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第11話 天使と悪魔

「さっちゃん、おやすみなさい」


「あぁ、おやすみ」


 明日の予定も決まったので、今日はもう寝ることにした。


 小柄な少女とはいえ、普通のシングルベッドに2人が並んで寝るとなるとギッチギチだな。


 最悪ベッドから落ちても怪我をする心配がない俺が縁側でアーニャが壁側に決定。車道側を彼氏が歩く的なやつだ。


 サーヴァントは睡眠を取らなくても特に体調を崩したりはしない。


 食事と同じで嗜好品や娯楽という位置付けだ。


「ご趣味は?」と聞かれたら「惰眠を貪ることです」と答えても許される優しい世界です。


 必須じゃないのだから、本当にすぐに眠る必要はない。アーニャさんのプリティフェイスを愛でるとしよう。


 夜目のスキルは持ってないので、電気が付いていないと普通の人間と同じく何も見えんのだが、アーニャさんは豆球を付けたまま寝る派らしく、薄らとだが天使の寝顔を見ることが出来た。


 美少女の顔はいくら見てても飽きないな。このまま寝ずに朝まで寝顔を見つめていても良いかもしれん。






 …ちゅーしたい。


 美少女の顔を見続けてたら、唐突にちゅーしたくなった。


 無断で唇にはアウトだが、ほっぺにちゅーくらいなら事故ってことで如何だろうか?


 いやいや、ちゅーも捨てがたいが、おっぱいを忘れてはおらんかね?アーニャさんは今ノーブラぞ?


 …こーゆー時って普通己の中の天使と悪魔が葛藤するんじゃないんかい?


 悪魔の誘惑×2じゃねぇか!って今の俺はサキュバスだったな。それならしょーがない。


 そもそも天使枠にはアーニャがいるので、俺の出番はなかったわ。


 俺の中の悪魔さんの助言に従い『折角だから両方実行しよう』とアーニャが完全に眠ったタイミングを見計らって、おっぱいタッチとほっぺにちゅーをしようと目論んだ俺に天罰が下った。


「うーん」


 やはりシングルベッドに2人で寝るのは無茶だったのだろう。


 口ではあんな事を言っておいて、アーニャの体は正直だった。


 もっとスペースを寄越せとばかりに寝返りを打ち、足が俺の方に差し出される。


 ベッドから蹴り落とされる!と思いきや、そのまま降りて来て蟹挟みされた。ついでに腕も乗っけられた。


 人間抱き枕の刑である。


 力は欠片も入っていないので抜け出そうと思えば余裕で可能だが、その結果アーニャを起こしてしまうかもしれない。


 それに、考えようによっては俺は今アーニャに「抱かれている」と言っても過言ではないのではなかろうか?


 これはもう既成事実待ったなし。いちゃ百合ライフに確実に一歩近付いたと言えるだろう。

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