第40話 ドレス
髪色と眼の色を変えるアクセサリーをつけた僕達は、陛下がいつも利用しているという洋服店にやって来た。
「ここのデザイナーは平民で、私の秘密を知ってるんだ。魔法契約もしているからずっとここだけ利用してる。技術は凄腕だ」
「そうなんですね。頼もしいですね」
カラカラと扉を開けると、1人の女性が招いてくれた。
「いらっしゃいませ。今日も来てくださったのですね。カーテンを閉めさせていただきます」
ここは客がいないようで、僕達の姿が外から見えないようにしてくれた。
「気遣いいつも感謝する」
「大切なお客様ですから。そちらのお方は補佐官のアシュ様でございますか?」
「はい、アシュ・クイックと申します。ここではアクセサリーを外してもいいですか……?」
「大丈夫だ。私も外すよ」
「お目にかかれて光栄でございます。サーラと申します。今日はどんなお召し物を?」
「今日はお願いがあって。陛下が女王になる前に、女王になった事を発表する、パーティー用のドレスが欲しいんです」
「なるほど……それは大事なドレスですね。ふっふっふ……腕が鳴ります」
「ちょっと難しいことをお願いするのですが……」
「それはどういう?」
「コルセットを付けずに着れるドレスがいいんです」
「ほお! なんと珍しい。面白いですね。陛下がそのような物を着れば、他の貴族の方々も真似するでしょう」
「そうだろう? だから、コルセットを着けなくても細く見える物がいい」
「なるほど……平民の間ではコルセットを付けないのが主流です。私にお任せ下さい!」
「頼もしいな」
「閃いたのでデザインを書いてみましょう。お2人は座ってお待ちください」
「お願いします!」
ここのデザイナーは平民だから貴族は利用しないのかな。もし、陛下がここで作ってもらったってことを言えば、依頼が押し寄せるだろう。
サーラにとってもいいことだ。
サーラはものすごい勢いでデザイン画を描き始めた。
「す、すごいですね……」
「そうなんだ。私が女王になれば、ここは人気になるだろう」
「楽しみですね」
「そうだな」
数分で完成し、サーラは額の汗を拭きながら、清々しい顔でこちらにやって来た。
「フゥ……完成しましたよ! こちら、くびれ部分はリボンで締めます。このリボンはドレスにくっついていて、斜めに縛ることでより細見え効果があります!!
そして……今流行りのふんわりとしたスカート部分をスッキリさせるのです。ふんわりさせないのが、美しいのです!!」
サーラは興奮気味で息を切らしている。この仕事が本当に好きなんだろうな。
「流行りとは程遠いものになるな」
「ここはガラッと変えて、皆様をあっと驚かせましょう!!
そしてそして……! スカートは後ろを長くして、引きずる形にはなってしまいますが……ヒラヒラと優雅に見せましょうか。
袖はなしにして、ストールをはだけて羽織っていただいて……」
それから何個もデザインを書いてもらい、その度に細かく説明を受けた。その中から2つほど作ってもらうよう依頼。最初のデザインは特にいいと思ったから、それをお願いした。
できるのが楽しみだな……。出来たら連絡が来て、僕達がここに出向く予定になっている。
なんだかんだで夕方になった。もうご飯を食べる時間が近かったから、僕達は洋服店から王宮へ帰った。
「今日は付き合ってくれてありがとう」
「陛下のためなら」
「ふふ、そなたに会えてよかった」
「僕もです。じゃあまた」
「夕食で会おう」
今日はデザインだけだったから、色んなドレス姿を見ることは出来なかった。
でも、女性の姿をした貴方が隣にいて、コルセットで苦しそうにしていたけど……ありのままの姿で笑っていた。幸せだったなぁ。早く堂々とその姿で、僕の隣に居られるようになればいいなと思う。
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夕食をとる時、サリナがいて、陛下の兄との気まずかった時間が和らぎ、流石だと思った。僕には出来なかったから。悔しいけど、今の僕はこうなんだ。
サリナは何年も陛下の隣にいたし、その時間は埋まらない。何を話せばいいか分からなかった僕とは違う。陛下の兄との関わり方を知っていたのだ。
食事が終わると、サリナに呼ばれた。お葬式の事があったから、話す時間がなかったから嬉しい。
皆が出ていったあと、食堂には僕とサリナと陛下の3人が残っていた。
「アシュ、2人で話があるから後で来てくれる?」
「わかりました」
それを陛下が悲しそうな目で見ていたから、サリナはそれに気付いた。
「あ……んーと、10分後でも20分後でもいいから。暇だし適当に来てくれたらいいからねっ、じゃ!」
言い終わるとそそくさ退散してしまった。陛下と2人きりにさせそうとしてくれたのかもしれない。
「アシュ、こっちへ来てくれないか」
「……? わかりました」
陛下は悲しい目で僕を見ている。どうしたのかな? サリナと2人になることに嫉妬しているのだろうか。
彼女は結婚してるし……旦那さんとラブラブだから、心配するような事は起きないと思うのだけれど。
「どうしたんですか? 悲しそうにして」
「わからないか? はぁ。そなたが私の知らないところで……何をするのか気になって仕方がない。こんな自分が嫌だ」
「サリナ様はきっと、僕に陛下をお願いって話をするだけだと思いますよ」
「わかっている……わかっているのに、不安なんだ」
「じゃあ、今からサリナ様に会いに行くまで陛下の部屋に行ってもいいですか?」
「勿論だよ。来て欲しい」
「じゃあ、行きましょ?」
僕は陛下の手を引くと、嬉しそうに笑ってくれた。よかった。陛下が安心してくれるなら、僕は何だってします。
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章分けがよくわかってないままやっちゃってるのですが、今5章まで書き進めました。
5章で終わると思います( *˙0˙*)




