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第一話: 異能犯罪発生

この世界には希望と絶望がある。

そして――希望を強く願うほど、それが砕けたときの絶望は深くなる。


この世界では、そうした希望を失った人間の中から《異能》を得る者が現れた。


力を得た人々は自暴自棄となり犯罪に走り、社会は一時、混乱の渦に沈んだ。


――それが十年前。


現在では政府が異能者を雇用し、能力を悪用する者を取り締まるための組織《異能警察》を設立。

高待遇で迎え入れた結果、異能犯罪件数は大幅に減少した。


表向きは、だが。



「お〜い恒一くん。通報入ったよ、早く行かないと怒られるって」


「はいはい、了解」


通報が入れば、食事中だろうが風呂だろうが即出動。

事件は減ってきているが、それでもゼロにはならない。


今回は街中か……。

派手にやられると後処理が面倒だ。


「まだ着かないのか? さっさとしねぇと被害が増えるぞ」


「またそんなこと言って。一般人の心配もしなよ」


……また綺麗事か。


異能警察は基本二人一組。

だが俺は、正論ばかり吐く白峰が少々苦手だった。


「じゃあ俺の分の事後処理も頼んだ」


「ちょっ……急げばいいんでしょ!」


扱いやすいのは助かるがな。


俺たちは車を加速させ、現場へ向かった。



「クソが……! なんで俺だけ……!」


「今までの苦労を考えたらこれくらいいいよな!? いいに決まってる!!」


「対象確認」


『投降しない場合、捕縛を開始してください』


「おーい聞こえるか。いい歳してコンビニ強盗とは情けないな」


「知るかよ! 親にはとっくに見捨てられてる! 今やってることは俺の自由だ!!」


「……覚醒直後でハイだな」


「恒一くん! そんな言い方じゃ説得できません!」


「じゃあ優等生の白峰さんどうぞ」


「もう……任せてください!」


……説得成功した試しはないが。



「あなたの名前は?」


「……蜂須賀だ」


「蜂須賀さん。異能覚醒直後は精神が不安定になります。多少の罪は考慮されます。でも――これ以上は法が許しません。どうか投降してください」


「は? お前に何がわかるんだよ!」


「私も異能者です」


蜂須賀は俺たちの服装をじっくりと見て焦ったように声を荒げた。

「異能警察かよ……!」


蜂須賀は歯噛みした。


「なら力ずくで逃げるしかねぇ!!」


……案の定だ。



「全員俺を見下しやがって……!」


《圧縮命令〈プレス・オーダー〉》


ドタッ――。


周囲の市民が一斉に膝をつき、倒れ込む。


「ひゃっ……!」


「死傷者はなし」


……命令系。

しかも俺と同系統か。


「使用許可を」


『許可します。被害は最小限に』


「白峰、後ろにつけ」


能力範囲は半径十メートル。

精神状態から見て、致死命令までは届いていない。



「これ以上来たら動けなくなるぞ!」


「……使いたくねぇな」


効果圏内に踏み込んでも、足は止まらない。


「なっ!? 止まれ!! 這いつくばれ!!」


「……異能は熟練度で効き目が変わる」


溝落ちへ拳を叩き込む。


「ぐっ……!」


耐えたか。


「これで終わりだ」

黒瀬はもう一度拳を振り下ろそうとしたがそれを見た蜂須賀は腹を押さえながら笑った。


「……最後に話そうぜ」


「俺、ビルの警備員やってたんだ。安月給で業務外の仕事山ほど押し付けられてさ。権限もない連中から命令されて……パシリ扱いだ」


「……」


「耐えてたんだ。給料上げるって言われてたからな。……昨日クビだ」


「それで俺の中の何かが弾けた」


「そうだ。そんで異能者になったってわけ」


「……よくある話だ」


「……は?」


「普通以下だ」


蜂須賀の顔が歪む。


「俺の苦しみが……普通だと?」


「珍しくない」


怒気が爆ぜた。



「死ねぇぇええ!!」


《圧縮命令〈プレス・オーダー〉・最高出力》


「はっ!? しまった…」

周りの市民たちの拘束が解けていた。

効果を俺だけに絞って殺傷能力を得たか!!!

――狙いは俺だけ。


「お前は死ね!!」


バタッッ


黒瀬は地面に倒れ伏した。


「恒一くん!?」


「ははっ!! 勝った!!」


蜂須賀は白峰を見た。


「今なら逃げれば助けてやるぜ?」


白峰の脚が震える。


「……そんな……」


「恨むなら世界を恨め!」


「……こんなことしても、あなたは報われません!」



「……ん?」


白峰の視線が揺れる。


倒れていた黒瀬の指が、わずかに動いた。


「気のせい……?」


蜂須賀が振り向いた瞬間。


――黒瀬は立ち上がっていた。


「……《最高出力》」


ドゴッ。


鈍い音。


蜂須賀が白目を剥いて崩れ落ちる。



「……早く、封印しろ」


「ゾ、ゾンビ!?」


「死んでねぇ!」



「囮にしたんですか!?」


「市民守るためだ」


「もし私が本気で喰らってたらどうなってたんですか!?」


「一時的麻痺と仮死状態」


――ポカポカ。


「この人殺し!!」


「いて、いって、、やめろって誰も死んでねぇだろ!!!」


……結局、詫びに寿司を奢らされた。


回らないやつを。




――同時刻・政府中央庁舎 地下通信室


監視スクリーンには、搬送される蜂須賀の映像が映っていた。


『――黒瀬恒一。やはり耐性値が高い』


「異能干渉率、想定より二段階上です」


『自然覚醒型としては異常だな』


「人工個体と比較すると?」


『精神抵抗をほぼ無視できる可能性があります。

対量産個体制圧用として理想的です』


沈黙。


『……例の計画は』


「第三区画で最終段階へ。

薬物と電気刺激による誘導成功率は四割」


『低いな』


「ですが精神性を切除した個体は安定しています。

命令適合率は九八パーセント』


『それでいい』


画面に黒瀬の顔が拡大される。


『彼を引き上げろ』


「異能警察から……ですか?」


『必要なら配置転換。英雄に仕立てろ』


『別にすぐじゃなくていい、慎重にな』


誰かが低く笑った。


『いずれ――使う側に回ってもらう』


画面が暗転した。


2話は2日後ぐらいに更新します。

また他の作品も更新していこうと思います。

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