何でも屋さんの依頼
2134年、地球に飛来した数多の流星群。人類未観測の災害、未曽有の危機であった流星群が人類に与えたのは全世界で死者約1億9000万人の人類史上最悪の天災と流星群に付着し地球に飛来した未確認物質。それに適応した人間が手に入れた”異能力”であった。
「天城さ~ん。そろそろ依頼が無くて飯食えなくなりますよ~」
「武臣、うるさい。そもそも最近でっかい依頼こなしただろうが」
ガラガラの何でも屋事務所の中に所長の天城竜星、自称副社長の島本武臣の二人が軽口を言い合う。いつも通りの無駄話と不定期の高額の依頼がこの事務所の仕事。そんな時事務所のドアが開く。
「すいません。ここが何でも屋ですか?」
訪れた客人は問う。艶やかな黒髪が首元まで整っている。シンプルかつ機能的ながらもしっかりとした雰囲気を醸し出している。武臣的にはこれは育ちの良い女性と判断できる
「はい!!!そうです!!!依頼ですか!!!水出します!!!席座ってください!!!」
「え、はっはい。分かりました・・・」
「武臣、困ってんだろ、お嬢さん外は暑いですよ。中にどうぞ」
「ありがとうございます」
「お嬢さんお名前は?」
「神崎未玖です。年は19です。」
「神崎?・・・いったいどのようなご依頼で?」
天城は早速本題に取り掛かる
「私の、神崎未玖の護衛と遺産争いに力を貸してほしいのです」
「護衛?いさんあらそい?お願いします。天城さん!」
「おう水あんがと。護衛と遺産争いとは?神崎さん」
「まずは神崎家のことからお話しします。神崎家は今から18年前の流星群。多大な死者を出して世界の、日本を大きく書き換えたあの日以降、日本で急速に力を伸ばしてきました。特に政財界には大きな力を持ちその富を瞬く間に増やしていきました」
「知ってました天城さん?」
「神崎家は有名だからななんとなくは知ってたよ」
「そしてここからが遺産争いについてです。つい先月のことです前当主であり私の父親にあたる神崎卯次郎が亡くなりました。次期当主は兄である神崎辰之進がなる予定で、代々続く当主を継ぐための儀式をすべく沖縄県にある神崎家の所有地でもある群星園に兄は向かいました。4月5日から4月7日まで執り行う予定でした。ですがその最中私に連絡が来たのです。兄が死亡したと」
「誰に殺されちゃったんです?お兄さんは?」
「武臣」
「大丈夫です。どのみちな話さないといけません。おそらくは長年神崎家に仕えていた平賀家、大神家のものによるものだと考えています。儀式の中に入れるのは神崎家、平賀家、大神家と一部の従者のみです。そして私に連絡をくれたのは従者の一人、直接見たわけではないですが、おそらくは」
「お兄さんが殺害された今、次期当主は未玖さん。あなただ、神崎家の莫大な遺産を狙う平賀家と大神家の連中からあなたを守るというのがもう一つの護衛の依頼ですか?」
天城が残りの内容を全て代わりに言う。それに納得するように武臣も顔を上げる。天城が話を理解して天城的に重要なことを話す
「依頼料についてで・・・」
「依頼料は遺産の10%です。お願いします、お願いします・・・」
天城の話を未玖が遮る。遺産の10%とというのを聞いて天城は驚きその場に立ってぐるぐると回り始める。天城が頭を使っているときのサインである。少しして落ち着き未玖と向き合いながら手を後ろに回し武臣にハンドサインを送る
”武臣、時間を稼げ。裏を取る”
親指と人差し指を何度も交差させハンドサインを送る
「未玖さん、お腹減ってません?この辺で上手いラーメン屋知ってるんでちょっと食べに行きません?」
忠実に命令を遂行するため不自然な流れで食事に誘う武臣
「え!いや・・・依頼を」
無論困惑されるもハンドサインを受けた武臣は止まらない。ただいち早く受けた命令を遂行しようとする機会と化す
「まあ腹が減ったらなんとやらですよ。じゃ天城さん行ってきますね~」
強引に未玖を外に連れ出し、そのままの勢いで行きつけのラーメン屋に連れて行った
「へいらっしゃい。おお武臣じゃねーか。横の人は?」
「依頼人すよ店長、腹減ったんで一回飯を食べに来ました。俺いつもので!」
軽快に挨拶と注文を済ませた済ませた武臣と裏腹になれない店であたりを見まわし、おすすめメニューや店の空気感を掴もうとする未玖
「未玖さん何食べます。俺のおすすめはこの豚骨醤油ラーメンですよ」
「そ、そうなんですか」
「大丈夫です?いきなり過ぎたらすいません」
「いえいえいえ。私こういうお店は初めてで、何を食べたらいいのか・・・」
「ま~あ、好きなのでいいんじゃない。好きなもの食べるのが一番楽しいでしょ」
「そうですかね、じゃあこの味噌ラーメンで」
二人ともメニューを頼み待っているとき。突如武臣の首元に冷たい何かが当たる。武臣は経験からそれが刃物であると理解する
「お前、護衛か?」
「誰だよお前」
刃を当てた男が話しかける。危機的状況にも見えるにも関わらず動揺の素振りを武臣は見せない。両者の間に緊迫感が走る
「1つ言っておく。横のやつが神崎の人間と知らないなら手を上げ、頭を机につけな。命は助けてやる。もし護衛なら外に出な」
「2つだろうが。俺も1つ言っておくぜ、ボコボコにされたくなければ帰りな」
緊張感は依然解けない。店の店主、未玖はこの緊張した空間を刺激しないよう動かない。なにが死のトリガーになるか、なにがきっかけで戦いが始まるのかが分からない。ただ静かにするほかない選択肢はない。
男は武臣の言葉を聞いたと同時、殺気を漏らす。武臣もそれを見逃すはずもなく
「悪いな店長、店の壁壊すぜ」
同時武臣の手が光る。両者の緊張感は爆発の直前まで到達した瞬間
「待って!!!狙いは私でしょ。私が外に出ます」
未玖が声を上げた。その言葉を聞き男は口角を上げる
「で?どうする、護衛」
「仕方ねぇ。外に出る。ただしお前はボコボコにしてやるよ」
外に出たと同時。男は通ったタクシーを止める。その行動に武臣も仕草には出さないが困惑する
「何のつもりだ?」
「ここで戦うつもりはないってだけだ。ここから先の坂を上った先トンネルがある。そこで戦る」
武臣も男の実力を察する。断るメリットはなく、下手を打てばこの場で未玖が巻き添えになることを理解した。1対1、それも特段の邪魔も入らない空間の方が護衛しやすいと判断する。これを承諾。3人はタクシーに乗り移動する
「戦ってお前をボコボコにしたらお前の金で飯とタクシー代払うからな」
「好きにしたらいい。負けた時のことを考えるなんてくだらないだろう」
トンネルに到着。車を降りたと同時男は札を投げる。未玖の周囲に壁が形成される
「逃げられたら困るからな。戦いが終わるまでそこにいな」
未玖を拘束されるも武臣は冷静に状況を判断する。未玖を囲った札にこれ以上の効果はないこと。そして目の前の男を倒さなければならないことを。
「言ったろ、ボコボコにするって」
武臣は手の内に火種を光らせた。武臣の異能は”爆発”火種を用いて爆発を行う
「火種ね・・・。どこからでもかかってくるといいさ」
男が警戒を強め日本刀を抜いた瞬間。武臣は加速し男の虚を突く。懐に潜り込み手の火種を爆発させる。爆発音はするも男は寸前で回避した。そして武臣の胸部を浅く横に切っていた
「手に意識を集中させ、足元を爆破、その爆風の勢いで加速とは慣れてるね君。でもね俺だって慣れているわけよ」
「うるせぇよ。様子見はもう終わりだぜ」
再度足元を爆発させる。今度は男ではなく男の上を通り過ぎる。その後また爆風に乗りをして方向転換、それを繰り返して速度を上昇させる、轟音と目で追えない速度で武臣は翻弄にかかる
「悪くないよ。だけどねこの古草慶次郎の前では一切無意味なんだよ!!」
突如爆風の方向を男の方向に切り替え不意を突きにかかる。再度武臣は虚をつく。しかし再び慶次郎はそれを直前で躱す。今度は腕に傷を負う
「悪くない。だが私を倒すにはいささか足りないんだよ」
「どうだろうな。意外とそういう時にびっくりなことが起きるかもな!」
再び同じ戦術で攻撃しにかかる武臣。その速度は先ほどの比ではない。しかし男は顔色一つ変えることは無い
「同じ手を繰り返すことを奇襲とは言わないんだよ」
慶次郎の異能は”超反射”。構えを取り相手に触れられた瞬間事前に決めた動作を取る。今回はバックステップからの横なぎを事前に組み込み触れられた瞬間実行している。これまでの攻撃から、爆風で飛び回り速度をどれだけ上げようと、触れなくては爆破は無い武臣なら十分対処可能と慶次郎は考えた
再度方向に切り替えた武臣は慶次郎ではなく、すぐ目の前に降りて低く姿勢をとる。慶次郎が目線は下げるより先に死角に入った。慶次郎の方は補足しきれてないと思わせるため、目線を敢えて下げず、反応できていないふりをする。
「お前さ、下に意識行き過ぎだぜ」
武臣が一歩慶次郎の先を行く、慶次郎のちょうど真上が爆発し天井が一部落石として落ちてくる。下に意識を向けていた慶次郎は後れを取り背後に飛んで落石を避けようとする。体勢を崩した慶次郎に武臣は手の内に事前に作っていた火種を飛ばす
「俺に遠距離が無いと踏んだな、お前。悪いが俺にはあるぞ」
爆発が直撃する。慶次郎は激しく吹き飛ばされて意識を失う。同時未玖の壁も解除された
「未玖さん、いいよ依頼引き受けるよ。本気で未玖さんを狙ってる連中がいるってことは未玖さんの言っていることは事実ってわけだからな」
「ありがとう・・・ありがとうございます」
兄を失い自らの命を狙われている状況でようやく、信頼できる人間が増えた。その安心感から未玖は涙を流した。
「泣くことないでしょ何も。タクシー捕まえてラーメン食べましょ」
「はい!」
よろしくお願いします




