13.名探偵羽田
「……きょ、今日、お昼、空いてる人ー?」
羽田さんの声に、デスクで仕事をしていた私は顔を上げた。
「珍しいね、羽田さんから声かけるなんて。」
「ちょ、ちょっと話したいことがありまして……!早乙女ちゃんは先に席取りに行ってくれてます!ねえ、沙耶もどう……?」
橘さんは少し考えてから、「うん、行く」と静かに頷いた。
二人のやり取りを聞いていた私も、そっと手を挙げる。
「じゃあ、お邪魔しちゃおうかな。」
社員食堂に向かい、それぞれランチプレートやパスタを受け取って四人でテーブルに並ぶ。
「それで、話したいことって?」と早乙女さんが尋ねると、羽田さんはニヤっと笑った。
「……あの、黒川さんのことなんですけど。最近、ちょっと変わったと思いませんか?」
「えっ」
橘さんがスプーンを止める。そのリアクションに、私は少し驚いた。
「なんていうか……前より副社長チームと関わることが増えてるし、雰囲気もなんか違う気がして。」
「そうかなあ?羽田っち、意外と見てんね!」
早乙女さんが楽しそうに笑う。
黒川さん――私の歓迎会以来あまり話すことはなかったけれど、確かに最近よく見かける気がする。
「私、思うんですけど……黒川さん、副社長チームに気になる人がいるんじゃないかと!」
「マジー!?ゲキアツじゃん!!」
早乙女さん、テンション高すぎ。でも、意外な人物の恋バナ(?)には私も興味を引かれてしまう。
そして羽田さんが、名探偵のような顔で言った。
「こ、この前さ、倉庫から一緒に出てくるの見たんだよね……沙耶ちゃんと、黒川さんが!」
「ええええ!?!!?私聞いてないよ!?」
「ええ……!?」
私と早乙女さんが同時に声を上げると、橘さんが慌ててフォローした。
「た、たまたまです!たまたま出くわして、声かけられて、それで、その……ランチに……!」
「そこから関係が発展したってこと……?」
羽田さんの冗談に、橘さんはますます焦って「ないってば!」と顔を真っ赤にする。
「ふーん……でもさ、黒川さんって、そういうとこ真っすぐそうだよね。気になる人できたら、ぐいぐい行きそう。」
「し、知らないよ!ほら、時間ないよ、早く食べよ!」
橘さんに急かされて、私たちは一斉に食事に戻った。
食べながらふと考える。
恋愛――それはきっと、自分が一番苦手なものだ。
今までの交際相手から、いつも最後に言われた言葉がよみがえる。
「紬ってさ、一人でも大丈夫そうじゃん。」
真っすぐ、ぐいぐい。
私みたいな人間にも、そんなふうに愛してくれる人がいるのだろうか。
「はぁ……。」
「先輩?お腹いっぱいになっちゃいました?」
橘さんが心配そうに覗き込んでくる。
「……ううん。なんか、いいなって思ってさ。」
ぽつりとこぼした言葉を、橘さんが不思議そうに見つめていた。
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