第10話 イチャイチャしやがって! by通りすがりのモブ
「もう大丈夫なのか?」
「まだちょっとフラフラするけど、ゆっくり歩けば大丈夫」
それは大丈夫と言って良いのか微妙なラインだが、ずっと銭湯にいる訳にもいかないし、横になるにしても家の方がリラックス出来るだろう。
フラフラ歩いて車にでも轢かれたら洒落にならんので、俺がオンブして帰ることにした。
予想通りアーニャは「自分で歩ける」と抵抗するので、無理矢理お姫様抱っこして道路を練り歩いてやったら、遂に観念して「せめてオンブにして」と顔を真っ赤にして懇願して来た。
ちなみにアーニャはスカートじゃなくてショートパンツなので、有象無象にはアーニャの純白パンツは見られていない。見て良いのは俺だけだ。
メシを買う為にオンブしたままコンビニに突撃。
店員とか客とかに奇異の目で見られたが、気にしない。
とりあえず2食分のおにぎりとかお茶とかをアーニャのライセンスで購入し、帰路に着く。
「ただいまー」
「おかえりー」
「ただいま!」
同時に帰っているのだから、本来は俺も「ただいま」なのだが、あえて「おかえり」と言ってあげたら、嬉しそうに元気にもう一度繰り返した。無限ループに陥りかねないので、二度は言わない。
アーニャは家ではラフな格好を好むらしい。
服を脱ぐだけじゃなくブラまで外し、パンツ一丁の姿になって荷物をゴソゴソと漁る。
「あった!」
その手に掴まれていたのは、アーニャが着るには余りにも大きい半袖のTシャツだった。
「さっちゃん、似合う?」
ブカブカのTシャツをワンピースのようにして着ているのか。確かに普通に立っている状態ならパンツは見えない。
彼氏の部屋にお泊まりした少女が、彼氏に借りたTシャツを着てるみたいなシチュエーションだ。正直たまらん。
「おぅ、ちょー可愛いぞ」
「えへへ〜」
我が家に椅子などという洒落た物は存在しないので、ベッドを椅子代わりにするしかない。
俺とアーニャは隣合ってベッドに腰掛け、夕飯を食べることにした。
今回は一口だけだが俺も食べた。
アーニャが俺の前におにぎりを差し出し「あーん」と延々言い続けるので、諦めて「一口だけだぞ」と言ってほんのちょっとだけ齧ってやったのだ。
そんなこんなで夕飯を食べながら明日の予定を話し合った結果、午前は再びダンジョンに行ってレベリング、午後は両親が仕事で不在な時間帯にアーニャの実家に行き、追加の着替えや私物を回収することになった。