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2.マジカルバナナにパスはない







「ねえ先輩」




「どうした後輩」




「雨ですね」




「そうだな。風情を感じるな後輩」




「そうです。……激しいデジャヴを感じます」




「全く同じことを思っていた。奇遇だな後輩」




「つまりですね先輩」




「つまりだな?」




「マジカルバナナをしましょう」




「二人で行う暇潰しとして最適解! 流石後輩だ。いいだろう、受けて立つ」




「では、先輩から」




「任せろ。尊敬される先輩として完璧なスタートを約束しよう」




「そう言って前回は二回で終わりましたけどね」




「スタートは完璧だったと自負している」




「完璧とは……?」




「ひとつの欠点もなく、完全なことだ。まるで後輩のためにある言葉のようだな」




「使い方を誤ってますよ」




「誤ってはいないぞ後輩」




「そうですか。――マジカルバナナ」




「流れるような音頭、流石後輩だ。バナナと言ったら後輩!」




「待って?」




「ああ、待つよ。後輩が望むなら一夜だって」




「そうじゃなくて。またルール変わってます?裁判長呼びます?」




「いいや、何も問題はない。なぜなら、これは連想ゲームだろう?」




「ええ。だから“バナナ”から連想できるものを答えるんです」




「だから連想したんだ。その結果が」




「結果が?」




「後輩だったのさ」




「……理解不能です」




「考えてもみてくれ後輩。バナナは栄養豊富で、美容にも健康にも良い。さらに皮が剥きやすくて食べやすい。つまり――人に愛されるために生まれてきた存在」




「はあ……つまり?」




「そう考えれば、“後輩”に行き着くのは必然だろう?」




「必然ではないですね」




「素晴らしい必然だ!」




「ノリとテンションで誤魔化そうとしてますね」




「では改めていこう。後輩と言ったら?」




「……パス」




「既存のルールに縛られない柔軟な発想! 拍手を送ろう!」




ぱちぱち、と先輩が舞台の様に大げさに両手を叩く。


くだらない。……ほんとうにくだらない。




でも、そんな風に全力でふざけられる先輩が、ボクは嫌いじゃない。


むしろ――。




いつだってボクを笑わせてくれて、振り回してくれて。


格好良くて、手が届かない存在なのに、こうして隣で肩を並べていると、たまにその距離を見失いそうになる。




勘違いしそうになる。


もしかしたら、この時間がずっと続くんじゃないかって。


もしかしたら、この想いを伝えてもいいんじゃないかって。




……馬鹿だな、ボク。




本気で言っているのか、それとも冗談なのか。

その線引きができなくて、胸の奥がまた少し熱くなる。


けれど、それは口にしない。してはいけない。

先輩には知られてもいけない。

……そうやって今日も誤魔化し続ける。

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