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14.失いたくないもの
追いついて、後輩の腕を掴んだ。
その細い肩が、小刻みに震えているのが伝わる。
「……私は、君を失いたくない」
気づけば、そんな言葉がこぼれていた。
自分で言ったくせに、心臓が跳ね上がる。
でも、嘘じゃない。
どうしようもなく、本心だった。
舞台も、部活も、大切だ。
だけど――それ以上に。
私にとって一番大切なのは、後輩なんだ。
必死に声をかけても、後輩は俯いたまま。
何かを飲み込むように唇を噛んで、視線を上げようとしない。
「……もう一人で抱え込むな。無理に笑うな。頼む」
その言葉に、ようやく顔を上げてくれた。
涙で濡れた瞳が、夜の光に揺れている。
息を呑むほど綺麗で、痛いくらいに愛おしいと思った。
胸の奥で、何かがはっきりと形になっていく。
――あぁ、私は。
この息を飲むほどに綺麗な後輩を、好きになってしまったんだ。
言葉にするには、まだ勇気が足りない。
舞台の幕が上がる、その時までは。
だから今はただ、伝えられることだけを。
「……一緒に行こう。君が必要なんだ」
握った腕の熱を、絶対に離さないと誓いながら。




