俺、生まれ変わったら【スマホ】になってますけど…
……俺は、スマホ。
モバイルショップで正規販売された、4800万画素、メインメモリ8GB、ストレージ256GB、バッテリー容量5,000mAh、画面サイズ約6.1インチの最新スマホである。
昔、俺は人間だった。
名前は忘れたが、のめり込みやすい性格の男だった。
何らかの事故で命を落としたとき、俺は願った。
「生まれ変わったら、スマホになりたい」
そう願ったのには、理由がある。
俺は24時間片時もスマホを手放さない、ゲームアプリ中毒者だったのだ。
顔も、名前も、姿も、何一つ覚えていないのに…ログインボーナスに命をかけていた習慣が抜けきらなかった。
連続ログインボーナスでレアなアイテムをもらい大喜びした事と、ログイン忘れで999日の努力を無駄にした事だけが、いつまでも心に残っていた。
願いが叶ったのだと喜んだ瞬間は、確かにあった。
だが、しかし。
―――ぁんだよ!これぜってー仕組んでんだろ!
俺を購入早々、つばを吹きかけながら激怒したのはクセの強すぎる中年だった。
いつもスマホをいじってはガチャばかりやってノーマルを引いている、運の悪い男だった。
俺は願った。
「一刻も早く、生まれ変わりたい」
そう願ってしまうのは、当然である。
世の中の出来事を一切取り込まずゲームの世界にどっぷり浸かり、世間一般から取り残されて孤立していく虚しさといったら…たまらなかった。
汚らしい指で画面をべたべた触り、反応が鈍いせいでレアが引けなかったと延々恨み言を口走っては画面を憎々しげに睨みつける36歳…地獄でしかない。
恐ろしい願いをしてしまった事と、願いが叶ってしまった事が、いつまでも心をえぐり続けた。
……願いが叶ってしまって、もう…どれくらい、たっただろう?
―――は?
俺を、脂ぎった手で握りしめながら、固まっている…中年。
ずっと楽しんできたゲームが、配信終了するらしい。
俺は願った。
「これを機に、ゲームにのめり込むのはやめて真っ当に生きていって欲しい」
そう願ったのには、理由があった。
欲を満たすために努力する事に関しては、このおっさんの右に出るものはいなかったのだ。
並々ならぬ集中力と情報収集への情熱、真摯にひたむきにこつこつと作業し続ける几帳面さ。
ゲームにドハマりさえしなければ、まじめで規則正しい生活ができていたはずなのに、実にもったいないと、今でも心をえぐり続けている。
……今ならまだ間に合う、社会人として立ち直るチャンスだ。
―――させねえぞ!!!
おっさんは、ゲームを存続させるために心血を注いだ。
サブスクを立ち上げ、SNSで大々的に拡散し、炎上し、テレビに出て悪目立ちした。
ごく一部にいる、おっさんを神扱いして持ち上げる集団の声だけを聞いて…暴走が止まらない。
俺の願いも…むなしく。
おっさんは真のファン代表という肩書きを誇りながら、制作会社に乗り込み…事件を起こした。
重要な証拠品として警察に押収された俺は…データを根こそぎ抜かれたあと、廃棄処分されることになった。
ああ、次に・・・生まれ変わったならば。
おれは・・・
・・・
こちらのお話とわずかにリンクしております(*'ω'*)
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なお、2024/2月の投稿作品はすべて生まれ変わりをテーマにしています。
他にもおかしなモノに生まれ変わってしまった人のお話を書いているので、気が向いたら見てね!!
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