第13話 パンツはおやつに入りますか?
「おやつは300円まで」からの「バナナはおやつに入りますか?」って流れは、日本の子供が初めて学ぶ様式美だと思うんだ。
そして異世界に転生した俺はこう思うんだ「パンツはおやつに入りますか?」からの「パンツはおやつじゃなくてオカズだろ!」ってさ。
いきなり何を言い出してんだ?って思うかもしれないが、女の子の衣装箪笥の下着ゾーンの段を開けてみればきっと分かる筈だ。
色とりどりのパンツとブラが、綺麗に整頓されて箪笥いっぱいに敷き詰められてるんだぜ?
ほんの数日前まで、これらの数々を身に付けてアーニャが学校に通っていたのだと思うと、同級生だった男子どもに対して「お前らが見たくても見れなかったアーニャのパンツレパートリーを俺は全て知ってるんだぜ?」とマウント取りたくなる。
当初アーニャが持ち出していた下着は、上下5セットだけだった。
全部は無理なので、お気に入りだけ持ち出したのだろう。
ちょっとした旅行なら多過ぎるくらいだが、今後数ヶ月から下手したら数年間は実家に帰らず一人暮らしをすることを考えると、どう考えても足りない。
ある程度資金に余裕が出来たら買い足しても良いが、女は男と違ってちょっとサイズが変わると全部買い替えなきゃいけなくなるらしいし、なるべく無駄な出費はしたくないので、今使える物は全部持って行くべきだろう。
アーニャのおっぱいが姐さんレベルまで育つかどうかは神のみぞ知るってやつだし、お尻のサイズはそうそう変わらないだろうから、パンツは新しく買っても無駄にはならないんだけど、それはそれ。
今までアーニャがどんなパンツを履いて学校に通っていたのか知りたい(履いてる姿を生で見たい)ので、全部回収する以外の選択肢などない。
あと、義務教育校の制服(セーラー服)も当然回収した。
アーニャと今以上に親密になった時に絶対必要になるじゃん?
ちなみに義務教育校ってのは、日本の小中高を合わせたような学校で、6歳から15歳までの9年間通い、卒業と同時に成人と見做されることになる。
卒業後は就職8割、進学2割って感じかな?
こっちの大学は、日本の大学みたいに『将来就きたい職業はないし特に学びたいこともないけど、まだ働きたくないからとりあえず進学』って感じで行くのではなく、専門職に就く為の知識や技術を学ぶ為の、大学院と専門学校を足したような学府なのだ。
姐さんはJDなので何か明確な目標があるということになる。まぁいずれ聞く機会もあるだろう。
今のところ俺が回収したのは、パンツとブラとセーラー服のみ。俺っては欲望に正直だなぁ。
一方アーニャは、冬に備えてコートを1着と長袖のシャツや長ズボンなど、嵩張るにも拘らず半年以上先まで使う予定がない為、持って行くのを諦めたらしい衣類を選んでいた。
俺との違いよ…いや、違う。これは適材適所ってやつだ。
下着は基本的に俺しか見ない(男には絶対見せない)けど、アウターは人に見られるものだし、趣味や着回しを考えるのは本人なので、俺が口を出すのは難しい。
つまり俺は悪くない。
他には、あると便利かもしれないけど、わざわざ買ってまではいらないかなぁ?ってレベルの小物をポイポイとバッグに放り込んで行く。
「ちょっと待て!それは置いて行け」
「…ダメ?」
アーニャが本棚に手を伸ばし、長編シリーズっぽい漫画を持って行こうとするのを必死に止める。
ちょこんと首を傾げて上目遣いで聞いて来る姿はあざと可愛いけど、お前そのシリーズ50巻以上あるじゃねぇか!
いや、正直俺も気になるよ?
異世界で出版された漫画とか超読んでみたいし。
試しに1巻の表紙を見てみたが、主人公らしきセーラー服の女の子が描かれている。
察するに学園ラブコメ系かな?
エロいシーンはあるのか?そこ重要よ?
全部がそうとは言わないけど、少女漫画って少年漫画よりもエロいイメージがあるんだよね。
少年漫画はパンチラとかラッキースケベくらいの描写が限界なのに、少女漫画はモザイクが必要ないアングルとはいえ、普通にエッチしてるシーンが多い気がする。
アーニャの恋愛観や性知識を知る手掛かりになるので是非とも読んでみたいんだが、流石に50巻以上はちょっとなぁ。
向こうには本棚も無いし、確実に置き場所に困るだろう。
お試しにちょっとだけ持って行くって手も無くはないんだが、絶対続きが気になってアーニャに先の展開を教えて貰い、余計自分で読みたくなる未来しか見えない。
せめて全10巻くらいのシリーズだったら、持って行くのも吝かではなかったんだが…
今住んでるのはあくまでも仮拠点であり、家具も全て借り物でしかない。ちゃんとしたアパートに引っ越すまでは、生活に不要な嵩張る物は我慢しよう。
だからアーニャさん?
今すぐその手にある巨大猫を離しなさい。
抱き枕なら俺がいるでしょ!