第74話 何故こんなところに居る?
祝ブクマ500件!
伯爵領を蹂躙し続け、漸く第19階層の攻略を達成した。
「さて、次はいよいよボス戦…と言いたいところだが」
「わたし、もうMPが空っぽよ」
「私もです」
「俺もだ」
「今日はここまでですね。そもそも、のんちゃんのレベリングがまだ終わってませんし、現状の戦力でボス戦に挑むのは無謀です」
現在のんちゃんのレベルは17だ。
今のペースなら、あと2,3日でレベル20に到達出来ると思う。
問題は公式戦の日程だな。ランダムで通知の2日後に対戦を組まれるってのが地味にキツい。
もし明日までに対戦通知が来てしまったら、のんちゃんのランクアップは間に合わないかもしれない。
俺たちのパーティと相性が良いのは男&悪属性だが、逆に相性が悪いのは女&善属性である。
第15階層でも苦戦したし、善属性の女物理アタッカーが相手にいた場合、負けてしまう可能性も十分にある。
のんちゃんのランクアップが間に合うかどうかで、勝敗が決まると言っても過言じゃないかもしれない。
翌日、既に第20階層への道順は判明しているので、どうせなら宝箱探しがてら行ったことがない方向へ歩いてみると、小さな村を発見した。
「まさかこんな所に村があるとは。もしかして、また殲滅コースなのか?」
「まぁダンジョンに入り直せば、ドロップした人以外は復活しますし、気にしなくても良いかと」
あの村人大虐殺がなかったことになるのなら、ある日突然隣人が居なくなってしまう訳なんだけど、これってどういう扱いになるんだろう?夜逃げとか?
「愚かな村人どもよ!子爵様の糧となるがよいわー」
ピー助が悪人ムーブして遊んでるが、いつの間にか善属性が無くなっても知らんぞ?
「子爵様、このような辺鄙な村に何用でしょうか?」
「子爵様は若くて穢れなき乙女をご所望だー。隠すと容赦せんぞー」
「ピア先輩、私そんなこと言ってませんけど?」
「エリカかソフィアの家のTVで時代劇でも見たんじゃないか?どうせ最後はバトルになるんだし、好きにやらせてやれ」
コイツらマジで没交渉だからな。いっそ会話シーンをスキップしたいくらいだ。
「この村には未婚の若い娘は殆どおりません。居てもまだ小さな子供くらいでして、年頃の娘となりますと、先日派遣されて来た修道女しか居りませんが、それでも宜しいでしょうか?」
「くるしゅーない。よきにはからえ!」
「それでは、今から連れて参ります」
え?この村に修道女が居んの?何で?
「アーニャ、何か知ってるか?」
「いえ、王国領に聖職者系統が出現するなんて、一度も聞いたことがないです」
この村特有のイベントなのか?それとも他の村や町にも修道女が居るのだろうか?
「お待たせしました。こちらがN:修道女です。お連れ頂いても構いませんので、どうか村には手を出さないで頂きたく」
まさかの最初からカード状態だった。
「勝手に渡しちまって良いのか?」
このシスターさんも、お偉いさんから命じられて派遣されて来てるんじゃないの?
「このような辺鄙な村に教会を建てる余裕などありません。また、左遷されたとはいえ修道女に農作業をやらせる訳にもいきません。正直扱いに困っていたところでして、子爵様に引き取って頂けると助かります」
カードの絵柄を見ると、かなり可愛い子だった。のんちゃんと並んでも引けを取らないレベルの美少女だ。修道女補正を入れれば勝ってるまである。
左遷されたというのは気になるが、それでもこのレベルの美少女を見逃すなんてあり得ない。
「よし、この子は俺が面倒を見よう。約束通りこの村のことは見逃してやる」
「ありがとうございます」
余所者の小娘1人を差し出すだけで村人大虐殺を回避出来るなら、村にとっては安い物だろう。
何だか本格的に野盗の気分だが、気にしたら負けだ。
予想外の展開により待望の回復役である修道女を入手出来た訳だが、流石にこの場で召喚するのは気まず過ぎるので、少し離れた場所に移動することにした。
「おいで、修道女ちゃん」
「あんの糞村長、ウチのこと売り飛ばしやがったな!?」
おっと、中々癖がありそうなお嬢さんだな?
「初めまして、マスターのアーニャです。この子たちは、右から幸、ピア、のんちゃんです」
「ウチはN:修道女、名前は…覚えてねーや。好きに呼んで」
…なんか、ちょっと俺とキャラ被ってない?
「では、とりあえず『シィちゃん』と呼びますね」
「シィちゃん…まぁ良いけど」
自分で好きに呼べと言った手前、嫌とは言えなかったもよう。
「俺のことは、さっちゃんで良いぞ」
「わたしのことは、ピア先輩と呼びなさい!」
「遂に私にも後輩が…あっ、私のことはのんちゃんと呼んで下さい」
「んーと『姉御』『ピーさん』『のん』っすね。覚えたっす!」
この子はアレだな。暴走族の下っ端キャラだわ。




