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何の冗談?-4-

 驚きからなのか、どんな理由からかは知る由もないけれど、力が抜けた彼の指を解く。そのまま緩く握ったのは、慰める為のそれで、他に意図するものは何もない。

 驚いた様子だったウィリウスが、和歌に応えるように握り返してくる。そうすることで彼が少しでも己を責める気持ちが薄れるのなら、それでもいいと思った。

「そうだな……。カズ、確かに、其方の言う通りだ」

 けれど、さすがにそれが唇に持っていかれそうになったので、丁寧に解かせていただいた。

 そんな、待て、を要求された子犬のような瞳をしないでほしい。

 思わず、撫で撫でしたくなるではないか。

 しかし、相手は成人男性。しかも自分より明らかに年上だ。何よりも礼儀が大切だと教えられてきた身。失礼を働くような真似をするべきではない。

 そう己に言い聞かせ、和歌は敢えて、ウィリウスの、子犬のようなつぶらな瞳に気付かない振りをした。にこりと笑い、無言で押し通す。

 神話の世界で生きている彼の王は、和歌の付け焼刃的なポーカーフェイスでも簡単に騙されてくれたようだ。階段を降り切った彼は、ステールで隠された祭壇の前で立ち止まった。

「しかし、その悲しみも全て終わる。カズ、其方が現れたからだ」

 天を抱くように。あるいは、祝福を求めるかのように。

 両手を広げ、朗々と詠う王の背を、和歌は少し高い所から見下ろしていた。

「大いなる神が遣わした予言の乙女。其方の存在が、我々の最後の希望」

 振り返った彼の、流れた銀髪が弾く光が眩しい。

 しかし、和歌が目を細めた理由は、それだけではなかった。

「救世主、『天羅の乙女(ルベリアス)』よ。其方が全てを終わらせてくれる」


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