第23話 くそっ!イチャイチャしやがって!! by後ろの席に座っている女の子サーヴァントを持っていないマスター
「ふんふ〜ん♪」
俺と一緒に食事を食べられるようになったからか、アーニャはご機嫌で鼻歌を歌っている。
昨夜は銭湯にも一緒に入って、背中の流しっことかもやった。残念ながら姐さんとはタイミングが合わなかったが、まぁその内遭遇するだろう。
それに加えて、今日のダンジョン探索で宝箱が見つかったことも、アーニャのご機嫌に拍車を掛けていると思われる。
中に入っていたのはありふれた☆1ポーションだが、初めての『お宝』発見なので、物自体は何でも良かったのだろう。
流石に『ゴブリンの腰布』が入ってたらキレてただろうけど。
ちなみに、これがポーションの詳細な。
☆1ポーション
レアリティ:N
効果:サーヴァントのHPを30pt回復する。
備考:無味無臭。人間が飲用した場合、軽度の体調不良を解消する。外傷に直接掛けた場合、軽度の切傷や打身などを治療することが可能。
「くぅ〜」
アーニャのお腹から可愛らしい音が聞こえて来た。
「…さっちゃん、今の聞こえた?」
「もう15時過ぎだしな。腹が減るのも当然だ」
今日は第5階層のボス部屋直前までマッピングした。MPが尽きてからはひたすら棍棒?で殴り、レベルが上がったら再びスキルを併用して戦う。
そうしてアーニャの体力が続く限りゴブリンの虐殺を続けた結果、帰り道の途中で一歩も歩けなくなってしまった。
昨日の今日だったので、ちょっと気合が入り過ぎていたかもしれない。
アーニャは生身の人間なので、サーヴァントである俺と同じように考えてはいけない。
とりあえず今は俺がオンブしている。先日も一度やったからか、アーニャも周囲の視線に慣れたようだ。
今日も闘技場に行く予定なので、昼飯は屋台で調達するつもりだ。転移ゲート広場内からチクチクと突き刺さる視線を無視し、闘技場へのゲートに向かった。
係員は昨日と同じバイトくんだった。「何でオンブしてんだ?」みたいな視線を感じたが、当然無視。ライセンスをタッチして闘技場へ転移。
「アーニャは何食べたいんだ?」
「たこ焼き!」
「なら俺はフライドポテトにするか。どうせ半分こにするとか言うんだろ?」
「うん!」
たこ焼き:5G
フライドポテト:4G
ジュース:2G
やはりこういうところの飲食物は微妙に高いな。
まぁ毎回ここで昼飯を食う訳じゃないし、たまになら良いだろ。泡銭もあることだし。
俺たちにとっての今日のメインイベントは、例の大鬼と狼獣人(♀)を連れたチンピラと漫画の主人公みたいな雰囲気の少年の、Rカードを賭けたバトルである。
どちらが勝つにせよ、R3枚持ちの☆1マスターが誕生するという一大事だ。同じ☆1マスターたちの注目度は高く、明らかに昨日よりも観客の数が多い。
「公式戦は17時半の予定か」
ビビってバックれることもなく、無事公式戦は成立したようだな。
アーニャのスマホを覗き込むと公式戦の詳細が記載されていた。
マスター:アレックス シンジョウ
アンティ:ラージスライム
R:ラージスライム レベル2
R:ピクシー(♀) レベル2
HN:グレイウルフ(♂) レベル3
VS
マスター:マイケル カトウ
アンティ:オーガ(♂)
R:オーガ(♂) レベル2
R:狼獣人(♀) レベル1
HN:ゴブリンメイジ(♀) レベル2
「アンティはラージスライムか」
スライムってゲームだと序盤の雑魚キャラのイメージなんだけど、漫画やラノベだと主人公だったり、ラスボスかよ?ってレベルの強キャラだったりするんだよなぁ。
「これは…さっちゃん、アレックスって人の方にオールインしよう!」
ちゃんと約束通り俺に相談して来たのは評価するが、この子は昨日の今日で何を言い出してるのかな?
「オールインって、全財産ぶっ込む気か?」
正気ですか?アーニャさん。
「理由を説明するから耳貸して」
なるべく周囲に人が少ない席を探して座ったので小声で話せば聞こえないと思うが、それでも用心して両手で俺の耳を覆い隠し、こしょこしょとアーニャによる戦力分析を教えて貰った。
「マジでか?」
「マジです」
昨日の公式戦の内容と、今日の公式戦が成立するに至った経緯を知っていれば、オールインしたくなる気持ちも分かる。
100%とは言わないが、99%アレックスが勝てると思う。
オッズはアレックス:1.7倍、マイケル:1.9倍だ。
アーニャから聞いた話の割にオッズが開いてないな。
「昨日の公式戦で、罠を張って逆転勝利したのが影響してるのかもね。今日も何か作戦があると判断したんじゃないかな?」
つまりチンピラくんの戦略次第ってことかな?
正直かなり厳しいと思うけど、どうなることやら。
お目当ての公式戦の予定時刻までまだ余裕があるので、たこ焼きとフライドポテトを「あーん」とアーニャと食べさせ合いっこして遊びつつ、時間を潰した。
なおペットボトルの紅茶(微糖)は代わりばんこに飲みました。
間接キス?そんなの俺らが気にする訳ないじゃん。