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プロローグ ー猫と異世界転移ー

「私はこの世界の生物じゃないの、私はニア王国という場所で育ったわ。そこでお父様があんまりにも勉強勉強とうるさいから家出してやったのよ。それでね・・・」


悲しい過去の話を始めるかと思ったら、なにか違う気がする。


「ちょっと、ちゃんと人の話は聞くものよ」


人じゃないよね?


「じゃあ、猫・・・だっけ?その生物の話も重要なんだからちゃんと聞きなさいよ」


自分のことを言っているのに他人事とはまたどう言った了見なのだろうかね


「それで、あの世界にいるからダメなんだと判断した私はここまで来たのよ」


どうやって?


「魔法陣からの転生」


魔法陣?なにそれおいしいの?


「こちらの世界では科学が全てらしいわね」


そうだけど・・・


「私の世界は科学が魔法なのよ」


へーよくそうまあトントンと嘘つけるもんだ


「あなたって案外強情なところあるのね」


お前は随分と薄情だな


いつしか、僕はこの忌々しい猫をお前とまで格を下げていたことに気付いた。

アリスは見下した態度を終えるとあーやれやれとひと段落終えて毛繕いを始めた。

しかし、それが終わると今度は残念な表情を浮かべながら話出した。


「でも、困ったことがあってね」


まだあるのか、もう終わったかと思ったよ


「科学って魔法より難しいのね、すぐに飽きたわ」


家でなにやってんだよ


「ちょっと電子レンジをいじったわ。卵が数個破裂してたわ」


お前・・・


「それで、私帰りたくなったのよ。国に」


ホームシック?それとも魔法が恋しいの?


「どっちもよ、帰るためには魔法陣を作ってその上に乗って呪文を唱えればいいだけなのよ」


あ、じゃあさっさと帰ってください


「でも」


でも?

そこで、

またもや困った顔をする。


「肉球があって書けないのよねー」


猫の諸事情なんか知らん


「そこであなたよ!一馬!魔法陣を書きなさい!」


なんで僕が?


「あなた以外誰がいるって言うのよ、あなた以外私の言葉が通じる人いないのよ⁉︎」


たしかに、そうか僕でなければダメ・・・か


「じゃあ、私の言う通り書いてちょうだい」


そして、僕はしょうがないので魔法陣を書くことにした。

その間、アリスはずっと僕を見ていたのだろう。


若干、視線を感じる。

魔法陣を書きながら、思ったこと。

それは、魔法陣がただのマンホールの絵だった。

アリスは帰れるとあって、毛繕いをしている。

そろそろ7時を回る頃だろうか、もうら街灯の明かりだけしかなく、もちろん公園には僕たちしかいないが、道にもそろそろ人はそんなにいないだろう。

お母さんは心配しているだろうか?

警察沙汰はごめんだ。


いろいろ考えているうちにできた、これでも中学時代はよく絵を書いたもんだ。


「へーなかなかうまいじゃない」


とアリスは上から目線だが、僕は褒められたことが嬉しかった。


さあ、これでとっとと帰ってくれないか


「実はまだあるのよ」


なに⁉︎


「円の中心部に模様を書きながら詠唱しなきゃダメなのよ」


しょうがないのでとことん付き合うことにした。


僕は円の中に入り、アリスもベンチから降り、中に入ってきた。

2人なら余裕で入れる広さなのでちょうどいい。


で、どんなの書くんだ?


「まず、丸を書くのよ」


で?


「その丸の中にちょんよ」


つまり、まーるかいてちょん

どっかで聞いたことあるようなセリフだ


「準備はいい?」


そう言うと、アリスはすっと立って祈るような姿勢になった。

そして、こう言った。


「我が体に眠りし力よ私をニア王国に帰還させよ」


推測だが、この世界のどこからでも使えて、行き先も指定できるのだろう。


僕はアリスが唱えている間、丸と点を書く。


それらの詠唱と丸と点を書き終わると同時に、魔法陣が光り始める。


おお!


「どう?すごいでしょ?」


アリスはふふんっ!と鼻を高くしている。

はっきり言ってすごい。

まさか本当に魔法が存在したとは・・・


でも、そんなことはどうでもいい


僕はすぐにでも家に帰らなければならない。


なあ、僕そろそろ帰っていいかな?


「もうあなたに用はないわ」


最後の最後まで失礼なやつだな

最初は可愛いやつだと思ったけど、僕は騙されていたのか・・・


僕はもう用は済んだので魔法陣から出ようとすると、


バゥィーン


?なんだ?


もう一度・・・


バゥィーン


あれ?あれ?あれあれあれ?


お、おい、出れないんだけど


「あ、言い忘れてたわ。魔法陣が発動したら出れなくなるのよ」


え・・・言うの遅いよ⁉︎

じゃあ、どうすりゃいいの⁉︎

僕どうなっちゃうの⁉︎

嘘でしょ⁉︎


だんだんと眩しさが増してくる魔法陣が忌々しい


そして、僕は最後のあがきもできずに、光りの中に消えていった。


公園に書かれていた魔法陣は消え、いつもの公園に戻っていた。

そこに、一馬の姿はなかった。





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