表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/4

EP 001 最後の日常

(………)


暗闇から声がした。


だれ?


そのとき、目の前にあの「ホール・アース」が映った。まえに、テレビで観たときと変わらず雷雲が海を掘り返すように渦巻いている。


今まで気づかなかったが、俺は宙に浮いていた。途端に吸い込まれるように、渦の中に向かって進み始めた。


しばらくすると渦を抜けた。出た所は、暗黒の世界に光の粒がまたたいている。宇宙だ。


そして、目の前には砂漠に包まれた星が浮かんでいた。


気がつくと、俺は惑星に向けて降下していた。


雲を抜けると、俺の目の前に街が現れたた。


見るも無残な廃墟と化していたが、橋がありビルがあり、道には車らしきものも停まっている。


だが、それはごく一部でしかない。


そういった場所が点々とあるだけで、あとはビルどころか道すらもわからないくらい、ただ砂漠というより、荒野が広がっていた。


ところどころに砂に埋れた車や、得体の知れない金属の塊が突き刺さっている。


気づけば、また暗闇の中にいた。


だが、今回は星ではなく、一人の女が立っていた。顔も肌の色もわからないはずなのに。綺麗だと思った。


今までにテレビや映画で見てきた女優やアイドル、モデル、タレント街で見かけた人や、漫画のヒロインよりも綺麗だった。


女は俺の額のあたりに手を伸ばし、触れた…


途端に脳を劈くような、悲鳴のような頭痛が走った。


そして弾かれるように、景色は消え暗闇に戻った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


東京都江戸前市東京都立江戸前高等学校新聞部の部室からけたたましい音がした。


新聞部二年、土方 哲平が起きた拍子で椅子ごとひっくり返ったのだ。髪は寝癖がついてても元々ボサボサで目は茶色。


「ちょっと大丈夫⁉︎」


まっさきに声をあげたのは、同じく新聞部二年で物心が付く前からの幼馴染の市川 清花だ。髪は肩につくぐらいで、とても清楚だ。


「だい…じょう…ぶ。」


痛む頭を押さえながら、声を振り絞っていった。あの光景がまだ頭を離れない。頭痛も、頭を打ったのとは違う、頭蓋骨の中を反響するような痛みだった。あれはいったいなんだったのだろうか?あの人は誰、あそこはいったいどこなのか、さまざまな疑問が余計頭痛をひどくする。


「本当に大丈夫か?」


と、言いながらカメラのシャッターを切るねは、新聞部唯一の三年で部長の杉宮 音夜だ。背が高く、成績もいい。こちらも清花と同じ、というか俺の家と清花の家はお隣さんさらに向かいの家が音夜の家という感じだが、その家がとても広い。それも音夜の親父は、かの杉宮財閥の会長、杉宮 鬼一なのだから納得である。


他には、同じく新聞部二年の赤城 栞。(ショートヘアで眼鏡をかけている。パソコンに強い。)新聞部一年の宮部 和樹(やや背が低く、新聞部の中では一番足が早い。)同じく一年の三河 葵(ツインテールの似合う童顔少女。記憶力がいい。)。それと遊びに来ていた、陸上部二年村田 圭一(ガタイがいいが、趣味が家庭菜園と言うギャップを持ち合わせる。)、水泳部二年鈴木 麻莉(オリンピック期待の星とまで言われるほど泳ぎがうまい女、だが頭の悪さは学年TOP3に入る)、吹奏楽部三年の菊池 薫(長身でスタイルも良く、学年問わず憧れの的。ただ、ドがつくS)。この三人は、俺たちが小学生の間に同じ町内に引っ越してきた。俺らの町内は子供はこの6人だけで、そもそも町内が狭いため近所付き合いが密接だったのだ。


「まったく、それでケガでもして映画を観にいけなくなったらどうするんだ。」


薫先輩が呆れたように言う。


「 そもそもなんでお前まで来ることにな

ってるんだ。」


音夜が冷静に突っ込む。

新聞部では夏休みに部長が今オススメの映画を観にいくのが恒例で、今年は去年話題になった探偵ドラマの劇場版だ。


「いいじゃん、べつに。明日グラウンドの改修工事で部活ないし、暇なんだよ。ほら、幼馴染のよしみでさ。ね?」


「先輩お願いしますよー。」


圭一と麻莉もせがむ。


「勝手にしろ。」


音夜がそういうと、3人は打ち合わせでもしていたかのように声を揃えてよっしゃ、と言った。


「まったくあいつには参ったよ。」


駅から家に帰る途中、音夜が吐き捨てるように言った。


「まあ、いいじゃないですか。賑やかなのはいいじゃないですか。」


「あいつは賑やかとか、そういうレベルじゃあないんだ。」


「なんだよ、彼女が来るのがそんなに嫌か?」


言った直後に後悔した。が、すでに俺は音夜にヘッドロックをかけられていた。


「痛い!ごめんごめんごめん!ごめんなさい!悪かった!だから本当にどうか許してくださ〜い。」


結局、家の前まで離してもらえなかった。


「あ、そうだ私明日お婆ちゃん家に用があるから先に検見川浜にいってるね。」


「わかった。それじゃあ、また明日。」


「はい。」


「おう…。」





「ただいま。」


「おかえり。相変わらず新聞部は遅いね。」


出迎えたのは妹の土方 晴香、中学3年で江戸前高校の中等部に通っている。物理部で、軍事マニアでもある。これは、自衛官だった父の影響だろう。

特に父は、国際宇宙開発機関(International space development organization)通称ISDO(イズド)のHG計画のための特設部隊、「ホール・アース」調査隊の警護部隊の分隊長のひとりだったが、計画は失敗。というのは、宇宙からゴンドラを降下さてホール・アース中央に直接アタックする計画だったが、調査隊は失踪、当然生還者は愚か残骸すら見つからなかった。

また、母親も晴香を産んで間も無くして亡くなったらしく、今は晴香とふたり父が残した貯金と保険金で生活している。


「晴香。あした新聞部の皆と出掛けるから。」


テツが夕飯をほうばりながらいう。


「はーい。ついでにあたしも出掛けるから。」


「え、何時に家でるの?」


「7時だけど。」


「はあ?夏休みなのに?」


「日帰りバイト。東京駅のまえでキャラクターの着ぐるみを着るの。と、いうことなので今日はもう寝るね。おやすみ〜。」


「おう、水分は小忠実に摂るんだぞ。」


これが最後の日常になるなんてだれも思いもしなかった。


人々はこうして最後の安息の眠りについた。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


海洋の上、日の出の時刻のはずなのに、まえよりさらに降りてきた黒雲が太陽光をさまたげている。


太平洋、ホール・アース指摘海域から北に15キロの地点、ホール・アース北部観測艦隊の旗艦兼司令本部の航空母艦甚平で警報がなった。


「なんだ⁉︎」


「司令!これをみてください!」


オペレーターがパネルを操作するとフロントガラスの上に設置したモニターに上から見た「ホール・アース」のサーモグラフィが映っていた。渦は真っ白だが、中心が赤い。さらに中心から放射状に細長い熱源が移動している。大きさからいって空母の1.5倍くらいのやつから駆逐艦ほどの大きさのものまである。よく見ると、どれも渦の縁から一定の距離を保っていた。


「ついに来たか。」


司令と呼ばれていた男は祈るように首からかけた鎖に円く囲まれた錨のペンダントを固く握った。


「全艦ただちに戦闘準備‼︎各方位ホーク・アイを6機、制空戦闘機3機編隊を全班発進、防衛ラインの最前線で待機させろ。」


2分後、北部観測艦隊の空母甚平、信濃、隅田からホーク・アイが2機ずつ、続いてFA-T7[エフエー トリプルセブン]ゼウスの3機編隊が全12班発進した。


「全艦戦闘準備完了‼︎」


「五月雨と霜(架空の巡洋艦の名前)は、5インチ砲の旋回装置不調が見られるそうですが、他に異常のある船ないようです。」


報告を受け、司令が頷く。と、一斉に警報が鳴り響いた。


「司令‼︎目標が動きだしました。」


モニターのサーモグラフィを見るとたしかに熱源が渦の外側へ動いていた。


「全艦に通達‼︎目標が射程内に入り次第即刻砲撃せよ‼︎」




その頃、1機のホーク・アイが渦のに沿って飛行していた。渦の表面はドライアイスにお湯をかけた時にできる霧の黒バージョンのように濃厚な雷雲が立ち込めていて、所々で青白い閃光が瞬いている。

ところが、急に一部分だけ閃光の瞬きが増し雲が盛り上がった。ホーク・アイは横から雲に飲み込まれ、爆発した。


航空母艦甚平


「ポイントB-5でホーク・アイが1機撃墜されました‼︎」


「巡洋艦朝顔、駆逐艦欅と白樺が向かいました‼︎」


「こちら空母甚平、雲雀小隊と鴎小隊はただちにポイントB-5に向かってください。」


隊長神崎 大悟伍長が率いる雲雀小隊。


「こちら雲雀小隊、あと30秒でポイントに着きます。」


『こちら雲雀2番新藤です。このままだと雷雨に突っ込みますけど。』


『こちら雲雀3番加藤。そもそもこの位置まで雲って出てましたっけ?』


「待て‼︎各機ただちに緊急回避‼︎」


その掛け声と同時に、神崎機と新藤機は旋回。だが、加藤機は飛びたして来た雲のぎりぎりを通過した。そして、爆発。真っ赤な炎と破片は進行方向に飛び散り、雷雲に飲み込まれた。


「加藤‼︎」


『こちら空母甚平。3番機の反応が消滅しました。状況を報告してください。』


「3番機加藤がターゲットに激突た‼︎脱出は…確認できなかった。とりあえず一旦距離をとる。」


その瞬間、また炎が飛び散った。


「隊長オオォォォォ‼︎」


叫ぶ新藤の機体を赤い弾道が掠める。


『俺は無事だ。』


ヘルメットのスピーカーから聞き覚えのある声がした。


「隊長‼︎ご無事で‼︎」


『ああ、撃ち抜かれたのが機体の中央だったんで、吹っ飛ぶより先に脱出装置がはたらいてくれた。それよりも、今はさっさと敵の射程から抜けろ。』


「了解。そしたら向かいに行きますから。」


『ああ、頼む。』


加藤が旋回したときだった。

それまで雷雲に姿を隠していた敵が、姿を現した。それこそ第二次世界大戦当時の駆逐艦が宙に浮いてるようにみえた。が、あきらかに大きいうえに全体的に流線型をしていて、艦砲も上部前方に2棟、後方に1棟、下部にも前後に1棟ずつある。しかも砲身が二つに分かれたような形状をしている。そんな船が次から次へとでてくる。


(こりゃ敵わんな。)


そんなことを考えながら眺めていると、敵の船を青白い閃光が瞬いた。レールガンだ。だが、それも弾かれて雷雲の中に消えた。


駆逐艦欅


「レールガンの命中を確認。」


「どうだ⁉︎」


キャプテンハットを被った男が食い気味で聞いた。


「ダメです。弾かれました。」


別のオペレーターが言う。


「目標より高電子反応あり‼︎」


敵の砲身から放たれた閃光が白樺を直撃した。そして、吹き飛んだ。


「白樺大破‼︎」


すると、間もおかず朝顔が吹き飛んだ。


「朝顔大破‼︎」


別のオペレーターが言う。


「なにがどうなって…」


そう言いかけたとき、艦橋を一筋の光線が横切った。


「な、」


キャプテンハットの男が続きを言う前に船は炎に包まれた。




空母甚平にて


「現状を報告せよ。」


司令と呼ばれている男が言った。


「はっ、現状を報告させていただきます。北部隊では、雲雀小隊が2機大破により撤退、海猫小隊、鴎小隊は尚も戦闘中、ほかは全滅、巡洋艦は配備されている10隻の内7隻が撃沈、駆逐艦は36隻中29隻が撃沈しました。また、南部オセアニア艦隊はほぼ壊滅、ヨーロッパ艦隊も撤退を開始、残るはアジア艦隊とアメリカ艦隊だけです。」


すると、司令の隣に座っているキャプテンハットの男が悔しさに滲んだ声で言った。


「もはやこれまでか…。司令、撤退命令を。」


艦長の言葉にオペレーター全員が司令に向いた。


しばらく、静寂が艦橋を満たす。


「現時点をもってアジア艦隊は現状を放棄、撤退する!!」


空母から撤退を知らせる信号弾が放たれた。荒れ狂う海に信号弾は次から次へと広がっていく。


娘にどんな顔を向ければいいのやら。

顔を向けるを向けることができるだろうか。


そんなことを考えながらふと前に目をやると、船が浮いていた。


考えるより先に、身体が蒸発していく。


(香奈…)


そして全ては闇に呑まれた。




ホール・アース北部観測隊が全滅したのは、8月15日午前9時47分のことであたった。

この度は、最後までお読みいただきありがとうございました。

この作品はフィクションで、登場する人物、団体、事柄などは作者の妄想であり、実際のものと関係はございません。


本作品にでてくる作者の妄想上の人物、出来事、単語については要望があり次第解説を小説として出させていただきますので是非評価、レビュー等よろしくお願いします。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ