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第45話 プチ豪遊

 立ってるだけで終わってしまった公式戦の第2戦であるが、収穫はあったものの同時に失敗でもあった。


 圧勝し過ぎてしまったのだ。


 この町の☆1古参マスターにとって、第10階層のダンジョンボスであるゴブリンキングは、ある意味でトラウマの相手と言っても良い。


 そんな相手が、ボス補正がない上に新人マスターのサーヴァントだったとはいえ、ピクシーの魔法でワンパンされてしまったのだ。


 もはや俺たちに挑んで来るような気概のある古参マスターなど存在しないだろう。


 来るとすれば「俺なら勝てる!」と根拠のない自信で武装した新人(アホ)マスターくらいなもんだ。


 普通の感覚をした新人マスターなら、俺たちとの対戦は極力避けようとする筈だ。


 つまりピー助を餌にした『チョロい新人を釣り上げてRカードを捲き上げて儲けよう大作戦』が破綻してしまったことになる。


 まぁ上手く行けば文字通り儲けものくらいのつもりのふわっとした作戦だったので、ダメになったからといって別に悔しくはないが。


 今日は帰り道でスーパーに寄って、1G引きのシールが貼られた弁当を2個と、2個入で3Gのチョコレートケーキとショートケーキの2セットを購入した。


 普段はもう少し節約しているのだが、今日は【小鬼の巣穴】の初攻略達成とR:ゴブリンキングの売却で大儲け&公式戦2連勝目を記念して、ちょっとだけ豪勢にしてみた。


 アーニャが幕の内弁当とショートケーキ。


 俺がカツ丼とチョコレートケーキ。


 ピー助がショートケーキとチョコレートケーキ。


 なおペットボトルのお茶は俺とアーニャが間接キスでシェアし、ピー助には外したキャップに注いでやった。サイズ感がちょうど良かったんだわ。


「おいしー!私、アーニャのサーヴァントになって良かったわ!」


 ピー助が2種のケーキを一口ずつ交互に食べ、感激の声を挙げた。


「なんだ?アレックスはメシ食わしてくれなかったのか?」


 好きな女の名前を付けるくらいだし、メシくらい食わせてたんだと思ってたんだが、サーヴァントだから食事は不要と判断したのかね?


「んーん、食べさせてはくれたよ?ただし砕いたクッキーの欠片とか、小さく切った果物とかだったけど」


 ピー助はちっこいからな。人間と同じ量は食えないと思われたんだろう。


 実際には、食べようと思えば無限に食べ続けることが出来る。


 その所為でサーヴァントは、ビュッフェ形式のレストランには入店出来なかったり、人間の数倍のサーヴァント専用料金を請求されたりするらしい。


 ピー助は自分の体ほどもあるケーキに直接齧り付き、それはもう幸せそうである。


 レオタードがクリームでベタベタだが、一度カードに戻せば綺麗になるので、気にしなくても良いだろう。


 俺も売れ残っていて1G値引きのシールが貼られていたカツ丼(4Gで購入)を食べるとするか。


 スーパーの中にある厨房で作られた弁当なので、別に高級品ではないが普通に美味い。


 電子レンジくんも、久しぶりに出番が来たので喜んでいることだろう。


 もちろん日課であるアーニャとの「あーん」もしている。


 ところでアーニャさん?さっきから、自分が嫌いな具材ばかりを俺に押し付けてはおりませんか?ちゃんとバランス良く食べないと、俺が揉んでるだけじゃおっぱいは大きくなりませんよ?




「これで2連勝かぁ。おめでとう、アーニャちゃん」


「ありがとうございます」


 プチパーティを終えた俺たちは、姐さんと合流して銭湯で寛いでいた。


「私がぶっ飛ばしてやったゴブリンキングが8,000Gで売れたのよ!凄いでしょ?」


 普通なら大金を持っていることを大っぴらに言うなんて不用心だが、聞いているのは銭湯の女性客だけだし、そもそもマスターを相手に強盗を企てる馬鹿なんてラリった腐れジャンキーくらいしかいないので、それほど気にする必要はない。


「8,000G?アーニャちゃん、ちょー金持ちじゃん!」


「いえ、マスターは稼ぐ金額が多い代わりに出費も多いですから、無駄遣いは出来ません」


「でも今日は特別だったのよ?私1人でこーんなに大きなケーキを2個も食べたんだから!」


 大金を稼いだというアーニャに「金持ち自慢かよ?」的な雰囲気を発していた客もいたのだが、ピー助の庶民感溢れるセリフに毒気を抜かれてしまったようで、今では幼稚園児でも見るかのように微笑ましそうにしている。


「サーヴァントは太らないから、好きなだけ食べられて良いわよねぇ」


「エリカさんは全然太ってないと思いますが?」


「いやいや、油断するとお腹の辺りにお肉が付いちゃうのよ。夏になってから慌てても手遅れになるから、今のうちから気を付けておかないと、今年は水着が着れなくなっちゃうわ」


 姐さんの水着姿か。下着もセクシー系だし、攻めた水着なんだろうな。超見たい。既に毎日姐さんの裸を見ている俺だが、それはそれこれはこれである。


「姐さんは海派?プール派?」


「基本的にプールね。海だとクラゲに刺されたり、波に流されて溺れたら怖いし。お金は掛かるけど、プールの方が更衣室とかシャワーとかトイレとか綺麗だし、警備員が監視してるからしつこいナンパ野郎とかも居ないわ」


 確かにそこそこ高い金払って入館してるレジャー施設なのだから、塩対応な女に固執した結果、警備員に摘み出されたんじゃダメージがデカいだろう。


 つまり、海に好んで行くのは全員ナンパ待ちの女ってことだな(偏見)


「エリカさん。ご迷惑でなければ、今度私たちもプールにご一緒しても良いですか?」


 おっ?ナイスだぞ、アーニャ!俺が提案すると下心が有るんじゃないかと疑われるけど、アーニャならその心配はない。純粋に友達と遊びに行きたいと思っているだけだからな。


「もちろん、良いわよ。その代わり、アーニャちゃんも油断してお腹がプニプニにならないように気を付けるのよ?」


 姐さんがアーニャの脇腹の肉を摘もうとしたが、摘めるほど無駄な贅肉が無かった為「くっ、これが若さか…」と悔しがっていた。


 いや、お前ら2歳しか違わないだろ。

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