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試合の形式

第1話から第5話について少し加筆・修正させて頂きました。大した改稿ではありませんが改稿された部分があると言うことをお知らせしておきたいと思います。

 その日の授業はもはや授業と呼べるものではなかった。特に午前中の通常科目の授業に関しては誰も先生の話など聞かずに転校生の話題で持ちきりだった。中には図書室から契約精霊に関する文献を持って来たものいる。俺はそんな中で今日何度目か分からないため息を吐く。先ほどまで質問責めにあっていたがそもそも俺に答えられることなどほとんどない。それでもなんとか誤魔化しながら午前の授業を乗り切り現在に至る。俺は今屋上にいる。屋上は本来立ち入り禁止なのだが昼食を摂るためと、少しは休みたいという理由で学園長に何処か人の来ない場所を貸してくれないか聞いたところ屋上の鍵を貸し与えてくれたのだ。その時にフレイはともかく他の2人の転入生もなんで同じクラスになったのか聞いたがどうやら元々二人の転入は決まっていたらしく、そこにフレイも乗っかる形になってしまったらしい。他にも試合を申し込まれたという話をすると学園長は仮にも相手は元生徒会長であり、しかも1年生の段階でそこまで上り詰めたエリートだということを教えてくれた。しかしそんな情報を聞いてもなんの役にも立たないというのが現実だった。

 そのあと俺はこそこそと屋上まで行きメールで昼飯の調達を誠司と綾香に頼んでここで待っているという状況である。ちなみにフレイはクラスメイトに囲まれて質問されたりして時間を取られているだろう。屋上の扉を開く音が聞こえる。おそらく誠司たちだろう、そう思い振り返るとそこには予想外の人物がいた。

「まったく、どこかに行くなら一声かけてくれればいいだろう紫縁」

そこには少し不機嫌そうなフレイの姿があった。俺はフレイが生徒たちに囲まれていたのを知っていた。だからこそ伝えることは出来なかった。それに一緒に行動することは目立つ。屋上にいることがバレてしまえばここに来た意味はなくなる。

「悪い、皆に囲まれてたから声かけにくくてな。そういえばよくあの輪から抜け出せたね」

「ああ、皆が一緒に弁当を食べようと食事を取りに行った隙にな」

なるほど、と思うと同時に一つの疑問が生じる。

「・・・どうして俺がここにいるってわかったんだ?」

「なんだ、そんなことか。魂が繋がってるんだ、相手の居場所くらいすぐわかるさ」

「そうなのか?俺にはフレイの居場所なんて全然分からないんだが」

「それはまだ慣れてないからだろう。時期に慣れてくれば分かるようになると思うぞ」

そんなものかと納得しているうちに誠司たちが昼食を持ってやって来た。しかしそこでフレイのための食事を用意してもらっていないことに気づく 。しまったなと思っているとフレイもいることに気づいた綾香が小走りに近づいてくる。

「なんだ、フレイちゃんもここにいたんだ。教室にいないから探しちゃった」

「ちゃ、ちゃんって・・・」

フレイはちゃん付けされたことに何か反応しているが俺は話を進める。

「フレイに何か用でもあったのか?」

「何かってフレイちゃんの分の食事も買っといてあげたんじゃない。あんたが自分の分用意してないってことはフレイちゃんのも用意してないだろうなって思って」

「待て待て待て。なんで俺が自分の分用意してないとフレイも用意してないってことになるんだ?」

契約精霊であることは話したが一緒に住んでるということは言ってないはずだ。

「だって一緒に住んでるんでしょ?フレイちゃんが言ってたけど」

「・・・フレイ、話したのか?」

バレると面倒そうだから黙っているつもりだったのだが。

「ああ、綾香は紫縁の友人と言うことだったからな。話しても問題ないだろうと思ったんだがまずかったか?」

「ちなみに他の人には?」

「流石に自分の住処を言いふらすようなことはしていないから安心していいぞ」

それならまあいいか。

「何はともあれ、二人分の飯ありがと。助かったよ」

俺はそう言いながら千円札を綾香に手渡す。

「そんなことより、二人はどういう経緯で契約することになったんだよ?」

誠司が気になったのか飯を食おうと座りながら聞いてくる。

「教室ではうまく誤魔化してたけどよ、まさか俺たちにも言えないことなのか?」

俺は少しは悩んだが去年からの付き合いとはいえ信頼できる友人だと思っていると二人には昨日あったことを詳しく話すことにした。

「・・・それじゃあ契約したのは昨日なんだな?」

話し終えると誠司が聞いてくる。

「そうか・・・。でもそれってまずいんじゃないか?」

「何がまずいんだ?」

「放課後のことだよ。まだ訓練もしてないんだろう?」

ああ、と頷きながら考える。確かに彼女たちは最近契約を結んだわけではないだろうしきっと魔法の扱いも俺なんかよりずっと上だ。フレイだけでなく俺も参加することになればこのままじゃ戦いになるかも怪しい。

「試合形式にもよるな。もし契約召喚戦なら勝てるかも知れないが、総合召喚戦だと厳しいだろうな」

 魔法世界に於いて召喚術師だけが参加する試合には二つの試合形式がある。契約召喚戦は召喚術師は後方支援などはせずに指示をだすか見守ることしか出来ず、召喚した契約召喚獣に戦いの全てを委ねる契約召喚獣の力量を比べるための試合方式だ。総合召喚戦は前衛と後衛に分かれて戦術的に戦う試合だ。通常は契約召喚獣を前衛、召喚術師を後衛とするのが定石である。後衛は後衛のために指定されたゾーンに入りそこから前衛のための支援を行う。このゾーンは強力な結界に守られていて外からの攻撃は通さない。結界の内側から前衛を勝利させるために考えて呪文を使う必要がある。この試合は前衛が戦闘不能に陥るか後衛が降伏リザインした時点で決着がつく。つまりは後衛は前衛を勝たせるための存在であり、遠距離戦もしくは支援魔法の使い手であることが好ましいのだ。この試合に於いては簡易召喚獣はただの魔法として扱うのでいくら召喚しても良い。

 おそらく勝ち目があるとしたら契約召喚戦である。あれなら俺の実力に関わらずフレイが相手の精霊と1対1で実力を出し切ることができるだろう。

「少なくとも、紫縁じゃ後衛は務まらないだろうから勝ち目があるとしたら召喚戦か」

誠司は俺と同じ結論にたどり着いたようだ。

「なあフレイ、あの契約精霊とサシで戦った場合の勝率はどれくらいだ?」

「高くはないだろう」

フレイは少し悩んだ後に言う。

「まだわからないが相手は水系統の精霊だろう。私は自分を炎の精霊の中ではかなり高位であると思っているが相手が水の精霊だと厳しい。氷ならむしろ有利に進めれると思うがな・・・」

「ん?氷と水って違うのか?どっちも扱えるものだと思ってたが」

「基本的には似たものだが固体を扱うのと液体を扱うのでは全然勝手が違う。水の精霊になるか氷の精霊になるかはその精霊の特性が固体と液体、どちらを扱うのに特化しているかだ。契約精霊を生み出した大元の精霊は同じなんだがな」

契約精霊を生み出す大元の精霊を『大精霊』と言うらしく、水の大精霊は水も氷も扱えるらしいがその魔力の欠片である契約精霊はどちらかに偏るらしい。ちなみに契約精霊の格というのはその契約精霊を為す核となる欠片の大きさで決まるらしい

「それに相手が氷の精霊だとしても私より高位であった場合は不利になる可能性が高いな。何しろ向こうの方が魔力の扱える量が多いからな」

「そうなのか?フレイは自分の事を高位の契約精霊って言ってたのに魔力の量には自信がないのか?」

「いや魔力の量ではなく扱える量だ。精霊の魔力は前も人間の魔力とは違うんだ。人間界で十分な効果を発揮するには人間の魔力を術式の核にする必要がある。これは長時間人間界で過ごせば少しずつ緩和されて必要量も減るんだがな。だが私は顕現してからまだ1日しか経っていない。必要な人間の魔力量はかなり多くなる。そしてその負担は全て契約者である紫縁にかかるのだ」

それを聞いて俺は確かに不利だと感じた。しかし昨日の戦いでは俺自身はそんなに消耗しなかったことを疑問に思い聞く。

「昨日のは本に溜まってた魔力を使ったんだ。お前が1年間ひたすらにあの本に流してた魔力を私が契約の時に受け取ってな」

つまりあの力は俺が1年間無駄にしたと思ってきた魔力を使って発動できたということらしい。

「霊装だけは精霊の魔力だけで編めるのだがな・・・」

「つまり紫縁がどんなに魔力使われても我慢すれば良いってことじゃないの?」

綾香はサラッと凄いことを言った。

「魔力は使い過ぎると生活に支障が出ることもある。そうそう無茶をする訳にもいかないだろ」

誠司がそれは無茶だと言って止める。

「とりあえずの目標は契約召喚戦に持ち込むことだな。現状では少なくとも総合召喚戦は勝負にならない可能性がある」

誠司の冷静な判断に皆が頷く。俺もそれには同意だった。


 結局、その後は雑談をしながら昼食を取り午後の魔法の授業に向かった。その間もどうすればいいかを考えていたが結局良い案もないまま放課後を迎えてしまう。

「紫縁君で合ってるわよね?とりあえず訓練棟まで連れて行ってくれるかしら?」

転校生の櫻はすぐに俺のところに来て言った。どうやら訓練棟の場所を知らないらしい。

「ああ、それは構わない。ところで櫻、試合方式の話なんだが精霊の力がどう言うものかを皆に見せるなら契約召喚戦が良いと思うがどうだろう?」

「確かにその通りね。試合の形式についてはそれで構わないわ」

なんとか此方の不利がマシになるような土俵を用意できたことにほんの少し安堵しながら俺は櫻やそれに付き従うエス、見に来るクラスメイト、応援をしてくれる誠司たち。そして自身の契約精霊であるフレイと共に訓練棟へと向かった。


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