18.お肉パワー、注入?
「おはようございます!」
「紬ちゃん、おはよう。お休みは満喫できた?」
「室長!ふふ、最高でしたよ~!」
金曜にお休みをもらったから、3日ぶりの会社だ。
肉フェスでしっかり元気をチャージできたので、今週も頑張れそう!
「春原先輩!肉フェスどうでした~?」
お、女子三人組……と思ったら橘さんが見当たらない。
(いつも一緒ってわけでもないか。)
「めっちゃ楽しかったよ!混んでなかったらもっと食べられたんだけどね……!」
「さすが先輩ですね……!ってか一人でいったんですか?」
「え?違うよ~。」
「え!?誰!?彼氏ですか!?誰誰!?!?」
急に羽田さんが食いついてくる。ほんとこういう話好きだな、この子。
「弟です……。」
「……ああ……。」
二人とも興味を失い、自席に帰っていった。
(悪かったな!)
しょんぼりしながら私も自席に戻ると、橘さんも自席に戻ってくるところだった。
「橘さん、おはよう!先週は代理ありがとう。」
「あ……。いえ……。」
(ん……?)
明らかにテンションが低い。
あんなに金曜日を楽しみにしてたはずなのに、どうしたんだろう。
(楽しい金曜日が終わっちゃって、"虚無"ってる……?燃え尽き症候群的な……?)
こっそり振り返ると、早乙女さんと羽田さんも心配そうに橘さんを見ている。
もしかして、副社長と何かあったのだろうか。
考えを巡らしても答えが出ないまま、定時が近付く。
先週、副社長に嫌味も言われたし、今日は絶対にミスできない。
――それに、最近妙に調子が狂うことも多かった。
休みでリフレッシュできたし、気持ちを切り替えていかないとね。
必要書類を抱えて、副社長室へ向かった。
「先週はお休みをいただき、ありがとうございました。」
「楽しかった~?」
足を組み換えながら微笑みを浮かべる副社長。
(……あの、目が笑ってないんですけど。)
――怖気づいてはだめだ!
「はい!リフレッシュできました!」
冷たい目をしっかり見返して笑顔で言い切る。
「へえ~。ボクはその間一生懸命働いてたけどなあ。」
(……また嫌味か!)
「……ちなみに。」
渡したスケジュール表に目を通しながら話しかけてくる。
「はい。」
「誰かと行ったん?もしかして、キミのことやし一人ぼっち?」
クスクスと笑いながら、楽しそうに続ける。
ここで素直に「弟と行きました」なんて言えば、散々バカにされるのが目に見える。
(これ以上好き放題イジられてたまるか!)
だから――。
「秘密です。」
「へ?」
予想外だったのか、スケジュール表から顔を上げてこちらを見ている。
拍子抜けしたその表情が面白くて、うっかり笑いそうになる。
ぐっと堪えて、さらに畳みかける。
「仕事に関係ない、プライベートの話じゃないですか。」
副社長の真似をして、目を細めて表情だけ微笑んで見せる。
「……あれ?もしかして私のプライベートに興味がおありなんですか?」
よっぽど驚いたのか、完全に固まっている。
……この人、こんな顔できるんだ。
(ふふふ、これはお肉パワーの勝利だね。)




