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2巻の表紙、見返せないかしら

久しぶりすぎてすみません

「ジュリア、本当に気は変わらない?」


学園の前でアイリスがそういうけど、あなたそれ15回目よ?


「バカじゃないのかって言ってんのよ!!男装して入学だなんて…!」


「ちょちょちょっと!声が大きい!」


誰かに聞こえたらどうするのよ!

アイリスを連れて木の陰に隠れる。


「だから!私がいなければ悪役令嬢なんて存在しないわけ!

でも推し達の学園生活は見守りたいじゃない!?

それならもう令嬢じゃなければいいのよ!!わかる???」


私の学園生活の目標は

ひとつ、推しの恋を全力で成就させること

ひとつ、推しを一番いいポジションで見守ること

ひとつ、推しを静かに愛でること


そう!そのためには推しの友人になるべく男装することが最適解なん―


「わからないわ。あなたがその『悪役』ってのにならなければいい話じゃない。」


うっ…


「それより本音は見守りたいって方でしょう?」


…そうも言える。


今の私は銀色の髪を紺のかつらで隠し、男子生徒の制服を身に着けている。

どこからどう見ても成長期がまだ来てない男の子ってところね。


「はぁ…協力してあげるけど、そのお守りは外さないでね。約束よ」


そう言って私の胸を指差す。

制服の下にはシルバーに輝く水結晶ペンダント。

5年前のあの時アイリスがお土産でくれたものだ。

漫画の中のジュリアのトレードマークのようなものだったが、まさかアイリスとの思い出の品だったとは。

もしかして悪役令嬢だったけどジュリアはアイリスのことを心の底から嫌っていたわけではないのかも―


「おい、そこで何してる」


後ろからこちらを警戒する低い声がした。

はっ!こんなところで男女が隠れるようにしてたら怪しいに決まってる!

やばいと思って振り返ると一人の男の子が睨むようにこちらを見ていた。


短くそろえた漆黒の髪に焼けた肌、そして…トパーズの瞳。

圧倒的人気から2巻の表紙を飾った15歳のジャック・テイラー


こっちの世界に来て初めて見る制服姿の推しがそこに立っていた。

油断していたところに大量の供給が入ってきて一瞬で石化した私をかばうように、アイリスが前に出て眉毛を下げ微笑む。


「わたくしたち入学生なのですが、この幼馴染が緊張するって言ってなかなか動かなくて困ってたんですの」


さすがヒロイン。

このおしとやかな演技を見れば推しが恋に落ちるのもわかるわ。


「私も入学生だ。よければ私が連れて行こう」


それにしても初めて聞く推しの声が尊すぎて、一対一で話すなんてなったら耳がつぶれますね。

ぜひアニメ化していただきたかった、いやもしかして私の死後あった可能性も…許せないですね。

現場からは以上で―


「よろしいのですか?それならよろしくお願いしますわ。ジュリ…ウス、またあとでね」


って、え?何をよろしくしたの?


「え、ちょっと、アイリス…!」


アイリスはウィンクしながら走り去っていく。

女の子が走っちゃアイリスのとこのおじさまに叱られるわよ…。

現実逃避する私の顔をジャックがのぞき込む。

ひえっ…顔がいい…。


「お前、男ならしっかりしろよ。行くぞ」


声が出せずコクコクとうなずく私に怪訝な顔をしながらも一緒に学園に向かっていく。

あれ?さっきの推しとヒロインの出会いの場面じゃない?

もっとロマンチックにしないとだったんじゃ!?

そんなことを考えているといつの間にか推しが歩き出していた。


気まずい…。


無言で前を歩く推しの背中をチラ見する。

だいたい同じ新入生なのになぜこんなにも醸し出すオーラが強いのかしら。

これがいわゆるメインキャラ補正ってやつね。

さっきから何人かの男子生徒とすれ違うけどモブとは言わないけどどことなくモヤっとした印象の人が多い。

なんて考え事をしていると


「遅い」


なんて一言が飛んでくる。


「す、すみませ…」


あれ?

これだけ足の長さがあれば今までの距離で既に私は小走りにならないとついていけなかったんじゃないかしら?

無愛想な顔に似合わない気遣いに彼の性格が見え隠れする。

テイラー侯爵家に入ってから血のにじむような努力で、平民という出生を隠してきた推し。

元々のお人好しは隠しきれず困ってる人には無条件で手をかしてしまうのよね。


うん、そこも好き。

いつまでこの時間続くのよ…いやむしろ永遠なれ。


会場に着いた所でやっと勇気を振り絞って話しかける。


「ありがとうございま…」


「ジャック、こんなとこにいたのか。ずいぶん探したよ」


穏やかな声に遮られる。


「げっ…」


「…殿下こそどちらにいたんですか」


推しの呆れたような声をしっかり耳に入れながらも、目の前の人を見上げる。

王太子チャールズ・ウィリアムズ…さすが一番手男子、いかにも王子様。

肩までつく金髪にタンザナイトの瞳、同じ制服を着ているとは思えないくらい高貴な雰囲気があふれ出ている。

完璧な外見に対して実は中身は…ちょっと残念だが。

でも最終的にヒロインに選ばれたのはこの王子様なんだよな~。

その時のショックを思い出すと眩暈…


フラッとよろめく私の腕をため息つきながら推しは掴む。

あ、二の腕はダメだ!ほんと勘弁!


「同じ入学生なのですが、緊張して先ほどからこの調子です。殿下が話しかけてこられたのでさらにひどくなったようです」


ちょっ、ちょっと!!王太子にそんな嫌味っぽく言わなくても!

王太子のお豆腐メンタルを知ってるくせに!!


「…そうか。休ませてやりなさい。」


ほら!一瞬固まっちゃったじゃない!

あぁ~、どっか行っちゃう~


「で、殿下!失礼いたしました!わたく…私はジュリウス・トレディンと申します」


私が話すとは思ってなかったのか目を見開いたが、次の瞬間には王子様スマイルで口を開いた。


「…覚えておこう」


あ、あのその覚えておこうは友好的な意味の??

王太子が行ってしまった後、焦りながらジャックを見上げると意外そうにこちらを見ていた。

しかしこちらの視線に気が付いていつもの無愛想な顔に戻った。


今の顔、レアすぎた…

てかどんな顔しててもうちの推しは最高だな!!

もはや限界突破で無の境地に至りそうだわ。

ちょっと待って、よく考えたら今同じ空気吸ってるわけだよね?

ヒェッ…


持ち歩いている鎮静剤をむせながら飲む。


「百面相し過ぎだ。殿下の前だったら顔だけで不敬罪になるぞ」


oh…素晴らしい毒舌…じゃなくて!


「顔は生まれつきですっ!」


呆れたようにまたため息をつく推し。


「そこじゃないだろう…まぁいい。ジャック・テイラー。同じ1年だ」


「あ、わた…僕はジュリウス・トレディンです!」


入学1日目、推しと知り合いになりました。



…あれ?そういえばヒロインは?

エピソードタイトルが決まらない…

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