第32話 アレックス、アウトー!
バトルが終わったので、さっさとバトルエリアから退場した。
アレックスはその場に放置だ。別に話すことなんて無いし、ぶっ倒れてるからって面倒を見る義理もない。
次の公式戦の邪魔になったら、係員さんが回収してその辺に捨ててくれることだろう。
獲得したピクシーもまだ召喚はしていない。
闘技場エリアは全体的に騒がしいので、落ち着いて自己紹介も出来やしないからな。
MPもまだ余ってるし、時刻もまだ午前だ。
この後、金策とピクシーのレベリングも兼ねてダンジョン探索に行きたい。
二度手間になってしまうが、落ち着いて話が出来る我が家に一度帰ることにした。
「おいで、ピクシーちゃん」
「やっと召喚んでくれた!もー遅いよー!」
召喚されるや否や、ピクシーが部屋の中を飛び回る。カゴから出された鳥かよ。
「闘技場うるせぇじゃん。落ち着かねぇから、一度家に帰って来たんだよ」
「あー、そーゆーことねー。ところでこの部屋狭くない?リビングに行こうよ?」
「そんな物はない」
「?」
「1Rだから、私たちのお家はこの部屋だけだよ?」
俺の言葉が足りな過ぎて理解出来なかったらしいピクシーに、アーニャは我が家の間取りを詳しく説明してあげた。
「???」
どうやら理解出来ないんじゃなくて、現実を受け入れられなかっただけのもよう。
「この部屋だけ…おトイレは?」
美少女はトイレになんて行かないので必要ありません。
「部屋を出て右の突き当たりだよ」
いやこの面子でトイレを使うのってアーニャだけなんだから、コイツに教える意味なくね?
「じゃーお風呂は?」
「毎日さっちゃんと一緒に銭湯に行ってるよ」
「銭湯?それってちょーおっきいお風呂のことだよね?」
何か喰い付いた。
「まぁ普通の風呂の10倍くらいはあるんじゃねぇか?」
詳しいサイズは知らんけど。
「お風呂の10倍…それって洗面器何個分?」
何故に洗面器?東京ドーム○個分的なやつなのか?
あれって言われても分かるようで全く分からんよね。そもそも東京ドームに行ったことないし。漠然と広いんだろうなぁとしか感じないわ。
「ピクシーちゃんは、今まで洗面器でお風呂に入ってたの?」
「うん」
まぁコイツちっこいからな。1/8スケールフィギュアくらいの身長だし。
「一人でか?」
「いや、溺れたらいけないからって、マスターも一緒に…」
アレックス、アウトー!
誰かぁ!タイキックの人呼んで来てくれぇ!!
「その…大変だったな」
「まぁ、終始視線は感じてたかな」
ピクシーの目のハイライトがまたもや消えかけている。
「サーヴァントなんだから、嫌なら別に風呂くらい入らんでも良かったんじゃねぇか?」
「だって一緒にお風呂に行こうって誘って来るから、マスターの命令には逆らえないよ。それに見られるだけで変なことして来る訳じゃなかったし、気にしないことにした。お風呂は自体は気持ち良いから好きだし」
「銭湯は男女別だから安心しろ。少なくともエロい目で見て来る奴はいない筈だ」
ピクシーは色々な意味で小さ過ぎて、サキュバスの俺ですら流石にムラムラはしない。アレックスはどんだけ飢えてたんだろうか?
女性客の好奇な視線には晒されるかもしれんが、それも客たちが見慣れるまでの我慢だ。小さい子供に絡まれないようにだけ祈っとけ。