第2話 TS転生だけならまだ許せた
ダンジョン探索の前に少しだけ俺のことを語るとしよう。
何処にでもいる普通の中学生だった俺は、中3の夏休みに交通事故で死んだ。
事故の原因は運転手の余所見運転でも飲酒運転でもなく、赤信号に気付かなかった俺が車道に出てしまって轢かれただけだ。
たぶん自殺として処理されたんじゃないかな?
事実とは全く異なるのだが、少なくとも『俺の前方を歩いていたミニスカギャルの透けブラに見惚れ、そのまま赤信号に気付かず車道に飛び出してしまった所為で車に轢かれた』と警察や両親に看破されるよりは、受験ノイローゼで自殺したと思われた方がナンボかマシだと思う。
同じクラスには片想いしてた子もいたし、脱童貞どころか告白すら出来ないまま死んだのは無念だが、そもそも告白する勇気自体なかったので、生きていたとしても何も進展しないまま卒業式を迎えていたことだろう。
人気漫画の続きが読めないとか、予約してた新作ゲームがプレイ出来ないのが未練と言えば未練かな?
でも異世界転生出来たことに比べれば、その程度の未練など物の数ではない。
TS転生の所為で、マイサンが未使用のまま行方不明になってしまったのは少々残念だが、その代わりにたわわなおっぱいがある。
一生独り身でいるか百合っ子を探せば良いので、女として生きる新たな人生を前向きに考えていたんだが、まさかのモンスターだった。
正確にはカードから召喚されるサーヴァントなのだが、種族がサキュバスなのでエルフやドワーフとかに比べると、亜人よりも若干モンスター寄りな気がする。
しかもサーヴァントは召喚主であるマスターに服従する存在だ。
戦闘時に指示されるだけならまだしも、マスターはサーヴァントに対して24時間いつでも命令することが出来る。
流石に「自害しろランサー」とかの命令は無効だが「服を脱いでベッドに来い」とかの命令なら普通に有効だ。
そして男のマスターがサキュバスに求めることなんて一つしかない(断言)
気色悪いので俺に触れることを全力で拒否した結果、俺の身体の表面にバリアが張られ、バチンと手を弾かれたマスターは顔真っ赤にしてブチギレた。
どうやっても俺にエロいことが出来ないと悟ったマスターは、この世界を管理している神的な存在にクレームを入れた挙句、カードショップに俺を売り飛ばした。
そんなことを何十回だか何百回だか繰り返した結果、当初のレアリティから何段階も降格処分されたことでステータスが下がり、優秀なスキルまで失うことになってしまった。
だが後悔はしていない。男に抱かれるくらいなら、Nに降格された方がマシだ。
異世界転生した時点で、この世界の基本知識はある程度備わっている。
女性マスターは、男性マスターに比べてかなり少ないが、全く居ない訳ではない。
いずれ俺も出会える筈だ。
先日とうとうレアリティがRに降格処分され、カードショップのショーケースからガチャ行きにされてしまったが、ガチャなら新人の女性マスターに引き当てて貰える可能性もあるので、むしろ望むところだ。
何年掛かろうとも決して諦めんぞ。美少女マスターのサーヴァントになり、いちゃいちゃで百合百合な異世界ライフを送ってやるのだ!