恋の手助けならウィッチクラフトにお任せ
試験監督をしていた先生が答案用紙を回収し、教室から出ていった。
その途端に、あちこちから声が上がる。
「やっと終わったー」
「やっべぇ、全然分かんなかった」
「あー、疲れた」
「最後の問題、何て書いた?」
それらの全てを打ち消すように、葵ちゃんのとびきり可愛い声が響いた。
「ねえ、打ち上げ行かない?」
クラスの一軍メンバーから、『わあ』っという歓声が沸き起こった。
葵ちゃんは、いつだってクラスの中心にいる。
というより、葵ちゃんのいる場所がクラスの中心になる。
ここ星ヶ丘高校2年2組のトップ・オブ・ザ・トップなのだ。
「いいね!」
「はいはい、私も行きたーい」
もちろん、私は蚊帳の外。
いいんだけどね。
だって、蚊帳の内側にいるほうが圧倒的に少数だから。
ちっとも淋しくない。
「蒼空も行くよね?」
「いいけど」
あっ、蒼空くんも行くんだ。
まあ、当然だよね。
カッコよくて、スポーツもできる蒼空くんは、間違いなく一軍だもん。
……あれ?
私、やっぱり少し淋しいかもしれない。
「みんな行くの?」
蒼空くんは、クラスを見回した。
蒼空くんがこっちにまで視線を向ける。
行けるはずないじゃない!
蒼空くんと目が合わないように、私は慌てて親友の 亜理紗のほうを見た。
そうしたら、亜理紗のほうも私を見てきた。
私たちはこっそりと弱々しい笑顔を交わす。
一軍の人たちは、イジメとかってことはしない。
単純に、私たちとは混じらないってだけ。
つまり、ひとつの教室の中に、ふたつの世界が存在しているのだ。
「カラオケでいい?」
「賛成!」
こうして、蒼空くんの問いかけに対する回答はうやむやになっていった。
* ੈ✩‧₊
ショートホームルームが終わり、一軍メンバーが帰るのを見送ったあとで、私は立ち上がった。
迷うことなく亜理紗の席に向かう。
「私たちもそろそろ出よっか?」
「うん」
試験前から約束していたのだ。
「何か予定あんの?」
この声は……
振り向くと、ニコニコ顔の玲央がそこにいた。
「おかいもの」
「俺も付いていってもいい?」
「今日はダメー!」
私はきっぱりと言った。
「えー、ダメ?」
玲央は、今度は亜理紗の方に顔を向けた。
「今日だけはごめんね。 風花とふたりだけで行きたいんだ」
亜理紗も申し訳なさそうに断った。
すると玲央は、傷ついた表情を浮かべた。
「邪魔にならないようにするのに」
大袈裟!
……でもないのかな?
よくよく考えてみると、私たちが玲央のことを断るのは、これが初めてかもしれない。
だけど、本当の本当に今日だけはダメなんだ。
私と亜理紗は写真部に所属していて、近々合宿がある。
そのために、虫よけグッズと、パジャマ代わりのルームウェア、それから下着(!)を買いに行くつもりだから。
たとえ玲央でも、男子禁制!
「次は絶対に誘うから」
そう約束すると、ようやく折れてくれた。
「わかった。風花が誘ってくれるまで、大人しく待ってる。その代わり、忘れんなよ」
* ੈ✩‧₊
全ての買い物を済ませた私たちは、カフェに入って休憩することにした。
荷物を下ろすと自然とため息が出たし、ソファに座れば足が重たくなるのを感じた。
私はチーズケーキとレモンティー、亜理紗はガトーショコラとカフェラテを注文することにした。
歩き疲れている上に、買い物中だってずーっと喋りっぱなしだった。
なのに、ケーキとドリンクという燃料を投下すれば、まだまだ話し足りない気がしてくるから不思議。
「私もともと合宿は楽しみだったんだけど、買い物が済んだら、もっと楽しみな気がしてきちゃった。あのルームウェア着て夜更かししようね」
「んー、そうだね」
あれ? 何だかうわの空……
「亜理紗? どうかした?」
ガトーショコラをひと口分飲み込んだ亜理紗が、お皿を見つめたまま訊いてきた。
「ねえ、あのとき、私たちも『カラオケ参加したい』って手を上げてたらどうなってたと思う?」
「えー?」
素っ頓狂な声が出てしまった。
「どうなってた……」
『大人数だと部屋に入り切らないから』って断られてた気がする。
あるいは2部屋取って、結局私たちは蒼空くんとは別室になってたかも……?
亜理紗が、意を決したように話し始めた。
「実は、蒼空くんが『みんな行くの?』って訊いてきたとき、私目が合ったんだよね。ドキドキしすぎちゃって、慌てて目をそらして風花のほうを見たんだけど……」
亜理紗は小さく『きゃー』っと悲鳴を上げて、口と鼻を手で覆い隠した。
「それって、アイドルが手を振ったら、ファン全員が自分に振ってくれたと勘違いするやつ!」
あんまりにも亜理紗が可愛くて、つい笑ってしまう。
「もう、夢くらい見させてよー。目が合った瞬間、蒼空くんが私にも『来てほしい』って訴えてきたの」
「うんうん。蒼空くんってそういうとこ、あるよね。一軍なのに、一軍以外とも分け隔てなく交流しようとしてくれるっていうか」
だからこそ、私も亜理紗もうっかりトキめいて、そして好きになってしまったのだ。
身分違いは重々承知していたにも拘らず。
「そうなんだよね。罪深いなー。あっ、だけど、分け隔てなくっていったら、もうひとりいるよね?」
「へっ、誰?」
「玲央」
「ああ、玲央」
それには同意できる。
ただし、玲央の『分け隔てなく』は、蒼空くんのとは意味合いが違う。
「玲央はどこにも属してないってだけだけどね」
「その気になれば、いつでも一軍入りできそうなのに」
言われてみれば確かに……
亜理紗はため息をついた。
「もしも私に、その気になれば一軍入りできるポテンシャルがあれば、蒼空くんにも気軽に話しかけられるのになー」
「わー、それいい。玲央って、なんて勿体ないことしてるんだろうね?」
「ポテンシャルはあっても、きっと価値観が違うんだよ。だって、玲央は『私たちのがんばらなさが丁度いい』んだって」
私は首を傾げた。
「『がんばらなさ』って何?」
なんだか失礼じゃない?
私や亜理紗だって、教室の隅っこでかもしれないけど、一生懸命生きてるのに。
「玲央に『どうして私たちともつるんでくれるの?』って、訊いたことがあるんだけどね、」
亜理紗は考えながら、たどたどしく説明してくれた。
「何ていうか、学校で楽しもうってガツガツしてなくて、淡々と学校にいるだけ? でも、別にやる気がないとか、つまんなそうとかって感じでもなくて。あと、授業もそれなりに真面目に受けてて……そういう『絶妙な塩梅がいい』みたいなこと言ってた」
「あー、私たちってそうかも。でも、それって褒めてる? ディスってる?」
「玲央はたぶん褒めてるつもり」
顔をしかめつつも、玲央ならそうなんだろうなって気がした。
私もまた、玲央のそういうところが嫌いじゃない。
「だったら、これからも仲よくしてあげよっか」
「性別関係なく仲よくできる友達は貴重だしね」
私たちは玲央の話をいい塩梅で締めた。
* ੈ✩‧₊
カフェを出て、来るときに歩いた道をまた戻った。
「ねえ」
亜理紗が前方を指差した。
「さっき、あんな看板あった?」
「ええ?」
よく見れば、シャッターの下りた小さなお店の脇に、木製の立て看板がひっそりと置かれている。
「私いつもそんな注意して歩いてないから自信ないけど、言われてみるとなかったかも……」
近づいて正面から見てみると、ペンキで『Witchcraft Shop』と書かれている。
「ウィッチ……クラフト……ショップ?」
亜理紗がスマホで調べてくれた。
「魔女が作ったものを売ってるお店ってことみたい」
「へー、魔女。面白そうだけど、お店閉まってるね」
「違うんじゃない? 看板の矢印はこっちの階段を指してると思う」
「階段?」
本当だ。
矢印の奥には外階段がある。
シャッターの閉まったお店の上に行けるらしい。
「行ってみない?」
そんなの、行くに決まってる。
「だけど、入り口をのぞいて、ヤバそうだったら引き返そうね?」
「わかってる」
ひとり分しか幅のない錆びた階段を、亜理紗、私の順にカンカン甲高く鳴らしながら上った。
* ੈ✩‧₊
入り口のドアは開け放たれていた。
「うっわー」
先に顔だけ覗かせた亜理紗が、感嘆の声を漏らした。
続いて私も店内の様子を窺う。
どれどれ?
「えっ、きれい……」
店内は植物がいっぱい。
床もテーブルの上も。
魔女の店というよりは、花屋といわれたほうがしっくりくる。
上部の空間でたくさんのガラス玉が回転している。
大きさも回転速度もバラバラ。
糸か何かで吊り下げられているんだと思う。
それなのに、それぞれはずっと同じ方向に、同じ速さで回転し続けている。
回転が逆向きの玉があっても、それは逆向きのままで回り続けている。
そして、ガラス玉に反射した光が、店内の草花を虹色に照らしている。
「いらっしゃいませ」
驚いてビクッとしてしまった。
入り口の脇に、マキシ丈の黒いレースワンピースに身を包んだ中年女性が微笑んで立っていた。
ロングの髪はゆったりと編み込まれている。
妖しい雰囲気はない。
でも、どこかメルヘンな感じ。
この人が魔女?
「ご来店は初めてですよね? どうぞ中へお入りください」
亜理紗とアイコンタクトしてから、招かれた店内へと足を踏み入れた。
ギイ……
板張りの床がきしんだ。
ひゃあ、緊張してしてしまう。
「当店について説明いたしますね。当店では、まずお客様の心の内側をほんの少しだけ見させていただき、それから最適な商品をオススメする方式になっております」
私も亜理紗も目を見開いた。
「心の内側を?」
「見るってどうやって?」
うっすら怖くなってきた。
「ほんの数秒、瞳の奥を覗き込ませていただくだけで十分す。ですが、裏表がない素直な性格のおふたりの場合には、それすら必要ないですね」
店員さんは、『ふふっ』と品よく笑った。
「おふたりにオススメするなら、こちらです」
編み上げブーツで小気味よく床を叩きながら、花で覆われているアンティーク調の木製テーブルまで歩いていった。
その引き出しは、いっぱいまで開けられている。
私たちも近づいてみると、アクセサリーが陳列されていた。
「こちらのペンダント……」
店員さんは丁寧にペンダントをふたつ取り出した。
直径3センチくらいのガラス玉の中で、花が咲いている。
「ただ1度限りですが、好きな人の気持ちがわかります」
私たちは同時に『えっ!?』と声を上げてしまった。
「それ以降も、アクセサリーとしてお使いいただけますよ」
* ੈ✩‧₊
「ありがとうございました」
店員さんは階段下まで見送ってくれた。
その姿が見えなくなったのをしっかりと確認してから、亜理紗に小声で訊いた。
「……本物だと思う?」
「わかんない。でも2,000円なら、騙されててこれが単なるアクセサリーだとしても構わないなー」
亜理紗はさっそく購入したペンダントをつけ始めた。
それを見て、私も首にかけることにした。
お互いに見せ合った。
手作りだというそれは、『効果は同じ』だと説明を受けたけれど、私のと亜理紗のとで微妙に違っている。
「亜理紗、可愛い」
「ありがとう。風花も似合ってる」
ようやく緊張が解けて、微笑み合った。
「学校の外でも、やっぱりふたり仲よしなんだ?」
嘘っ!?
反射的に声のした方角を向いた。
ううん、嘘じゃない!
蒼空くんだー!
「か、カラオケは? もう終わったの?」
ひゃー、ドキドキする……
「ううん、まだ。遅くまで続きそうだったから、俺だけ抜けさせてもらってきた。今日、父親の誕生日なんだよね」
お父さん、おめでとう!
そして、この日に生まれてきてくれてありがとう!
亜理紗が私の袖を掴んできた。
「わ、わ、私たちは、部活の合宿……が今度あって、そのための買い物に……ね、風花?」
亜理紗の手から振動が伝わってくる。
私以上にガチガチだ。
「そのあとケーキを食べに行ったの……私はガトーショコラが好きで……」
ち、ちょっと!
自分語りし過ぎじゃない?
蒼空くんの様子を窺った。
面倒くさそうでもなく、ニコニコ聞いてくれていてほっとした。
「そうなんだ。カラオケ来てくれたらよかったのにって思ってたんだけど、なら無理だったね」
「次誘ってくれたら、絶対行く! あっ、カラオケよりは、映画とかのほうが好きかな……」
映画?
そこで突拍子もなく映画?
どう考えても、さっきからアガり過ぎ!
「蒼空くんとふ、ふ、ふたりで映画行きたい!」
蒼空くんがびっくりした顔になった。
だけど、私もびっくりだよ!
亜理紗は目を潤ませながら、首を小刻みに縦に振り始めた。
一体どうしたっていうの?
大丈夫なのかな?
私はハラハラするだけで、どうしていいかわからない。
けれど、そんな私を尻目に、蒼空くんははっきりと宣言した。
「なら、計画立てて誘うよ」
……へっ!?
何が起こったの?
理解が追いつかない。
「今日は時間ないから、また学校で話そう」
隣では、亜理紗が蒼空くんと手を振り合っている。
いつの間にか、私ひとりが違う世界にいた。
私もそろっと手を胸の高さまで上げてみた。
すると、蒼空くんは私にも手を振ってくれた。
だけど、それは明らかにクラスメイトの誰にでもくれるもので、亜理紗に対して注いでいた熱量はなかった。
* ੈ✩‧₊
さっきから潤みっぱなしだった亜理紗の目から、とうとう涙がポロポロとこぼれ落ちた。
「ごめん、本当にごめんね」
「いや、泣かなくてもいいから」
「風花だって蒼空くんのこと好きなのに。だけど、あんなふうに想ってくれてたんだって知ったら私、」
「待って、待って! 『あんなふうに』ってどうんなふう?」
亜理紗がきょとんとした。
びっくりして涙も止まったようだ。
よかった……ってことなのかな?
「これ!」
亜理紗がペンダントを持ち上げて私に見せてきた。
「蒼空くんの考えてることが聞こえてきたでしょ?」
今度は私がきょとんとする番だった。
「何も……聞こえなかったよ?」
「そうなの? えっ、なんで?」
「そんなの、私が訊きたいよー!」
* ੈ✩‧₊
亜理紗と別れてから、ひとりで『Witchcraft Shop』へ戻ってみることにした。
あれ?
あの立て看板がなくなってる……
それでも手すりに手をかけて、外階段を上り始めた。
半分くらい上ったあたりで、ドアもぴったりと閉じられているのが視界に入ってきた。
えー、困る!
あの店員さんに確かめたいのに。
私のだけ不良品じゃないのか。
そうでないなら、何か使用条件みたいなのがあるのか。
諦められなくて、上り切ってドアを2回ほどノックした。
じっと耳を澄ませて待ったけれど、何も聞こえてこない。
「すみませーん」
やっぱり反応はない。
もう閉店時間ってこと?
やるせない気持ちになった。
だけど、ほかにどうすることもできなくて、今日のところは帰ることにした。
それにしても、蒼空くんと亜理紗が……
誰も予想しなかったカップルだと思う。
一軍の蒼空くんとそうでない亜理紗。
だけど、さっきのふたり、意外なことにお似合いだった。
手を振り合うふたりに、違和感はこれっぽっちだってなかった。
……あれ?
亜理紗が蒼空くんと付き合うことになったら、ひょっとして亜理紗も自動的に一軍入り?
亜理紗と蒼空くんの周りを、ほかの一軍メンバーが取り囲む様子が目に浮かんだ。
そして私がいるはずの場所で、葵ちゃんが微笑んで……
淋しさがこみ上げてきた。
だけど、同時に恥ずかしくもなった。
最低だ、私。
謝らないといけないのは私のほうだ。
祝福してあげられないなんて!
亜理紗、私のほうこそごめん、本当にごめんね──
* ੈ✩‧₊
夜遅くまでベッドの中で悶々としていた。
そこまでは覚えている。
いつ眠ったんだろう?
スマホのアラームにびっくりして目が覚めて、自分が眠っていたことに気がついた。
睡眠が足りないんじゃないかと思うのに、頭は冴えていた。
学校で亜理紗に会えたら、『おめでとう』って言おう!
唐突にそう思った。
私と亜理紗ならきっと平気だ。
確かにお付き合いの中で、亜理紗が蒼空くんのコミュニティに入っていくことだってあると思う。
だけど亜理紗なら、そこでがんばって蒼空くんに完全に染まろうとはしないだろう。
何たって、亜理紗のいいところは『がんばらなさ』なんだから。
何を焦ってたんだろう?
こんな簡単なこともわからないだなんて……
例のペンダントは、通学リュックにバッグチャームみたいにぶら下げることにした。
魔女の力はなくても可愛いし、何より亜理紗とのお揃いだからいつも持っていたい。
「行ってきまーす」
晴れやかな気分で家を出た。
* ੈ✩‧₊
「おはよ。合宿に必要な物は揃ったか?」
亜理紗に会うことを期待していたのに、いの一番に声をかけてきたのは玲央だった。
「おはよ。うん、あとは荷造りするだ……け……」
玲央のほうに顔を向けると同時に、私は驚いて固まってしまった。
『次は俺も誘うって約束、ちゃんと覚えてんのかな?』
えっ、えっ、何これ?
頭の中に直接玲央の声が聞こえてくる。
「どうした?」
「な、何でもない! 次、次ね……次は誘う」
『覚えてんならいいけど、本当は風花とふたりでデートもしたいんだよな』
「で!?」
私は慌てて手で口を抑えた。
「『で?』って訊かれても……俺のほうが『で?』って訊きたいよ」
玲央が喋っている途中なのに、二重音声になって心の声まで聞こえてくる。
『風花みたいなタイプはグイグイいくと逃げそうで我慢してきたけど、いい加減押していっていいかな? 部活の合宿なんて恋愛イベント起きそうだし、誰かに先を越されでもしたら……』
「写真部! は男子ふたりしかいない! しかも合宿は不参加! 女子しか行かない!!」
「あっ、そうなんだ?」
玲央が不思議そうな顔で私を見てくる。
今の私、間違いなくあのときの亜理紗みたいにおかしな状態になってる!
『だとしても、これ以上友達続けんのもキツいんだよなー。早く俺の彼女にして、イチャイチャしてー』
「わー、わー、わー」
「大丈夫か? 顔が赤いけど、熱があるんじゃ……」
「だ、大丈夫!」
少しも大丈夫ではないけれど、そう言い張るしかない。
『どう見たって大丈夫じゃないだろ! あー、抱き上げて保健室までつれていってやりてーな……あっ、ひょっとして、友達でも体調不良のときならそれもアリか?』
「わー! 少し! 落ち着けば! 本当に大丈夫!」
玲央は腰を落として、顔を覗きこんできた。
「ますます赤くなってきてるけど……」
「それは! 玲央が見てくるからで……」
「へっ!?」
玲央まで顔を赤くした。
『俺期待していいわけ?』
どうしよう!?
玲央の気持ちがわかってしまったっていうことは、つまり私は……
『風花のこと、めちゃめちゃ好きなのがついに通じた!?』
きゃー、きゃー!
自分の気持ちを自覚するのと同時に、玲央の気持ちまで知っちゃうなんて、完全にオーバーフロー!
「放課後! 学校の外で話そ!」
放課後なら、玲央の心の声が聞こえなくなってるはず。
『マジ!? これって……』
「だー! 今はこれ以上無理! いっぱいいっぱい」
「お、おおう、放課後な。わかった」
私は廊下を走って逃げた。
「あー、風花。おはよう」
「いいところに! 亜理紗ー、聞いてよー!!」
救世主みたいに見えた。
亜理紗に話を聞いてもらえれば、放課後までに気持ちも落ち着くはず。
あっ、だけど、その前に大事なこと!
「亜理紗、よかったね。おめでとう!」
END




