24.副社長はあんこがお嫌い?
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「せんぱーい!!」
午後、副社長のお茶セットを用意していたら、早乙女さんが駆け寄ってきた。
その後ろから、羽田さんも小走りでついてくる。
「お疲れ。どうしたの?」
「お客様からお菓子をいただいたので、ぜひこれを湊様のおやつに差し入れしてください!」
机の上にあったのは、有名和菓子屋のどら焼きだった。
"生地だけでも美味しい"と評判のふわふわ生地に、素材にこだわった優しい甘さの粒あんがぎっしり入った逸品……!
(お、美味しそ~!!!――だけど)
「副社長って、あんこ苦手じゃなかったっけ?」
直接本人から聞いたわけじゃないけど、確か室長の引継ぎメモに書いてあったような……。
「っあ、いや!ここのは別物らしいですよ!?」
「そ、そうです!ほ、ほら、有名店だし!」
(すごい勢い……そんなこのどら焼きが好きなの、副社長……?)
「そうなんだ!ありがとう、二人とも!」
淹れたてのお茶にどら焼きを添えて、副社長室へ向かう。
――後ろから飛んでくる、罪悪感のこもった視線には気付かずに。
「副社長、お茶をお持ちしました。あとこちらもどうぞ。」
「……ボクあんこ嫌いやねんけど……。」
「えっ、あれっ、ここのお店のはお好きなんじゃ……?」
「いや、あんこはあんこやろ。」
(や、やっぱり嫌いだったーーー!)
副社長のことだ、どうせ"王子モード"で格好つけて、お菓子を褒めたんだろう。
それを早乙女さんたちが勘違いしたんだな。
(いやー……これ、そのまま持って帰ったら、二人申し訳なくなっちゃうだろうな……。)
行き場のなくなったどら焼きを見つめながら、どうこっそり持って帰るか悩む。
「……そんなに気になるんやったら、キミが食べたら?」
違う!そういうつもりで見てたんじゃない。ないけど……。
「いいんですか!?ありがとうございます!」
「おいし……。」
評判通りの美味しさだった……!ふわっふわの生地と、粒あんの甘みが、たまらん……!
あとなんだろう、小腹が空くこの時間帯に食べるおやつって、なんでこんな美味しいの……!?
夢中でがっついていたら……なんか、視線を感じる……。
思わず顔を上げると、副社長がまたあの"くしゃみ我慢顔"をしている。
(何……?そんな食べ方汚かった……?)
前回もそうだけど、なんか……腹立つんだよな、あの顔。
「……なんでしょうか。」
「……なんもないし!」
そそくさと食べ終えたあと、私はまたとっっっても濃いコーヒーをお注ぎしてさしあげた。




