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第43話 ゴブリンキング

 ゴブリンプリーストコンビと、その杖で殴られて蹲っているゴブリンキングを、ピー助のアローレインが襲い掛かる。


「ガァ」


 何も出来ずに俺たちに倒されたにも拘らず「助かった」とでも言いたげな雰囲気でキングは消えて行った。


「ギィ!」


「ギィ?」


 一方、プリーストコンビは「あのボンクラ、逃げやがった!」的なことを言っているような気がする。


 攻撃スキルを持たないプリーストにMPを使うのは勿体無いので、残りのHPは棍棒?で殴って削り切った。


 心なしか俺を睨んでいたような気がするが、たぶん気のせいだろう。だってキングを倒したのはピー助だし、俺が恨まれる筋合いはない筈だ。


「あっ!またカード落ちたぁ」


 む…なんか嫌な予感がするぞ?


「やったー!R(レア)カードげっとー!」


 マジかよ?


 サーヴァントカードのドロップ率は1%だぞ?5層の中ボスに続いて、10層のボスまでドロップしたってのか?あり得なくね?


「ひょっとしてコイツ、プリーストコンビから逃げたくてドロップしたんじゃねぇだろうな?」


 ジロリと睨み付けるが、未契約状態なので反応は返って来ない。


「アーニャ、ゴブリンキングはHN(ハイノーマル)じゃなくてR(レア)だけど、使うの?」


 ピー助め、分かってて聞いてんだろ?


「今週の公式戦ノルマが迫っていますし、キングをレベリングする余裕がありません。足手纏いを入れた状態で3VS3のバトルを行うのはリスクが大きいです。非常に残念ですが、今回はショップに売却しましょう」


 アーニャさんは何がなんでもゴブリンは使いたくないようだ。流れるように売却を決定しており、全然残念そうには見えない。


「ショップでコイツを売って10連ガチャを引くか、割高だがカタログから欲しいRを指定購入するって手もあるぞ?」


「グラトニーみたいな物理攻撃無効な肉壁要員が欲しいわね」


 グラトニーってのは、ピー助の元マスターであるアレックスのR:ラージスライムのことだ。


 七つの大罪の一つである暴食(グラトニー)をスライムの真名にしたり、好きな子の名前を妖精に付けたりと中々香ばしい奴だったな。


「流石にあのサイズはお家に入れませんね。1人だけずっとカード状態というのも可哀想なので、今は難しいです」


 物理攻撃無効は捨て難いが、どうせ指定購入するならエロいことが出来る女サーヴァントが良い。


 エルフに獣人、女騎士。いつか俺のハーレムに迎えたいものである。




「ゴブリンキングって、嘘でしょ?あれからまだたったの1週間よ?もう10層をクリアしちゃったの?」


「ワンパン…は言い過ぎだが、3発だったな」


 俺は魅了で足止めしただけだし、実質ピー助のアローレインだけで倒したようなもんだ。


「そう言えば、妖精(ピクシー)が増えてるじゃない?その子どうしたの?うちの店では買ってないわよね?」


 店員から「うちの店を贔屓にするって話はどうなったんや?まさか他の店で()うたんか?おぉーん?」って電波が飛んで来てる気がする。


「ショップで買ったんじゃなくて、公式戦のアンティでゲットしたんだよ」


「はぁ?☆1マスターがRカードを賭けてバトルしたの?」


 今日一驚いてるわ。


「はい。まぁこちらはカードではなく、お金を賭けましたが」


 アーニャも『何でも言うことを聞く』という追加条件は言わない方が良いと判断したようだな。成長したもんである。


「そいつかなりの馬鹿ね?確かにピクシーは物理攻撃には弱いけど、魔法でアタッカーとバッファーを兼任出来る優秀なサーヴァントよ。それをお金と賭けてバトルした挙句、デビュー早々奪われるなんて呆れるわ」


 性少年だからな。性欲には勝てなかったんだよ。ピー助相手じゃ見ることしか出来んし、なんだかんだ溜まってたんじゃね?


「アイツが何を考えてたかなんて誰にも分からねぇんだし、これ以上考えても無駄だろ。俺たちが勝ったっつー結果が全てさ」


 本当は全部分かってるけど、話がややこしくなるのでここらで無理矢理話題を終わらせる。


「んー、下級夢魔(レッサーサキュバス)妖精(ピクシー)のパーティねぇ?ちょっと後衛に偏り過ぎじゃない?ゴブリンキングは売らないで、壁役で運用した方が良いんじゃないかしら?」


 至極真っ当な意見を言われてしまった。


 しかしアーニャさんはゴブリンを使いたくないらしいので、その貴重なご意見は却下である。


「いえ、ゴブリンキングは売却して他のカードの購入資金にしようかと思っています」


「ふーん?店としちゃー売ってくれた方が儲かるから良いんだけど、10連ガチャじゃなくて普通に購入するなら1万Gじゃまず買えないわよ?」


 ガチャは何が出るか分からない分、相場よりも割安になっているのだが、ピンポイントでこのカードが欲しいとなった場合は、当然正規の価格で購入することになる。


「とりあえずカタログを見てから考えます」


「まぁこれ以上言うのはお節介ってやつね。分かったわ。R:ゴブリンキング(♂)の買取価格だけど、今の相場だと8,000Gね。どうする?」


「お願いします」


 ピロリン♪と決済音がして、アーニャのライセンスカードに入金される。


「なぁ?ゴブリンキングの買取価格が8,000Gってかなり高くないか?いくらドロップ率1%っつっても、☆1マスターの人数を考えたら毎日数枚はドロップしてる筈だし、在庫の山になっちまうんじゃねぇか?」


「それはないわね。だって10層のゴブリンキングを倒せる☆1マスターなんて殆ど居ないわよ?」


「そうなのか?」


「だってHP2倍な上、プリースト2匹がオマケでいるのよ?さらにボス補正でレベルは相手に合わせて最大30まで上昇するし、普通に考えて勝てないわよ」


「魔法使えば良くね?実際俺らはそれで勝ったぞ?」


「この町の転移ゲートで行ける☆1ダンジョンは【小鬼の巣穴】か【餓狼草原】だけよ?魔法使えるやつなんてゴブリンメイジしか出現しないし、ゴブリンキングはゴブリン族からの被ダメを軽減する特性があるわ。絶対無理とは言わないけど、わざわざ時間と手間を掛けて育ててまで運用するだけのメリットはないわね」


 ガチャで運良く魔法系のRカードを引き当てるか、ショップで買うかしないと、キングには勝てないってことか。


「世知辛いな。必ずカードが手に入る訳でもないから、ポーション使ってゴリ押しで勝っても99%の確率で大赤字か。そりゃ誰も戦いたがらないわ」


「逆に簡単に倒せちゃうマスターならさっさと☆2に昇格しちゃうから、わざわざ☆1ダンジョンに入ることなんて無くなっちゃうわ。結果として意外と出回ってないって訳よ」


「ふーん。そーいや【餓狼草原】の10層ボスって何が出るんだ?やっぱ狼?」


「いえ、狼獣人よ。男女どちらかは運次第かしらね?」


 狼獣人!いつぞやの公式戦で、チンピラが負け犬から奪ったサーヴァントと同じ種族だな。


 耳と尻尾がモフモフで、それ以外は人間と変わらないケモ度低めな外見だから、俺的には余裕でストライクだ。


 3人目のメンバー候補は決まったな。これはもうボス周回不可避では?

ダンジョンでサーヴァントが全滅した場合、マスターは直帰すれば無事に脱出可能という設定でしたが『持っている魔石を全て放棄する』という条件も追加します。


この仕様により安全マージンを十分に取った探索しか行わない為、レベリングも金策も遅々として進まないというのが、大多数の☆1マスターの現状です。

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