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第4話 いつからサキュバスが後衛だと思っていた?

 サキュバスという種族名を聞けば、余程の捻くれ者以外は「異性を魅了して操る」とか「魔法で攻撃する」と考えるだろう。


 それは実際正しい。当初は俺も魅了スキルとか魔法攻撃スキルを所持していた。


 しかし、度重なるマスターとの身体的接触の完全拒否を繰り返したことでペナルティが積み重なり、今や転生直後の強キャラステータスは見る影も無くなってしまった。


 本邦初公開。貞操を守る為に生贄となった俺のステータスがこちらです。


さっちゃん(仮名)

レベル:1

種族:下級夢魔(レッサーサキュバス)

レアリティ:R(レア)

称号:男嫌い(男性との性的な身体的接触NG。マスターが男性の場合、全ステータス半減)

特性:封じられし魅力(相手の行動時、自身の魅力値−相手の魅力値%の確率で異性の行動を阻害する)

HP(生命力) :11

MP(魔力):17

STR(筋力):7

VIT(体力):12

TEC(精密性):14

MEN(精神力):18

AGI(俊敏性):13

CHR(魅力):21

LUC(幸運):9


装備:夢魔のビキニ(魔法ダメージを1pt軽減する)


スキル

往復ビンタ:物理属性単体微小ダメージ×2(消費MP2)

ドレイン:吸血対象に1ptの物理属性ダメージを与え、自分のHPを1pt回復する。


 なんということでしょう。特性は弱体化。魔法系スキルは軒並み消滅。


 ドレインは血を吸わなきゃいけなくなってて吸血鬼かよ?って感じのスキルになっているし、攻撃スキルは往復ビンタのみ。


 前世を含めて生まれてこの方ビンタなんて一度もやったことないんだがなぁ。


 ちなみに微小ダメージってのは2ダメージに相当する。


 つまり【往復ビンタ】は2ダメージ×2回で4ダメージを相手に与えられるスキルってことだ。


 まぁより正確に言うと、俺と相手のステータスを参照して補正されるので、同格の相手には4程度のダメージを期待出来るということになる。


 仲良く手を繋いでダンジョンに入った俺たちだが、流石にそのまま探索したりはしない。


 ちょっと名残惜しいがアーニャから手を離して両手を空にし、奇襲に備えつつ洞窟を進んで行く。


 一方アーニャは歩きながら地図を描いている。


 マスターが覚えられるスキルに【マッピング】という物が存在するのだが、まだアーニャは覚えていないのでノートに自力で描くしかない。


 最初の分かれ道をとりあえず左に進んで程なく小部屋に差し掛かり、中に入るとゴブリンを発見した。


 それでは初戦闘開始。俺とアーニャ、そしてゴブリンを包み込むようにバトルフィールドが展開される。


ゴブリン(♂)

レベル:1

レアリティ:N

HP:9


 鑑定系スキルを持っていないのでレベルとHPくらいしか分からないが、全くのノーデータよりはナンボかマシだろう。


 俺の持ってる基礎知識によれば、レベル1のゴブリンのHPは6〜9のランダムだった筈。


 お互いレベル1だし俺とゴブリンのステータスに大きな差はないと考えれば、往復ビンタの期待値は4。2発当ててもギリギリ生き残る可能性が高い。


 俺は武器を持っていないので、素手で殴るかドレインでトドメを刺さなければならない。


 前者はただ闇雲に拳を当てれば良い訳ではなく、良い感じにヒットさせなければ相手にダメージを与えられない。


 後者は俺がやりたくない。ゴブリン(しかも♂)の体に噛み付いて血を吸うとか気持ち悪すぎる。


 あと一発喰らったら死ぬって状況ならまだしも、初戦闘でHPに余裕がある現時点で積極的に選びたい選択肢ではない。


「さっちゃん【往復ビンタ】です」


「あいよ!」


 さっちゃんってのは俺の仮名だ。


 指示する度に「サキュバスさん」じゃ長過ぎる。今は俺だけだから良いが、メンバーが増えたら微妙に長くて不便になる。


 相談した結果、真名を考え付くまではサキュバスの頭文字を取って「さっちゃん」と呼ぶことに決まった。


 戦闘に戻るが、AGIはこちらの方が上だったようで先に行動権が回ってきた。


 アーニャの指示に従い真っ直ぐ突っ込んで行って魔力を纏った右手を振りかぶり、ゴブリンの左頬に向かって叩き付ける。


 パシンパシーン!


「グギャー!」


 往復ビンタと言うだけあって腕を振り下ろした瞬間、体が勝手に動いて帰す刀でゴブリンの右頬を打ち据える。


 なるほど。これがスキルの補助か。


 スキルを使うとある程度動作を補助してくれるということは知識としては知っていたが、実際に体験するとちょっとビックリする。


 仮に今の動きを自力で再現しようとしても先程のスピードには遠く及ばないだろう。


 ゴブリンの残りHPバーは半分よりも少し多く残っているので、予想通り与ダメは4pt。残りHPは5ptで間違いない。


 バトルはターン制なので次は相手の行動順だ。


 この世界っでアクションRPGじゃなくて、ドラ○エとかに近いんだよね。


 なので高速で動き続けて「ずっと俺のターン」とかは出来ないのだ。


 AGIが相手よりも2倍の数値なら2連続行動とかも可能だけど、余程の格下でもなければ早々そんな事は起こらない。


「グギャギャー!」


 いきなり大ダメージを受けて頭に来たのか、棍棒を振り上げ、叫びながら突っ込んで来るゴブリン。


 いやいや、初期装備で武器持ってるとかズルくね?


 俺なんて布面積の少ないビキニだけよ?しかも効果は魔法ダメージ軽減だから、ゴブリン相手には何の意味もない。


 奴の初期装備は木製らしき棍棒とボロい腰布だ。


 汚い物を見せられずに済んだのは助かったが、か弱い美少女を相手に棍棒で殴り掛かるなんて恥ずかしくはないのか?


 ゴブ×サキュの薄い本みたいな展開にならない為にも負ける訳にはいかない。


「当たらなければどうということはない」


 ターン制バトルとは言ったが、なにも大人しくボーッと突っ立ったまま相手の攻撃を待っている必要などないので、当然逃げる。


 一定時間逃げ切れば相手の攻撃は失敗判定になって行動権を失い、ノーダメージで再び俺のターンが回って来る。


「もう一度【往復ビンタ】です」


「喰らいやがれぇ!」


 俺を追いかけ回して疲れたのか、肩で息を切らしているゴブリンに再びビンタを喰らわせる。


バチーンッ!!


「ギィー」


 無駄に走って疲れただけで何も出来ずにやられてしまったからか、心なしか悲しそうな声を上げながらゴブリンは消滅していった。

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