09:妹
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昨日は夜遅くまで小説のネタを考えていた。そのせいで今朝は寝不足だった。
それでもいつも通りの時刻に起きて、学校へ行く支度を始める。
制服に着替える最中、俺は大きなあくびをした。顎が外れそうになるくらい思いきり口を開きながら。
起きたばかりなのでまだ眠い。頭がぼーっとする。もっと寝ていたい。
こんな状態で学校に行くのは怠くて仕方がない。いっそのこと仮病を使って休もうかとすら思ってしまう。
だが、本当にそんなことをするようになれば人間おしまいである。たった一度のズル休みが、永遠に抜け出せない引きこもり生活に繋がりかねないからだ。いくら学校が面倒くさいとはいえ、不登校にはなりたくなかった。ちゃんと高校を卒業しておかないと将来が不安だ。
着替えが済むと、一階へ降りて顔を洗い、それから朝食を取る。
食卓用のテーブルにはフレンチトーストとベーコンエッグが乗った皿が用意されていた。
「おはよう、お兄ちゃん。朝ご飯できてるよ」
二歳年下の妹、早苗がキッチンに立っていた。
妹は毎朝、朝食と昼の弁当を作ってくれている。
両親は共働きで朝から晩まで忙しい。そのため、我が家では俺と妹が家事を分担することになっている。俺は主に掃除やゴミ出しを担当し、料理と洗濯は早苗が担当している。
「いただきます」
俺はフレンチトーストにかぶりつく。
早苗はいつも美味い料理を作ってくれるのだが、なかなか良い腕をしている。俺好みの味付けを把握しているらしく、塩加減や甘さなどを絶妙な加減で調節することができる。
味だけでなくパンやハムエッグの焼き具合も俺好みだった。
「今日も美味いな」
「ホント? よかったぁ」
食事を取ると自然と眠気が吹き飛んだ。これなら学校にも行けそうだ。
美味しくて力が出る料理を作ってくれる早苗には感謝しなければならない。
「ところでお兄ちゃん」
「ん? どうした」
ハムエッグを食べている最中に早苗が話しかけてきた。
「最近、彼女できた?」
「いいや、できてないぞ」
まったく予想していなかったことを尋ねられたので、俺は少し驚いた。
急にどうしてそんな質問をしてきたのか。
妹が俺の恋愛事情に首を突っ込んでくることなど今まで一度もなかったのだが。
「じゃあ、私の勘違いなのかな。お兄ちゃん、いつもと違う匂いがするから。何だか甘くて優しい感じの匂い」
犬かよ。とんでもない嗅覚だな。
「気のせいだろ」
「そんなことないよ。本当に普段と匂いが違うんだもん」
「じゃあ普段の俺はどんな匂いなんだ?」
「彼女がいない人の匂い」
「何を言っているのかさっぱりわからんな」
まぁ彼女がいないというのは当たっているけどな。
時々、早苗はこんな風に奇想天外な発言をすることがある。どうやら常人には理解できない独特な感覚を持ち合わせているようだ。
普通にしていれば出来のいい妹なのだが、特殊な思考回路で周囲を困惑させる部分をどうにかしてほしいものだ。
「お兄ちゃんからラブコメの波動を感じる……」
「いいからお前もさっさと食え」
何が困るのかというと、早苗にはふざけている様子は一切ないということだ。
いつも真剣な顔をしながら変なことを口走るので、ちょっと頭が痛い子なのかと思ってしまう。妹の将来が心配だ。
「彼女ができたら赤飯炊いてあげるね」
「ああ、そうかい。勝手にしてくれ」
相手にするのも馬鹿らしくなってきたので、俺は適当に聞き流すことにした。
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