塔の悪魔のあれやこれ
ノリと勢いでのこっていたざまぁもの
没ったけどなんかあったので…お楽しみいただければ幸いです
…この国、アルモンデスヨ王国の中央には、一つの塔が建っている。
その中には、建国当初にこの地で大暴れをしていたという恐るべき悪魔が封じられており、今もなおその中に捕らえ続けているらしい。
悪魔を消し去ることができないのは、その力が強大だから。
だからこそ、この塔で永遠に縛り続けることが、人々の安寧につながるとのことで…
『…え、マジで、そんな風に伝えられているの?人の口伝、自分たちに都合が良いように修正したり削除したりするのはわかっているけど、そう伝わっているのかぁ…』
「違いましたの?悪魔さん?」
『ああ。大暴れも封じられてもないぞ。ここで500年間、ゆっくり過ごさせてもらう代わりに、この地に他のやばいものが来ないようにしているだけなんだがな』
…塔の中で、私、アルモンデスヨ王国の第3王女であるミーテは、目の前の悪魔に驚かされていた。
色々な事情があって、この塔には本当に悪魔が封じられていたようだが…どうも、伝わっている伝承と事実が違っているらしい。
伝承だともっとこう、化け物のような姿をしているという話だったが…そこにいたのは、黒い靄のようなものしかなかったのである。
その状態でどうやって声を出せているのかはともかとして、今は悪魔の話だ。
『うーん、ちょっとした事情があって、精神的療養のために眠る期間を長くして、多少は情報を集めるために少し…大体100年おきに周辺事情を探ってはいたが…前の時までは正確だったんだけどなぁ。何で100年経過しただけで、俺が大暴れをして封じられた話になっているんだよ』
「そんなことを言われましても、わからないですよ。もうこの国の歴史書は、50年位前に前国王が過去のモノを処分して、新歴史書として編纂したものしかないですもの」
『絶対に、そこで変わっているだろ。大方、この国の建国した歴史を威厳あるようにとか、誇張する目的で変えたとか、ろくでもない人間なら良くある手口を使っているだろうなぁ』
「その可能性はあるかもしれないですわね」
悪魔のその考察は、当たっている可能性が非常に大きい。
何故ならば、過去の王族は謙虚だったとかそういう話は残っているらしいのだが、今の王族は酷いモノしかいないのである。
「血筋的には確実ですわね。つい最近、クドーズ殿下…いえ、その前国王を毒殺した濡れ衣をわたくしに着せたド腐れ外道野郎の血なら、大げさに自国を良く見せようとして偽るのは不思議ではないですもの」
『…え?何、濡れ衣を着せられたのか?』
「ええ、あいつがやった悪行を、全部わたくしに押し付けて、国を滅ぼそうとする悪女だとか無理やり断罪してきたのですから…』
かくかくしかじかと悪魔に話すが、その内容は説明しても頭が痛くなりそうなもの。
昨晩のことであり、王国の学園卒業記念パーティの中で、突然、あのドクズな殿下がミーテに対して濡れ衣を着せてきたのだ。
前国王の突然の崩御に違和感を感じ、地道に調べて証拠を見つけだした矢先だったというのに…どうやら他の王位継承者は排除しつつ、ついでに何かと邪魔だったらしい自分を陥れる気満々だったようで、あれよあれよという前に身に覚えのない罪を捏造された挙句、処刑方法を決めるまでということで地下牢にぶち込まれたのは酷い話である。
「どれほど、あのドクズで大馬鹿で、言い表せないほどどうしようもなさすぎるダメダメ人間のしりぬぐいをさせられたと思っているんですか!!あの場で股間を蹴り上げ、いいえ、潰して使い物にならなくしてやろうと思ったほどですよ!!」
『お、おぉぅ…凄まじい怒りだな。そして女の子が、男の大事なものを潰すとかいうなよ』
「問題ないですわ。お父様もかつて、潰されてときめいたとかで…ときめかれたくはないので、スパイク付きのハイヒールでやりたいですけれどもね」
『それはそれで、どうなんだお前の親は…』
人の趣味嗜好にとやかく言う気はないのだが、ツッコミどころしかない。
「それでも結局、どうしようもなくて…それで、最後に本当に国を亡ぼす悪女になってやろうかと思いまして、この塔で封じられている悪魔とやらを解放して大暴れさせてしまおうかと思ったのですわ」
『おいおい、本気でやらかす気だったのかよ?』
ミーテの満ち溢れた決意に対して、呆れたような声を出す悪魔だが、彼女としてはしっかりと覚悟はしている。
そうでもなければこんなこと、するつもりはなかったが…あのドブカス外道はそこまでさせるほどの大馬鹿野郎であり、ならば目には目を、歯には歯を、悪意には悪意をぶつけることを決めているのだ。
「そのためにも、ここに来るまでに閉じ込めた門番を体で篭絡するふりをして、首をちょっときゅっと捻って、逃げてきたばかりですのに…」
『…罪の捏造は酷いと思うが、その門番殺しで発生してないか?』
と言うか、想像以上に彼女、肉体言語会話能力が強くないかと、思わず悪魔は思った。
「いえ、大丈夫ですわよ。恍惚した笑みで、お礼を述べながら逝きましたもの。ドクズのしりぬぐいついでに、将来的に国を担うならば、国民の性的趣向は把握済みですわよ」
『うわぁ…別の方面の門にいったのか。ある意味、幸せに逝ったのかその門番…いや待て、把握済みって、国民全員の?』
「ええ、間違いなく。ちなみにそのドクズ殿下も、同類に追加して他にもおぎゃる大人子供だとか、主従逆転だとか、露出だとか…」
『…うっわぁ…』
ミーテの全力での事前調査には間違いはないはずで、知った瞬間に王子への評価は地へ落ちた。
その結果に嘘偽りがないことを理解してしまったのか、はたまたは知りたくはない人の深淵を聞かされたような顔で心の底から、ドン引きする悪魔の声。
一応、フォローを賭けるのであれば、人間は何かと癖を持っていることは抗いようのない事実。
色々と知っていく中で気持ち悪かった感覚もあったが、理解できなくとも害が無ければ放置で良い。
少なくとも、毎晩怪しい娼館に通うクデーズのプレイよりはましなはずである。一晩でたくさん借金をこさえた上に、国庫に手を付けて横領しているのは大問題過ぎるが…いや本当に、その他何を追加してやらかしたのか、人間であろうと悪魔であろうとも、知りたくないものではある。
何はともあれ、脱獄ついでに、その後に続けて3人ほど目撃された上で、懇願されてやったことも、多分罪にはならないはずだと、ミーテは持論を展開する。
それはアウトではないかと悪魔は思ったが、議論しても無駄だろうと割り切った。
「まぁ、大暴れ計画が駄目になったのならば、それはそれでいいですわね。悪魔が逃げ出したとすれば、それだけでも大騒動になりますし…」
ほぼ偽造のようなものとはいえ、それでも国民の大半が信じているのもまた事実。
歴史の中で封じられた悪魔が解放されて、逃げ出したとすればそれだけでも混乱が生じるだろう。
「そもそもあの国民たちも、もう少しどうにかならないものかとやってますのに…!!教育機関の充実や、医療の完備、徴兵制度を見直して兵士たちの育成にも力を注いでもあのクデーズが全て奪って、自分の手柄にしていることもわからないのは…!!」
『うわぁ…そりゃ悲しいことだな。でも、罪なき国民に対して、そこまでやるのも…』
「ちなみに、牢番から聞いた話では、わたくしの処刑方法は社会的な尊厳死らしいですわね。何でも既にやる気のある殿方が大勢集っていたのだとか…」
『前言撤回。ダメすぎだろ』
どこまでも駄目なのか…いや、そもそも新歴史書を編纂した王族が台頭した時点から、まともな人が国外へ流出していったのもある。
自分もまた、同じように逃げたかったが、それでもどうにか立て直しができないかと懇願されたりして‥末路がこれならば、最初から逃亡すればよかった。
とにもかくにも、今はこの悪魔に暴れてもらうという置き土産は残したい。
「そんなわけで悪魔さん、ここから出てしばらく全力で暴れてくれないかしら?そうね、あのドクズ殿下がいるあたりにでも、歴史書(捏造疑惑強め)にある大暴れをかましてほしいですわ」
『暴れろと言われても、そんな急には…』
「ええ、そううまくいかない可能性も理解済みですわ。そこで、こちらをどうぞ」
そう言いながら、ミーテが取り出したのは一枚の紙だった。
『これは…契約書?いや、物凄く厳重な、魔法がかかった代物か』
「ええ、悪魔は契約を結ぶことで、願いをかなえてくれることを調査済みですわ。ああ、この契約書自体は普段から、いざという時の重大な取引でも対応できるように持っていた私物ですが…これでお互いに、確実な信頼をもって契約したいのですわ」
『ふむ…』
悪魔が契約を結んで、願いをかなえる。
それはありふれた内容だが、より結びやすいように、相手に自分の覚悟を見せたほうが伝わるだろう。
『…代償に、魂を捧げる、か。…古今東西、確かに必要なものなのだが、大暴れ程度ならば別の者でも代用が効くぞ』
「問題ないですわ。魂を契約条件に出せば、悪魔の住まう世界へ魂が囚われるだろうということも調査済み…その行先が地獄であれ何であれ、大暴れの結果失墜してきた屑共を、最後まで見ることができるかもしれない世界に行けるのであれば、本望でしてよ」
『ガチの覚悟かぁ…なら、結ばないわけにもいかないか』
やや呆れつつも、悪魔はすぐにその契約書を手に取り、契約が交わされた。
内容的には問題が無い。国中のその他大勢が大迷惑を被るだけだが、救いようのない者たちばかりであれば…どうとでもなるだろう。
ひとまず話はこれで決まり、後は大晴れをしてもらうだけである。
『ああ、せっかく大暴れするついでに、サービスもしておこうか?』
「と言いますと?」
『ここまで覚悟と代償を出しているのなら、希望があれば具体的な内容を追加できるが…』
「なら、ちょっと待ってほしいですわ。実家に、『いつかあのドクズ殿下をぼろきれに返る100の手段』を置いてましたので取ってきますわ」
『…悪魔と契約しようがしまいが、結局末路決まってないか?』
「ふふふ…どれだけ、あの屑、雑巾以下、腐りきったゴミ以下の存在に迷惑をかけられていたとおもってますの」
(…目がマジすぎて怖ぁ)
どれほどの苦労を掛けられたのか、その眼を見ればわかってしまう。
ここまで淀み、瘴気と言って良いレベルのものを溢れさせるだけのどす黒さに、流石の悪魔も背筋が寒くなってくる。
―――それからしばらくして、アルモンデスヨ王国は悪魔の手によって滅亡した。
人々はその悪魔の所業に恐怖しつつも、ついでに公開された王国が行っていた数々の所業…正確に言えば、屑の隠蔽されていたやらかしの数々や、その他にあった汚職等の証拠もドブドブと溢れ出てきたので、彼女が制裁を加えなくてもいずれはなるべくして起きたことだろう。
『…結果として、自業自得で周辺各国は処理か』
「ええ、悪魔の仕業だとしても、あの国自身が自ら招いてしまったことなのだろうと評価されたようですわね。まぁ、すっきりしたから良いですわ」
『それならいいが…いや、良いのか?』
滅亡した国を前にして、思わずそうつぶやく悪魔ではあったが、彼女のほうは気にも留めていない様子。
本当に心の底から滅んで良かったと喜んでいるようであり、望みをかなえたとはいえ複雑な気分を抱くだろう。
何にせよ、叶えてしまったのであれば仕方がないことだと、割り切るのだ。
『それで、これからどうするの?』
「決まってますわ。速攻で命を落としてきますから、回収よろしくですわ!!」
『まてまてまてまてぇ!?思い切りが良すぎて大問題しかないぞ!?』
…ノリと勢いが強すぎて、むしろこのまま魂に直行でなってもらっても、迷惑しかならないのではないか。
可能ならばしっかり治したほうが良いと悪魔は考え、性格矯正の旅路が始まるのであった…




