第15話 闘技場に行こう。
闘技場に行く為に、本日二度目の来訪となる転移ゲート広場へと移動する。
☆1ランクの闘技場へは、マスターライセンスがあれば一日に一往復だけ転移ゲートを無料で利用出来るので、公式戦や偵察、あるいはただの暇潰し目的で闘技場に行くマスターは多いようだ。
「☆1闘技場へお願いします」
「あーはい。これにライセンスをタッチして下さい」
PCに繋がれた端末にライセンスカードをタッチすることで、本日のゲート使用の有無をチェックしているようだ。たぶん二回目だった場合は自動的に金が引き落とされるとみた。
それはそうと、ここのゲートの係員はあまり愛想が宜しくない。たぶんバイトだな。
まぁ基本的に無料で利用する奴しか来ないし、やる気も出ないんだろうね。
ついでに☆1マスターなんてフリーターの自分よりも下の底辺だとか思ってそうだ。
珍しい女マスターであるアーニャを見て「お?」っと反応し、顔を間近で見ると口元をニヤけさせ、視線を落として胸元を見ると一気に興味を失ったようだ。
その代わりといっては何だが、俺の方をチラチラ見て来る。
まぁ水着の女が町中を普通に歩いてたら、男ならたとえ顔や体が好みじゃなくてもとりあえず目で追っちゃうよね。美少女なら尚更だ。
俺はもう慣れた。見るだけなら好きにしろ。今夜のオカズにしても構わん。但し触れようとしたらブッ飛ばす。
法律上サーヴァントはマスターの動産扱いになるので「マスターに無断で触れようとする=窃盗or器物損壊目的」と見做され、サーヴァントが自衛として相手を攻撃しても、余程の重症(一生寝たきりとか)で無ければ無罪放免となる。
ちなみにマスターに危害を加えようとした場合だが、サーヴァントに反撃された結果として死んだとしても、馬鹿な強盗が返り討ちにあっただけだと見做され、やっぱり無罪放免となる。
マスターやサーヴァントに関する注意事項は義務教育校で年に一度は必ず授業を行なっているので「知りませんでした」なんて理屈は通用しない。
むしろ反省の色が無いと見做され、執行猶予を勝ち取れる可能性が絶望的となる。
どちらのケースも警察署で嘘発見器的な魔道具を使った事情聴取を受けることになるので面倒臭いが、そのくらいは馬鹿を駆除する為の必要経費と割り切るしかない。
ちなみに銭湯でエリカの姐さんが「触らないからもっと近くで見せて欲しい」と言ったのは、授業をちゃんと覚えていたからこその対応だ。
この世界では加害者を保護するという概念がなく、現行犯相手なら私刑すら許されている。
犯罪者に対する私刑の代表例がこちら。
万引き犯:素手でフルボッコ(相手が鈍器やナイフなど武器を所持していたら計画性が高いと見做され強盗にランクアップ。殺害も可)
痴漢:死んでなければ手足くらい圧し折ってもOK(再犯防止の為、玉潰すの推奨)
強盗:死刑にするの手間だから殺して良いよ(後日魔道具による取り調べ有り)
え?他人に危害を加えるクズが死んだところでいったい何の問題があるんだ?という社会スタンスである。
終始こんな感じなので、リスクが高過ぎてこの世界の犯罪率は非常に低かったりする。
ちなみに麻薬の類は一応合法。自分の体をボロボロにする分には勝手にしろ。ただし他人に迷惑を掛けたら、死んで償えって感じ。
俺たちが警戒するべき犯罪は、☆1マスターによる強姦くらいかな?
奴らは万年金欠なので、風俗に行く金がなくて性欲を持て余している。適当にスマホ片手に自分で処理すれば良いものを、トチ狂ったアホがサーヴァントを使役して夜中に出歩いている迂闊な女性を襲うことが極稀にあるのだ。
俺もその点は警戒しており、俺のレベルが低いうちはアーニャの深夜の外出は一切禁止である。
たとえ稼ぎが少ない下級マスターだとしても、その隣にいるのはNであろうとも人間を超える力を持つ超常の存在だ。決してただの人間が舐めて良い相手ではないことを忘れてはならない。
さぁバイトくんの運命や如何に?と静観していたら、ほぼ立っているだけのバイトとはいえ最低限の教育はされていたのだろう。
ナンパして来たり、アーニャや俺に触れて来ようとはせず、普通にゲートに案内されてサヨウナラした。
ちっ、命拾いしたな小僧。