第14話 一人暮らしは何をしても許される。
「さっちゃんが抱き枕になるの?」
「おーよ。俺はあったかいぞ?冬は湯たんぽ代わりに一家に一人さっちゃん抱き枕は如何でしょう?ってなもんだ」
「えー、夏は暑そう」
去年の夏の寝苦しい夜を思い出したのだろう。うんざりした様な顔を浮かべるアーニャ(レア顔)
「甘いなアーニャ。夏は裸になってクーラーをガンガンに付けた状態で俺を抱き枕にして寝れば良いのさ」
冬にコタツに入りながらアイスを食べるという背徳的行為の逆バージョンである。
まさに完璧な理論武装。不審な点など欠片も見当たらない。
「部屋で裸になるの?そんなことしたら怒られちゃうよ?」
「今のアーニャは一人暮らし、いや俺との二人暮らしじゃないか?怒る人なんて誰もいないさ」
上京して来た一人暮らしの女子大生なんて大半が裸族だ(個人の見解です)
注意する人がいない環境は人をとことん堕落させる。
そして俺は悪魔なので、特に性方面で人を堕落させるのが本能みたいなものなのだ。
ちなみに俺は『美少女』という概念が実体化した存在なので、首から下は産毛一本存在しないツルツルボディである(美少女は無駄毛なんて生えないしトイレにも行かない。こんなの常識だよな?)
人間であるアーニャは流石に俺ほどではないが、それでも全身を永久脱毛したかのようなレベルで体毛が薄い為、生活用品にカミソリの類いを持って来ていなかったりする。
つまり『無駄毛を見られたら恥ずかしいから裸族生活は無理!』などの障害は一切ないということになる。
でもパンツやブラもそれはそれで好きなので、普段は下着姿で生活し、寝る時だけ裸というのも有りかもしれん。これは要相談だな。
お風呂以外の場所で裸になるというのはアーニャには衝撃的文化だったようで、とりあえず夏までは『裸抱き枕計画』の実施の有無は保留となった。
クックック。即答で拒否しない時点で結果は見えておるわ。
今から俺を抱き枕にして寝ることに慣れさせ、その後は少しずつ下着や裸で生活することに抵抗感を無くして行けば良い。
そこまで持って行ければあと一押しだ。
何かキッカケ一つあれば、アーニャと一線を超えることも不可能じゃないだろう。
アーニャの部屋から色々と私物を回収し終えた俺たちは、敢えて長居をする意味もないので、万が一にもアーニャの両親と鉢合わせになることがないようさっさと家を出ることにした。
大きなバッグには衣類なんかの嵩張る物を中心に入れて俺が持ち、小物類はスクールバッグに詰め込んでアーニャが持っている。
下着を全部持って行くと知ったアーニャは驚いていたけど「あって困るもんじゃないし、買うと結構高いだろ?」と知ったかぶってゴリ押した。
運搬用のバッグにスクールバッグを選んだのは当然コスプレの為だ。
セーラー服、当時身に付けていた下着、スクールバッグ、これら全てが揃ってこそ完璧なコスプレと言える。
欲を言えばローファーも欲しかったが、コスプレをするのは部屋の中でだけだから履く機会がないし、靴箱からアーニャの靴が無くなっていたら、コッソリ帰って来たことが確実にバレてしまう。
今回の帰宅は最低限の物資回収の為であり、次に帰宅する時はマスターとして一定の成果を挙げてからになるだろう。
えっちらおっちら歩いて俺たちの愛の巣(賃貸)に帰宅し、持って来た荷物をバッグから取り出す。
こうして見ると結構たくさんあるな。
ベッドの下が収納箪笥を兼ねているので服や下着を仕舞って行く。
小物類は使用頻度の高い物だけ出しておき、それ以外は必要に応じてスクールバッグから取り出すことになった。
まだ時刻は15時過ぎだ。
テレビがないのが地味にキツい。
たぶんここのオーナーがN○Kに受信料を払いたくないから置いてないんだろう(確信)
アーニャがスマホを持っているので動画サイトを見たりは出来るけど、画面が小さいから長時間2人で見続けるのは難しい。
「さっちゃん、闘技場に行ってみない?」
「んー?確かに多少はレベルも上がったし、ゴブリン相手には無双出来てるけど、まだ他のマスターとバトるのは無謀だぞ?」
「私たちが戦うんじゃなくて観戦の方だよ。他のマスターの戦い方を見るのも勉強になるんじゃないかな?」
なるほど。確かに部屋でゴロゴロしてるよりも遥かに建設的な意見だ。
それにもしも今の俺らでも勝てそうな雑魚マスターがいたら、バトって早々に今週のノルマを達成してしまえば良い。
観戦だけでも他の☆1マスターの戦力調査にはなるし、むしろ行かない理由がない。
たまにアホの子だけど、マスターとしてどうすれば成長出来るのかちゃんと考えているんだな。
前世は童貞、今世は処女だけど、娘の成長を喜ぶ親のような心境になった。
銭湯やらアーニャの実家やらと、いちゃ百合要素が続いたので、この辺りから舞台を闘技場に移し、バトル要素が増える予定です(戦うとは言っていない)