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第7話 悪魔に感謝されてもなぁ by神的な存在

「疲れたぁ」


 おっちゃんが出て行ってしばらくすると、徐ろにアーニャはベッドに倒れ込んだ。


「お疲れさん」


 今日はアーニャの人生で一番忙しい一日だったんじゃないかな?


 一攫千金を夢見て少ない小遣いからガチャ代を工面し、見事俺というRサーバントを引き当て、その足でダンジョン探索で何時間も歩き回り、当面の生活拠点をゲットする為に不動産屋で物件カタログと睨めっこ。


 緊張の糸が切れて、ベッドに倒れ込むのも無理はない。


 しかし、時刻はまだ17時過ぎだ。


 いくら疲れているとはいえ寝るには早過ぎる。このまま寝たら夜中に目を覚ますことになるだろう。


 そんな時刻に食糧を求めてコンビニに行くのは、チンピラに絡まれそうなので却下である。


 明るい内に最低でも今日の夕食と明日の朝食分の食糧を買っておかないと、空きっ腹を抱えて過ごすことになってしまうだろう。


 ちなみに今日の昼食は不動産屋へ行く途中にあったコンビニで菓子パンを買い、物件カタログを見ながらアーニャだけが食べた。


 俺は食べてない。サーヴァントは腹減らないんだわ。


 マスターから供給される魔力さえあれば生きて行けるから、サーヴァントにとって食事は嗜好品でしかない。


 最初アーニャは俺の分はどれが良いかと聞いて来たんだが、現状無駄金を使う余裕は一切ないので「俺の分はいらんぞ」と断った。


 たぶん俺と一緒に食べたかったんだろうね。またちょっと頬が膨れていたが、金に余裕がないのは自分もよく分かっているからか、ちゃんと納得してくれた。


「アーニャ、寝る前にメシ買いに行くぞ。いや、先に風呂の方が良いか?」


 家賃が安い代わりに設備が微妙な我が家だが、銭湯、コインランドリー、コンビニが全て徒歩10分圏内にあるという中々の好立地だ。


 なおゲート広場までは30分くらい掛かる。地味に遠いので、車とまでは言わんがせめてチャリが欲しくなる距離だな。


 近いところは家賃が高くて無理だった。世の中そんなもんですわ。


 スーパーもちょっと遠いが、家とゲート広場の中間辺りにあるので、ダンジョン探索帰りに寄ることは十分可能。


 キッチンがないので自炊は物理的に不可能だから食材は買えないが、カップ麺とかペットボトルドリンクとかは、コンビニで買うよりも安くゲット出来ると思われる。近い内に買い溜めしておきたい。


「おふろ〜」


 まだ微妙に眠そうだが、入浴の誘惑には勝てなかったのだろう。ふらふらと起き上がり、旅行用の大型キャリーケースから下着とタオルを取り出してトートバッグに放り込み、準備万端とばかりに玄関に向かった。




「アーニャ、そろそろ俺をカードに戻せ」


「…はーい」


 食事に続いてまたもや少々不満そうだが、俺を召喚したまま銭湯に入店したら、2人分の料金を請求されてしまう。


 アーニャだけで入店して、脱衣所や浴場でコッソリ召喚することも不可能ではないかもしれないが、バレたら確実に出禁(最悪警察に通報)になってしまうだろう。小銭を惜しんでそんなリスクは犯せない。


 サーヴァントは一度カードに戻して再度召喚すれば汚れの類いは綺麗さっぱり消えて無くなる。


 つまり入浴や一張羅であるビキニの洗濯も不要という、ランニングコストがほぼゼロな経済的にマスターに優しい存在なのだ。


 俺をカードに戻したアーニャは胸ポケットに仕舞い、銭湯に入って行った。


 サーヴァントはカード状態だと五感の内、視覚と聴覚だけしか機能しなくなる。


 今は胸ポケットに仕舞われているので、視覚は真っ暗、聞こえて来る音のみで周囲の状況を認識するしかない。


「学生は2Gよ」


「む、先月卒業しました。もう大人です」


「あら御免なさいね。それじゃー大人1人3Gになります」


「はい」


 ピロリンと決済音が聞こえる。


「あら?それってマスターライセンス?先月卒業ってことは、もしかして今日がデビュー初日なのかしら?」


 この銭湯の周辺に住んでいる女性マスターなんてそう多くはないだろうし、更に自宅の風呂ではなくわざわざ銭湯に来る客なんて、一人いるかどうか。実際かなり珍しいのだろう。


「はい。しばらくはこの辺に住むので、度々お世話になります」


「こちらこそ、ご贔屓に。あっ、いらっしゃいませー」


 次の客が来たのだろう。お喋り好きそうなオバさん(顔は見えんけど印象がそんな感じ)から解放されたアーニャは女湯の脱衣所に入って行った。


 シュルシュルと衣擦れの音が聞こえる。これから風呂に入るのだから当然服を脱いでいるのだろう。


 ぐぉ〜!美少女の下着姿!そして何よりも、生まれたままの一糸纏わぬ女の子の姿が見たいんじゃ〜!!


 自分で提案したこととはいえ、俺はこれからさっきの衣擦れの音だけをオカズに小一時間ロッカーに預けられる運命だというのか。


 今日はアーニャに出会った記念日なんだから、3Gくらいは我儘言っても良かったかもしれん。


 早くも後悔しかけている俺だったが、アーニャの次のセリフで地獄から天国に急浮上することになる。


「準備OK!行こう、さっちゃん」


 アーニャはカード状態の俺とタオルを手に浴場に入って行く。


「ふぁっ!?」


 予想外の事態に変な声が出た。


「ん?どうしたの、さっちゃん?」


「ちょ、俺が風呂入ったらマズいって。出禁になっちまうよ」


 さっきちゃんと説明した筈なんだが、寝惚けてて聞き逃したんだろうか?


「カードをお風呂場に持って行っちゃいけないとは禁止事項に書いてなかったから、召喚しなければ大丈夫だよ。さっちゃんをひとりぼっちでロッカーに預けるなんてしたくないもん」


「ええ子やなぁ」


 前はタオルで隠しているので肝心なところは見えないが、これはこれでエロティックだ。とりあえず脳内スクショしとくわ。


 そしてボディソープで体を洗っている姿とか、シャンプーで髪を洗っている姿は【見せられないよ君】が八面六臂の活躍を強いられるレベルの超ご褒美シーンだった。


 アーニャは体を洗うに際し、俺のカードを正面にある鏡の下に立て掛けるようにして置いたので、それはもう色んな所がバッチリ丸見えでございました。


 神様!俺を女サーヴァント転生させてくれてありがとう!!

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