第18話 アーニャ先生の解説コーナー
前回のあらすじ
覚醒したアーニャさんがハッタリでおっさんを撃退した。
「ふぅ。間一髪だったね、さっちゃん」
アーニャにビビったおっさんが離れて行き、姿が見えなくなった辺りで漸く口を開いた。
「ったく、今からでも良いよ?じゃねぇよ!乗って来られたらどーするつもりだったんだよ?」
「十中八九乗って来ないって分かってたからね。あのおじさんは無駄なリスクは負わないタイプだよ。ところでさっちゃん気付いてた?あのおじさんチームで動いてるよ」
「あん?あー、そーいや最後にアーニャにはバトル挑まないように知り合いに言っとくって言ってたな」
「その前。サラッと言ってたけど、他の新人に同じ話をしたら、生温い奴しかいなかった『らしい』って言ってた。これって他のメンバーからの伝聞だよ」
そーいや、そんなこと言ってたような?
「良く気付いたな?」
「さっちゃんがおじさんの話し相手になってくれたからね。私はその間に色々考える時間が取れただけだよ」
「いや、それでもすげぇよ。俺なんか、ロリコンのおっさんがアーニャの気を引く為に喋ってたのかと思ってたわ」
「それは、本当にそうだったら気持ち悪過ぎるよ」
想像してしまったのか、ブルっと身を震わせるアーニャ。
「あれ?じゃー酒の件は?」
あれにはどんな深謀遠慮が隠されていたんだ?
「あれは場を和ませる為のネタだね。まぁ本当に有り得るかもしれないけど」
犬獣人の姉ちゃんを奪って毎日ヤリまくってたって話はたぶん本当だろうな。
「最初に自分たちは狙われてるって怖がらせておいて、その後に将来お金持ちになったらお酒をたかられるぞって笑い話に続けることで将来の対処の仕方に意識を向けさせて、今正に狙われてることに対する危機意識を薄れさせるのが目的だね」
「わざわざ意識させておいて、意識を逸らすのかよ?だったら最初から教えなければ良くね?」
「新人マスターが一番警戒してるのは同期じゃなくて、サーヴァントのレベルが高い古参マスターにバトルを挑まれることだよ?昨日のさっちゃんだって、そうだったでしょ?」
確かにその通りだ。だからダンジョンでレベリングしてるんだし。
「自分たちへの警戒を解かせることはまず無理。ならばその警戒心は他に逸らせば良い。初戦は様子見するって言ってたけど、間違いなく嘘だね。新人は今が一番レベルが低くて倒しやすいのに、更に一週間も獲物に時間を与えるなんてリスクしかないもの。古参への警戒を緩めた獲物がバトルエリアにノコノコ来た瞬間、山のようにバトル申請が送られて来る筈だよ。もしかしたら複数のグループ間で協定とかもあるかもしれないね」
数日前に『アドバイスしてくれた面倒見の良い先輩マスター』が自分を狩ろうとしてるなんて考えもしないだろう。
何なら顔を見掛けたら自分から挨拶にでも行くかもしれない。そいつが自分のことを探していたとも知らないでな。
そして届くバトル申請の山。目の前の男に騙されていたことに気付くと同時に、獲物に選ばれた奴の末路が思い浮かぶ。
数日前に聞いたばかりなのだから忘れている筈がない。そうならない為に、今日は弱そうな同期を探して戦うつもりだったのだから。
もし負けたら話に聞いたような悲惨な未来が自分に訪れるんじゃないかと気になり、とても普段通りの精神状態ではバトルに望めないだろうな。
第1話のアーニャはかなり舞い上がっています。
最悪ゴブリン2枚でのスタートも覚悟してガチャを引いたところ、Rサーヴァントの美少女サキュバスが召喚されたもんだから内心は狂喜乱舞。
浮かれまくって当初の計画が全て吹っ飛びました。
一晩経ってそこそこ冷静になった今はちゃんと頭が回っています。
あの狭い部屋に漫画を50冊以上持って行こうとしたり、巨大ぬいぐるみを持って行こうとしたりとたまにポンコツですが、さっちゃんに自分が好きな物を知って欲しくて軽く暴走しました。今後も似たようなことはあるでしょう。