第49話 引退した元マスター
残念ながらR:狼獣人(♂)はドロップしなかった。
まぁドロップ率1%のサーヴァントカードが、早々落ちる訳がないし、そもそも♂は要らん。俺のハーレムに男が入り込む余地などないわ!
今回ドロップしたのは、魔石と素材アイテムである。
狼獣人の牙
レアリティ:R
効果:なし
備考:加工することで獣人専用装備となる。
「狼獣人が仲間になった時の為に、取って置きますか?」
「加工してくれる職人に伝手なんてねぇし、これはショップに売っちまって、必要になったら完成品を買えば良くね?」
「それもそうですね。では帰りにショップに寄りましょう」
「いやだから、早過ぎるってば!?」
「そうか?」
「散々歩き回って大変だったよ?私は飛んでたけど」
「確かに今日は大変でしたが【マッピング】を覚えたので、明日からはかなり楽になりますよ」
「もう【マッピング】を覚えたの?私があの草原でどれだけ苦労したと…」
「店員の姉ちゃんって元マスターだったのか?」
全く知らんかった。
「言ってなかったっけ?元☆3マスターよ」
「おぉ!結構凄ぇじゃん?」
「全然凄くなんかないわよ。結局☆4には昇格出来なくて、諦めて引退したからね」
「じゃー引退を機にこの店を始めたのか」
「あぁ違う違う。この店は旦那のよ。☆3マスターは引退時に1人だけサーヴァントと契約を継続出来るからね。それ以外のサーヴァントをここで売却しようとしたら、当時副店長だった今の旦那にプロポーズされたのよ」
いきなりリア充の惚気話を聞かされたでござる。
「☆3になるとサーヴァントと契約したまま引退出来るのですか?」
「あれ?知らなかったの?これは別に秘匿事項じゃないから、ネットとかにも普通に書ける情報なんだけど」
「知りませんでした」
「さっきも言ったけど☆3に一度でも昇格出来れば、サーヴァントを1人だけ選んで契約したまま引退出来るわ。引退後も一緒に過ごせるって訳ね」
「これは是が非でも☆3に成らなければなりません!」
アーニャからの熱い視線を感じるが、ここは敢えて気付かないフリをする。
「それって☆4ならもっと増えるのか?」
「そうね。☆4に昇格出来れば、3人のサーヴァントと契約続行出来るって話よ。まぁ、☆4ともなるとテレビ番組の出演オファーが来たり、社会的にもプロスポーツ選手みたいな扱いになるから、早々引退する人はいないけど」
「そうでした。☆3では、さっちゃんだけしか一緒に居られません。ピーちゃんとはお別れになってしまいます。やはり☆4以上は必須ですね!」
「そうねー。私もアーニャのこと気に入ってるし、出来るだけ長く一緒に居たいわねー」
今更ピー助が居なくなった未来ってのが、想像出来ない。ハーレムメンバーではないが、マスコット枠として傍に居続けて貰うとしよう。
「そういえば、店員さんが契約を続行したサーヴァントってどんな子なんですか?」
元☆3マスターが引退後も共に居ることを選んだサーヴァントか。確かに気になるな。
「あぁ、私よ?」
「はい?」
「どーゆーこった?」
「私、HR:ドッペルゲンガーなの。今はマスターに化けてるのよ」
「マジかよ?」
「マスターは旦那様と一緒に仕事で外に出てるわ」
「全く分かりませんでした」
「あの店員さんは、店番を任せる為にアンタを選んだって訳?」
ピー助がちょっと不満そうだ。
「いえいえ、マスターが私を選んで下さったのは、ご自分と旦那様の為ですよ」
「どーゆーことよ?」
「旦那様に化けた私と旦那様の2人掛かりでマスターを責めたり、マスターに化けた私とマスターの2人掛かりで旦那様にご奉仕する為ですわ」
労働力として酷使する為ではなく『夫婦の夜の性活の為』だった。
今の言い方だと、現在も頻繁に3Pに励んでいる可能性が高い。あの姉ちゃん、実はかなりのスキモノのようだな?
「つまり、アンタとマスターは仲良くヤってるってことだな。ところでだいぶ脱線しちまったが、牙の買取を頼めるかい?」
アーニャとピー助はあまり良く分かっていないようだが、俺は全てを理解したので、この話題はもう終わらせることにした。
この手の話題はアーニャにはまだ早い!
なお狼獣人の牙は250Gで売れました。




