙句に掴み合いになった上に、一時間以上も硬い床で正座をしていた。まあ、そもそも体育の授業であれだけ走り回ったのは久しぶりだったからかもしれない。

「で?」

「最初はボール持ってない俺にタックルしたのがきっかけだった。いや、きっかけは昨日ずっと香織にちょっかい出してた事だな」

「それは、私も協力するって言ったでしょ?」

「ああ、部活中は二ノ宮含めたマネージャー陣が居るなら安心だろうと思ってた。それに、香織自身も生駒先輩の事を良く思ってないみたいだったし」

「そりゃあそうでしょ。付き合ったばっかりの大好きな彼氏との時間邪魔されてるんだし」

 ニヤニヤと笑ってからかう二ノ宮に困り笑顔を返す。二ノ宮は俺がテーブルに置いたお茶を一口のみ、テーブルに右肘をついて手のひらの上に頬を載せ、俺に視線を向ける。

「で? 何言われたの?」

「…………」

「ちゃんと話すって約束でしょ?」

「あんま調子乗ってっと、お前の女、犯すぞって――ッ!?」

 俺が苦い物を吐き出すように絞り出した直後、二ノ宮の握られた左手の拳がテーブルを打った。机の上に置いたコップの縁から少しお茶が溢れる。そして、二ノ宮は舌打ちをして歯を噛んでいる。

「ごめん跡野。止めなきゃ良かった」

「いや、止めてくれなかったら問題が大きくなってた」

「いや、彼女をそんな風に言われたらふざけんなって思うわよ。私だって女を軽く見んなって絶対ぶん殴ってた。……香織には?」

「言えるわけないだろ。余計な不安を持たせるだけだ」

「良かった、香織の耳に入らなくて。香織には内容が酷過ぎるわ」

 俺はコップを床の上に置き、揺れる液面を見詰める。もし、香織があんな奴に。そう考えると憎しみと嫌悪と恐れが同時に襲ってきた。

「それだったらあんたがずーっと無言貫いてた意味が理解出来るわ。あんた、本当に香織の事、好きなのね」

「当たり前だろ」

「香織は幸せ者だわ、こんないい彼氏に好かれて」

 その二ノ宮には一切のからかいはなかった。

「香織、前よりも毎日楽しそうにやってるわ。あんたの意識が戻らない時は、必死に心を保とうと頑張った。あんたの意識が戻った後は、早く仕事終わらせてあんたに会いに行くために頑張った。あんたが退院してからは、力が抜けて自然体で仕事をこなしてた。それで、あんたと付き合ってからは、本当に楽しそうに仕事してる」

「そっか」

「跡野、あんたサッカー部に戻ってこない? 選手が嫌ならマネージャーでもいいじゃない。あんたほとんどマネージャーみたいなものだったし」

「いや、俺は戻らない」

「戻らないと香織が別れるって言ったら?」

「戻る」

「全く、どこまで香織の事大好きなのよ。今度、香織が部活に戻らないと別れるって言ったら、あんたが部活に戻るらしいって言っといてあげる。まあ、言っても無駄だけどね。香織が冗談でもあんたに別れるなんて言うわけないし」

 ケタケタ笑いながらコップのお茶を飲む。

「あんた、本当いい男よね」

「いきなりどうした。褒めなくても奢りのことは忘れてないぞ」

「いや、この流れで言うのもなんだけどさ。私、あんたの事好きだったのよ」

「…………はあ?」

 あまりにも唐突な告白に、ただその言葉しか出ない。

「でもね、それはあんたが事故って入院した後の少しの期間まで。あんな強力なライバルが居たらそりゃあ諦めるわ」

「いや、だって二ノ宮、彼氏が……」

「もちろん、その時の彼氏達の事は好きだったわよ。カッコいい男ばっかりだったしね。でもさー、何かあると比べちゃうのよ、跡野と。あー、跡野だったらああしてくれたのに。あー、跡野だったらこう言ってくれたのにって。んで、冷めてポイッと」

 何かを放り投げるジェスチャーをしてハハッと力無く笑う。

「そんな恋愛の仕方してた私が、あんなまっすぐあんたを好きなライバル見て勝てるって思えるわけないじゃん。いつ意識が戻るかも分からない相手を毎日見舞いに行って。結構いい男ばかり何人からも告られてるのに全部断る。そんなの私には無理だわ。私ならとりあえず付き合っちゃうし」

 最初は、当時俺が好きだった音瀬の事を言ってるのかと思った。でも途中から香織の事だと気付く。

「でもね、今は私、あんたと付き合わなくて良かったと思ってる。やっぱり、あんたは彼氏っていうより親友ね」

「親友と思ってくれてるとは思わなかったな。せいぜい小間使いか愚痴の吐け口かと思ってた」

「そうね、それも全部含めて親友ね」

 二ノ宮はニッコリ笑って、机の上に置いてあるパソコンを見る。

「そういえば、セリアがあんたの部屋にエロ本なかった。男として大丈夫かって心配してたわよ」

「なんでセリアがそんな事を心配するんだよ」

「だから、言っといた。最近の男子高校生のエロネタ探すなら、パソコンかスマホの中を探さないとダメよって。という事で、跡野の性癖でも見とくか」

「おい! こら!」

 二ノ宮が立ち上がりパソコンの電源を入れる。その二ノ宮の手を掴んで止めようとするが、ニヤニヤ笑う。

「いいのー? 私の事止めちゃってー」

「プライバシーの侵害だ!」

「私が跡野の性癖知ってたら、私が香織に少しずつ免疫作っといてあげるのに」

「余計なお世話だ!」

最初は湿っぽい話だった。次は、驚くような告白だった。でも気が付いたら、いつも通りの俺と二ノ宮の掛け合いになっている。

 男女の友情は成立しないなんて話はよく聞く。確かにそういう人も居るのかもしれない。

 でも、少なくとも今の俺達は、仲の良い親友と呼べるのではないかと思う。

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― 新着の感想 ―
[一言] 逆恨みしそう。普通は利害考えて動きそうだけど手当たり次第手でしたり決定的な言葉言ったり兎に角クズで頭が悪いと思う。理性がないのでむかついたら普通に報復しそうな感じがする
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