27.社内恋愛禁止、提案してもいいですか?(小田室長side)
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「さて、どうしたもんかしら。」
自席に戻り、ため息をつく。
まさか副社長に、好きな人ができるなんて。
(しかも……あんな思春期みたいな態度取るとはねえ……。)
別に社内恋愛禁止でもないし、それで仕事がはかどるなら私は良いと思う。
でも、それはあくまで両想いの場合であって――。
脳裏に紬ちゃんの顔がよぎる。
(あれは……両想いって感じではなかった……。)
今までは副社長が秘書たちに好かれて、仕事がうまく回らなくなってしまっていた。
でも、今回の場合は逆。おまけに、彼女はきちんと自分の仕事をこなしている。
悩んでいると、ちょうど紬ちゃんが副社長室に向かうところだった。
その行く手を、早乙女さんと羽田さんが阻む。
「あ、あの、春原先輩、えーと……その……。」
最近あの二人が紬ちゃんの業務の邪魔をしているらしい、と黒川くんから話は聞いていたけど、なかなか目の前で見ることができなかった。
(やっと現場を押さえた……。)
注意しようと立ち上がりかけると、いつの間にか隣にいた黒川くんが小声で話しかけてきた。
「ここは俺が行きます。いいとこ見せたいんで。」
「……え?いつの間に……っていうか、いいとこ見せたいって……誰に?」
「いや、誰でもいいじゃないですか。とにかく、ここは俺が……。」
「そもそも、黒川くんは社長チームでしょ。」
小声で軽く言い争っていると、急に大きな声が響いた。
「いい加減にしてっ!!」
声の方を向くと、沙耶ちゃんが女子二人と紬ちゃんの間に立っていた。
「沙耶……?」
「私のこと、心配してくれてたんでしょ?でも、だからって……こんなやり方は違うよ!」
「で、でも……。」
目に涙を貯めたまま、沙耶ちゃんがキッと二人をにらみつける。
「私はもう大丈夫だから。もうこんなことしないで。」
「湊様のこと、諦めるの?」
「湊様への憧れは永久不滅!だからこそ、うちらが汚い真似をして推しに泥塗っちゃダメでしょうが!」
早乙女さんたちが顔を見合わせ、シュンとうなだれる。
「……沙耶……ごめん……。」
「ちがーーーう!謝るのは私にじゃないでしょ!!」
沙耶ちゃんが二人の背中を押して、ポカンとしていた紬ちゃんの方を向かせた。
「春原先輩……すみませんでした!」
「すみませんでした!」
「あはは……まあなんか変だとは思ったけどさ。」
紬ちゃんが頭をかきながら二人の頭を上げさせる。
「今度はちゃんとサポートお願いね。頼りにしてるから。」
ニッと笑うと、「じゃあ呼ばれてるから!」と紬ちゃんはその場を離れた。
泣き出した二人を沙耶ちゃんが慰めたり怒ったりしているのを見ながら、ため息が漏れた。
黒川くんと言い争ってる間に終わっちゃったけど、まあ終わり良ければ全て良し!よね。
(ところで……。)
まだ隣で立ち尽くす黒川くんに声をかける。
「良いとこ、見せそびれちゃったわね?」
「……ああ、逆に良いとこ見せつけられちゃいましたよ。」
(え!?)
にんまり笑う彼の視線の先には、いつの間にかもらい泣きしている沙耶ちゃん。
――やっぱり、今からでも社内恋愛禁止にならないかしら。
……もう手遅れな気もするけど。




