診察室にて
マイクロヒール!
呪文が唱えられると、ヒーラーから青い閃光が放たれ、魔王に触れた。
その直後、魔王は破裂した。
手をを見てみると
赤い返り血がべっとりとついていた。
魔王も赤い血だったようだ。
この光景が何度も頭の中で繰り返される。
今日、この診察で何か分かると良いのだが。
マルコさん、診察室へどうぞ。
お荷物はそちらの棚へお願いいたします。
本日は、幻覚の症状とのことでしたが。
少し検査してみましょうか。
反応ありませんね。
幻覚の魔法はかけられていませんね。
そんなはずはない?
いえ。この装置の判定は絶対です。
そもそも、幻覚は5年程前に完全耐性の防具が
世に出てから、幻覚魔法の罹患者はほぼいなくなったのですよ。
精神的な症状かもしれませんので
幻覚の症状をお伺いしますね。
ふむ。先日終結した魔王戦の時に幻覚を見たと。
その時に、魔王が回復魔法で破裂した?と。
ほうほう。見間違いではないのですかね?
エフェクトが青色の魔法であった。ほう。
魔王が破裂して、漏れ出た青色のエフェクトが地面に当たると
草木が生い茂ったと。なるほど。
確かに、回復魔法の特徴として地面にあてると
雑草などの成長が促進され草木が生い茂ることがありますね。
上級職の回復魔法を地面にわざと意味なく当てるということは
中々ないため、あまり見られない光景ですがね。
もう少し詳しく聞かせてくださいね。
幻覚の症状は他にありますか?
ない?そうですか。
ではその破裂した事象だけが、幻覚と疑っているということですね。
ちなみにそのヒーラーの方はどちらに?
魔王戦が終わってから見ていない。と。
そうですか。そのヒーラーの方に直接伺ったほうが早いと思ったのですが。
ちなみに破裂させたのは魔王だけですか?
魔王の取り巻きや、魔王城に出てきた敵も破裂させたと。なるほどなるほど。
となると、幻覚と言われるそれはそれ以前から見ていたのですか?
違う。と。そうですか。
なるほど。そのヒーラーは魔王城で合流したのですね。
そこからその幻覚をみたと。
名前すらイマイチ覚えていない?本当に急な合流だったのですね。
さて、診察結果から先にお伝えします。
マルコさんは至って正常ですね。
精神病や幻覚魔法にもかかっていません。
事前に記載いただいた、精神の正常性確認のテストも異常はみられませんでした。
また、先程検査した通り、幻覚にもかかっていません。
では、回復魔法で魔王が破裂したのは事実なのか?
今のところ事実のようですね。
ちなみに、私は回復魔法も専門ですので
少しお話させていただきますね。
このガラスの中のネズミは見えますか?よろしい。
このネズミに上級魔道士10人分のメガヒールを与えてみましょう。
この魔力瓶の中にメガヒールが入っています。
パァン!
見えましたかね。ネズミが破裂しました。
魔王の破裂の仕方と似ている?それはよかった。
恐らく同じ事象が、魔王戦で起こったものと私は考えています。
通常、ネズミはただのヒールで瀕死状態から完全回復状態になります。
生き物のコア部分にヒールが当たることで全身が回復していきます。
しかし、このコアに大量のヒールが当たると、コアの許容量を超えて過回復という現象が起きます。
この現象が発生するのは全回復の数億倍の威力が必要と言われています。
普通に生きていたらまず目にすることはないでしょう。
その消えたヒーラーさんは、数都市分の人の命を代償に
テラヒールやペタヒールといった極大回復魔法を魔王に放ったのではないでしょうか。
もちろん術者も無事ではないので、消えてしまったのでは・・
え、違う?祝勝会の飲みまでヒーラーは一緒にいた?そうですか。
あと、魔王に放った魔法はマイクロヒールだった?そ、そうですか。
マイクロヒールというのは微生物に当てて効果を実験するための
威力が低い研究室魔法とか言われているものなんですけどね・・
えーと、さっきのは聞かなかったことにしてください。
自信たっぷりに言ってしまったのですが、間違った説だと思いますので。
はい。診察は終わりです。
お会計は後ほど受付からお呼びしますので、お待ち下さい。