第12話 童貞を殺す部屋
結局朝まで解放して貰えなかった。
「ごめんね、さっちゃん。寝苦しかったでしょ?次からは私のこと蹴っ飛ばして良いから」
「気にすんなって。サーヴァントは見た目以上に頑丈だ。もっとギュッと抱き着いたって問題ねぇよ」
アーニャには顔を赤くしながら謝られたが、迷惑どころか我々の業界ではむしろご褒美です。
励ますフリをしつつ、新たな要望を出す余裕すらある。
昨日決めた予定通り、朝から昼過ぎまではダンジョン探索に励む。内容については特にこれといって語ることはないな。
既にマッピング済みの階層は最短距離を走り抜け、必要最小限のバトルだけを行った。
未踏区域に突入してからはマッピングをしつつゴブリンを撲殺し、気付けばレベル3になっていた。以上。
残念ながら今日も宝箱は見つからなかったので、アーニャさんがフグのモノマネを披露していた。
オーディエンスは俺とゴブリンだが、奴らの知能では高尚過ぎて理解出来なかったらしく、拍手喝采とはならなかった。
なんだかアーニャが滑ったみたいになったので、お仕置きとしてとりあえず撲殺しておきました。
棍棒くんのお陰で素手よりも狩りの効率が良い。ちなみに既に3代目だ。
全力で殴るからしょっちゅう折れるんだよね。所詮は木の枝である。上げて落とすのがサキュバスクォリティ。
「ここが私の家…じゃなくて実家だよ」
別に言い直さんでも良いのだが、ケジメのつもりなのかな?
今の自分の家は、あっちの風呂なし四畳半だと言いたいのだろう。
「ただいまー」
わざわざ両親不在のタイミングを見計らってこっそり帰宅しているのだから、そんな小声じゃなくても良いのだが、それでもちゃんと「ただいま」を言うあたり、育ちの良さが滲み出ている。
アーニャの実家は結構デカい。
50坪くらいの敷地に綺麗に整備された庭と2階建ての一軒家が建っている。
これを見ると、両親の賛同を得られなかったのが残念でならない。
可愛い娘の為なら1万Gくらいポンと出せるだけの経済力は確実にあるわ。
まぁその時召喚されるRカードが俺になるとは限らないので、俺にとっては今の状況で良かったのかもしれない。
「私の部屋はこっちだよ」
先導するように階段を登って行くアーニャと、斜め下からお尻と太ももを鑑賞する俺。
俺はアーニャの部屋を知らないのだから、後ろから着いて行くしかないのだ。何も不自然なことなどない。
アーニャの部屋は『男子中学生が妄想するクラスメイトの女子の部屋』って感じだった。
何でそんなことが分かるのかって?
そんなもん前世でクラスメイトの女子に片想いしてた頃「アイツの部屋ってこんな感じかななぁ?」とか妄想したことがあるからに決まってんだろ。言わせんなよ恥ずかしい。
まず壁にポスターがベタベタ貼られていない。
唯一貼ってあったポスターは、弓を構えた女エルフと杖を突き出したポーズの魔女っ娘が並んでいるセクシーさよりも格好良さを意識した構図の物だった。
ちなみに俺の部屋にはアニメやゲームの美少女キャラのポスターが、壁だけではスペースが足らず天井にまで貼ってあった。
美少女キャラが好きなんじゃなくて作品が好きなんですよアピールの為、男キャラのポスターも2枚だけ貼っておいたのだが、母親に通用していたかは不明。
なお抽プレで当たった巨乳グラビアアイドルの等身大水着ポスターも持っていた。
上記のカモフラージュが完全に無意味になるので貼るのは断念したが、親が不在の日はベッドに広げて寝転がり、美少女とベッドインする妄想でオカズにはしました。
次に目を引くのがぬいぐるみだ。人によっては最初に目に入るという意見もあるだろう。
インテリア用の小さいタイプは棚に飾ってあるが、明らかに用途が異なるであろう大物がベッドに鎮座している。
デフォルメされた猫のぬいぐるみだ。
ベッドに置いてあるということは、あれを抱き枕にして寝ていたのかもしれない。
つまり昨夜の人間抱枕は必然だったということになる。
マスターの癖だというのならしょーがない。サーヴァントとして、マスターの安らかな睡眠の為にも一肌脱ごうじゃないか。
本作は、いちゃ百合8:バトル2くらいの予定です。
問題はノクターンに追放されないかどうかですね。
銭湯でのお医者さんゴッコもとい、介抱シーンとか既にあやしいラインかも?
ワンチャン書籍化されたりしないかなぁ?という霞のような願望も無くはないので、出来れば避けたい。
まぁノクターン行きになったら、それはそれで遠慮することなくエロ表現を卍解しますがねw