第53話 アンタまだ居たの?
「よう、久し振りだな」
「おっさんと再会するのは☆2の闘技場だと思ったんだがな?」
言外に「お前、まだ☆1に居たのかよ?」と煽ってやる。
「けっ、言われると思ったぜ。どーやら今年の女マスターは鬼門だったようだ」
このおっさん、女マスターに負けたのか?
だが元☆2マスターを返り討ちに出来そうな女マスターなんて居たっけか?
昼過ぎから夕方までは頻繁に観戦しているが、それらしいのは見たことがない。
てことは、そいつは午前に闘技場でバトルしてたってことかね?
新人はなるべくレベリングしてからバトルに臨むのが普通だから、どうしても週末にバトルが集中してしまう。それを嫌がって週末を避けたのか?
「まぁいーや。そんで、何でおっさんはRカードを賭けたバトルをOKしたんだ?」
「なぁに、ちょいと考えがあってな?」
やっぱ何かしら作戦はあるようだ。
「ふーん?あぁ、そーいやおっさんは何連勝中なん?」
「…今は2だ」
「そっか、そのくらいなら直ぐに取り戻せるっしょ。次ガンバ?」
「おいおい、もう勝った気かよ?」
「いやぁ言っちゃ悪いけど、狼獣人はもう飽きるくらい狩ってるし」
なんせアーニャすら「たまにはゴブリンキングでも狩りに行く?」とか提案しちゃうレベルで飽きているのだ。
「ほう?草原をクリアしたのか?」
「♀が欲しくてね。既に100周くらいしてんだけど、全然出ねぇんだわ。♂は要らねえから、おっさんから貰ったら売るけどな」
「良いのか?そんなにベラベラ喋っちまって?あとで泣いても知らねぇぞ?」
「これからHNだけで戦って行かなきゃいけないおっさんへの餞だよ」
以前の会話を引用して皮肉ったセリフなんだが、通じたかな?
「上等だ。吠え面かかせてやるぜ?」
どうやらちゃんと通じたようだ。おっさんがブチギレてるが、正直全くプレッシャーを感じない。チワワがキャンキャン吠えてるようなもんだ。
さっちゃん(仮名)
レベル:21
種族:下級夢魔
レアリティ:R
称号:男嫌い(男性との性的な身体的接触NG。マスターが男性の場合、全ステータス半減)
特性:封じられし魅力(敵の行動時、自身のCHR−敵のCHR%の確率で異性の行動を阻害する)
HP(生命力) :51
MP(魔力):77
STR(筋力):27
VIT(体力):52
TEC(精密性):54
MEN(精神力):78
AGI(俊敏性):53
CHR(魅力):81
LUC(幸運):29
装備
夢魔のビキニ
レアリティ:R
効果:CHR+1、魔法属性ダメージを1pt軽減する。
備考:色は本人の気分次第で変更可能。
小鬼王の棍棒
レアリティ:R
効果:棍棒を使用した際、物理属性ダメージを2pt増加する。
備考:非常に硬い木材で出来ており、そう簡単には壊れない。
スキル
往復ビンタ:消費MP4pt
効果:物理属性単体小ダメージ×2
ドレインタッチ:消費MP1pt
効果:接触対象に毎秒1pt魔法属性ダメージを与え、自分のHPを毎秒1pt回復する。
セクシービーム:消費MP8pt
効果:魔法属性単体中ダメージ
備考:対象が異性の場合ダメージが1.5倍になり、自身のCHR−対象のCHR%の確率で次の行動を阻害する。ビームは自身のセックスアピールポイントならば、どこからでも発射が可能。
新しいスキルは覚えなかったが【往復ビンタ】が微小ダメージから小ダメージにランクアップした。基礎ダメージが4ptから10ptに上がったので2.5倍の与ダメとなる。素殴りでも3pt削れるから最近全く使ってなかったんだが、MENが高くVITが低い魔法系の敵には使い勝手が良くなったので、活躍する機会も出て来そうだ。
次に【ドレイン】とは名ばかりの吸血が【ドレインタッチ】に進化した。血を吸う必要が無くなった上、敵に触れ続けている時間に応じて与ダメと俺のHPの回復量が上がったので、ポーションを使用する量を減らすことが出来る。☆1ポーションですら買取価格は100Gだからな。あんまり使いたくないんだ。
最後に【セクシービーム】だが、小ダメージから中ダメージになったのみ。まぁ元から高性能なので、十分な強化と言えよう。
ピーちゃん(仮名)
レベル:21
種族:妖精
レアリティ:R
称号:鳥嫌い(鳥系統種族への与ダメージ1.2倍、被ダメージ1.2倍)
特性:純真無垢(バトル開始時自動発動:バトルフィールド内の自分を除く善属性のステータスを1.2倍、悪属性を0.8倍する)
HP(生命力) :30
MP(魔力):80
STR(筋力):21
VIT(体力):26
TEC(精密性):77
MEN(精神力):78
AGI(俊敏性):76
CHR(魅力):54
LUC(幸運):53
装備
妖精のレオタード
レアリティ:R
効果:魔法属性ダメージを1pt軽減する。
ミシン針
レアリティ:ERROR
効果:一般的なミシン専用縫針(用法容量を守って正しくお使い下さい)
スキル
マジックアロー:消費MP5pt
効果:魔法属性単体中ダメージ、必中
妖精の加護:消費MP10pt
効果:3ターンの間、自分以外の味方のHPとMPを除く全ステータスを1.2倍にする。
アローレイン:消費MP8pt
効果:指定範囲内に閉じ込めた対象に魔法水属性単体微小ダメージ×10
妖精の粉:消費MP5pt
効果:味方に使用した場合、ステータス異常を回復する。敵に使用した場合、ランダムで状態異常を付与する。
俺は中衛寄りだが、ピー助は完全に後衛特化タイプだな。
HPが30でVITが26って、接近戦タイプに襲われたらワンパンされかねんぞ?
まぁピー助は空中を飛んで逃げるから、早々捕まらんと思うけど。
スキルは【マジックアロー】が、小ダメージから中ダメージに変化した上、『必中』が付いた。例えAGI特化タイプだとしても『必中』&ピー助のTEC由来の魔力操作で、早々逃げ切れはしないだろう。
次に【妖精の加護】だが、1ターンから3ターンに効果時間が持続するようになった。味方を強化する為に毎ターン使用する必要がなくなったので、使い勝手が良くなったと言えるだろう。ただこのスキルが本領を発揮するのは、3人目の仲間が加入した時だな。今は俺しか強化出来ないから、使ってもちょっと勿体ない気がする。
最後に新スキル【妖精の粉】だ。味方に使えば状態異常を回復し、敵に使えばランダムとはいえ状態異常に出来る。状況次第では一発逆転の一手になり得るかもしれない。
えっ?【アローレイン】?これ以上成長したら、マジでバグでしょ?基礎ダメージ合計20ptって中ダメージの2つ上の特大ダメージだよ?レベル10で覚えて良いようなスキルじゃねぇから!全弾当てられるかどうかはTEC次第とはいえ、今でも十分バグってるわ。
以上が約2ヶ月間、ほぼ毎日レベリングに努めた俺たちのステータスだ。
因縁ってほどでもないけど、おっさんには俺たちが☆2に昇格する為の踏み台として、惨めに散って貰うとしよう。
一応何か作戦はあるっぽいけど、自分を鍛えるよりも、確実に勝てる相手を探すことに腐心しているロートルのおっさん如きが、こうしてレベリングを続けて来た今の俺たちに勝てるとは思えんのだよなぁ。




