魔世界の歴史研究に命を掛けた隠居老人の話
ほんとに更新が遅くなってしまい申し訳ありません…!
本日より投稿を再開させていただきます
日本、国立秋吉台魔力観測所
(ホコリ臭い図書館のような倉庫の奥に彼のデスクはある。そこにはせわしなく倉庫内を動き回る初老の男性、あの世界の歴史研究における代表ともいえる寺川博士がいる)
あの世界とこの世界はかつて同じだった。
と、いってもピンとこないでしょう。
それはそうでしょうね。私でも最初わかった時にはいまいちピンときませんでしたよ。
でも心当たりはあるでしょう。
あちらの魔世界で使用されている共通語。
あれは1400年前に使われていた言語です。
確かにそうですが
そしてなにより、獣人族の長老である亀人の老人から実際に証言を取りましたからね。
その時のテープも残っています。
欲しかったら差し上げましょうか?
これは委員会の方にも黙っていたものなのですが、こちらではもう使いみちがないので差し上げます。その代わりにどこから手に入れたものかは委員会の方には
(博士は自分の口の前に手をもってきて人差し指を立てる)
わかりました博士。委員会の方にはごまかして渡します。
助かります
(博士は優しい作り笑いをする)
それで他にはなにを聞きにきたんですか?
手紙には魔世界の歴史について話してくれと書いてありましたが。
その手紙に書いてある通りのことを聞きに来ました。
私にあの世界の詳しい歴史を教えて下さい。
わかりました。
でも、話す前にこの研究は私ひとりで成し遂げたものではありません。
あの世界の研究に関わった者、すべての研究成果です。
このことを伝えてください。
では話していくとしますか。
それでどこの時代から話を聞きたのですか?
世界が分かれる前、世界が一緒だったときから話してください。
そこから話すとなると、だいぶ時間がかかりますね。
このあとの予定は、と
(彼は椅子に掛けてあるジャケットの胸ポケットから手帳を取り出し、今日のこのあとの予定を確認する)
大丈夫ですね。
では話しましょう。
お願いします。
ではまずこの世界が一緒だったときの話なのですが、詳しいことはむこうの世界の遺跡の碑文ぐらいしかなくてね。
こっちの世界に残っている物はほぼないですから、話八分程度に聞いてください。
どうして残されていないんでしょうか?
完全に記録を消し、二度とあの世界に送られたものに興味をいだき、再び世界を繋げないようにするためでしょう。
話をもどして、世界が一緒だったころこの世界は争いが絶えなかったそうです。
争いが起こっていた?
その、あちらの世界では人族と他の種族の争いはあまり起こっていないように見えませんでしたが…
それは、あちらの世界の人族が他の種族に対抗できる力をもっていたからでしょうね。
でもむこうの世界でも大戦なら起こっていたでしょう。
ここからは魔世界の遺跡にあった碑文に書いてあったことなのですが、1500年前から始まった戦争で世界がボロボロになってしまい、人族が多く死に絶滅の寸前だった。
そこで人族は生き残る為にとある選択をした。
それは世界を2つに分け、人族にとって危険な存在を向こうの世界に送り、二度と帰れないようにしようとした。
どうやって世界を分けたのかは知らなかったが、それはある日突然世界が別れてしまい
魔術を使える人間も向こうに送られていまい、また分けられた場所に居た者も取り残された。
そして、送られた人族は一つの場所に集まり固まった。なぜ世界が2つに別れたのかを知るために。そして集まったのは他の種族もあつまり、なにが起きたのかを知ろうとしたらしいです。
ここが碑文でわかっていることです。
…なかなか濃い内容でしたね。
話をするのをやめましょうか?
幸い老人となった私には沢山の時間がありますからね。
いえ、続きをお願いします。
わかりました。では続きを話させていただきます。
最初の百数十年は元の世界に戻る為にお互いに助け合おうとし、協力しようとした。
でも、我慢しきれなくなったのか。世界が分けられる前から憎しみ合っていた悪魔族と龍人族との間で衝突が起きた。最初、周りの種族はこれで終わると思っていた。けれども一向に決着がつかなくしびれを切らした龍人が天使族に助けを求めた。天使族もその要請に答え参戦した。それを知った悪魔族は魔人族に助けを求めた。そうして段々と戦果は拡大していき、やがてほとんどの種族を巻き込む「魔導大戦」が起きたらしいです。
そしてその戦争は約200年間続き、周りの種族に裏切られ悪魔族と魔人族が敗北するという形で戦争が終わったそうです。
その「魔導大戦」の傷跡はあなたもあの世界に行ったことがあるならわかるでしょう。
かなり大きな物です。
例えば、魔術で一つの国が滅ぼされできたボレイク湾とかね。
でも、これぐらいの話なら委員会で働いているあなたなら難なく知ることができるでしょう。
はい、私は知ることができますがそれ以外の人は知ることが簡単にできません。
私はあの世界のことを理解するためには歴史をしる必要があると思い、いまここで聞いています。
それは、よい志ですね
(いままでの作り笑うとは違う、笑みを浮かべる)
読んでいただきありがとうございました
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