何の冗談?-1-
有り得ない。
まさに、その一言しか思い浮かばなかった。
だって、可笑しいでしょう?今の今まで、というか今でも、自分は日本の一介の女子高生に過ぎない。大学受験に追われているわけでもなく、かといって慣れない高校生活にあたふたしているわけでもない、中だるみの高校二年生の、ただのか弱い十六歳の少女だ。いや、敢えて、か弱いとこの部分は強調したい。
少なくとも、この場所では。
「ここが、カズ。私達の希望の場所だ」
案内されたのは、高い高い天井を有する広い建物だった。見上げた天井はドーム状で、中央に嵌め込まれたステンドグラスから光が差し込んでいる。垂直に落ちる光の終着点には何かが置かれているようなのだが、それは宗教的なデザインが施された白地のカーテンで覆われていて見えなかった。
ここが教会のような役割を果たしている建物なら、恐らくきっと祭壇だろうそれを囲むようにして階段状の長椅子が設けられていた。今はそこは無人だが、何か特別な儀式などの時にその長椅子を埋める程の人々が集まったら、それは荘厳な光景になるのだろう。
ここは、無宗教に近い日本人でも肌で感じる程、神聖な場所だ。
「ここでは王家の祭事が全て執り行われる。ステールで隠されているのは祭壇だ。あの場で私達は神に祈りを捧げるのだ」
イケメン王子様こと、リンベール王国を治めるウィリウス=ライオール=フィルチチェが指差して見せたのは、光が降り注ぐ中央の祭壇で、それから考えるとステールという名詞はどうやらあのカーテンを示すらしい。