02:ヒロイン登場
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もうすぐ昼休みが終わる。推しのアニメキャラについて、ひとしきり話し終えた浜口が自分の席へ戻っていった。
すると、今度は彼と入れ替わる形で、一人の女子生徒が俺のところへやって来た。
「中崎くん。少しいいかしら」
そう言って声をかけてきたのは、学園一の美少女として名高い東野和奏だった。
彼女は学年トップの成績を誇る優等生である。
腰の辺りまで伸びた長い黒髪。色白の肌と大きな瞳。スラリとした脚。
顔もスタイルも抜群の美人が今目の前に立っている。
彼女とは今年初めて同じクラスになった。今まで一度も話したことはなかったので、彼女の人柄については詳しくないのだが、以前からその存在だけは知っていた。恐らく、この学校に彼女のことを知らない人は一人もいないだろう。それくらい彼女は有名なのだった。
東野和奏は全校生徒の注目の的だ。美人で頭も良く、運動神経は抜群。まさに非の打ちどころがない完璧超人である。だから当然、滅茶苦茶モテる。彼女に告白してフラれた男子は数多いと聞く。
そんな天下の東野さんがこの俺に一体何の用だろう。
あまりにも急すぎる展開を受け、俺は少したじろいでしまった。
こんな調子ではいけない。俺はいずれヒロインと出会う男だ。もしかすると、彼女こそが俺にとってのメインヒロインかもしれないのに。話しかけられたくらいで焦ってどうする。
「今日の放課後、教室に残ってくれないかしら。話したいことがあるの」
「話って……?」
「少し長くなるから、今はまだ言えないわ」
東野和奏は表情を変えることなく淡々と告げた。
まさか愛の告白……ってわけでもなさそうだな。
そんな都合のいい展開が現実に起こるはずもない。いくら俺でも、そのくらいは理解している。だから別に変な期待はしていないし、浮かれるつもりもない。だが、あの東野さんが俺に話があると言ってきたのだ。無視するわけにもいかないだろう。
「わかった。ここにいればいいんだよな」
「ええ。では、よろしく」
約束をすると、彼女はすぐに去っていった。言葉を交わした時間はわずが十五秒にも満たないのだった。
クラスの女子と話したのは、二年生になってこれが初めてかもしれない。
やべぇ。俺って普段女子との絡み無さすぎるだろ。
女子だけではない。俺の話し相手は専ら浜口である。アイツとはアニメの話でいつも盛り上がっているが、他の人間とはほとんど会話をすることがないのだ。
俺はまだ新しいクラスに馴染めていない。新学期が始まってもうすぐ一週間が経つ。そろそろ浜口以外の生徒とも関係を築くべきかもしれない。
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