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夕凪高校オカルト部シリーズ  作者: クリアランス商会
1/1

記憶の中の友人編

 季節は、他の運動部や文化部が一通り落ち着いた時期

 特にすることもなく、とりあえず……と言った感じに山口斎呀はクラスメイトである北川浩二のいるオカルト部にいるのだった。


 山口斎呀は本当は民俗学とか考古学とか研究する部活が良かった。

 しかし、マンモス高校とも呼ばれる夕凪高校でも、そういったものを扱う部活は既に廃部となっており

 紆余曲折を経て、似たようなものを扱うオカルト部に入部した。


 本来の予定とは違ってしまったが、それはそれ、これはこれ、なのか

 部室に積み上げられているオカルト・ミステリー情報雑誌である月間マーを集中して読む程度にはオカルトはオカルトで楽しんでいるのかもしれない。


「よし、今回の活動報告書が終了した。これで3ヶ月はサボっていられるな!」

オカルト書籍が不自然に積み上がった本の上に両面印刷された一枚の紙切れが投げられる。山口斎呀は紙切れをチラ見して雑誌に目を戻す


「タイトルはゲーム48はカラスよけにできる隠された機能が存在する」

「という感じで提出しようと思うけどどうだろうか?」

自信有り気なドヤ顔と共に明らかにツッコミ待ちと言った姿勢である。斎呀もこの会話にも慣れたものなのか、雑誌から少しだけ目を離し


「ゴミ捨て場に配置しておいたら異様にカラスが来なくなったからな。そういう意味では立派な怪異かもしれないな。ところで片手間に作った郷土史のレポートがあるんだが?」

 そう含みを持たせた返答をする。実際、片手間につくった割にはムダに高い完成度を誇る学校周辺の街の郷土史レポートであり、ちょっと変更すれば十分な活動報告書となるだろう。

 しかし、北川浩二はこの提案には乗れなかった。


「この部活はオカルト部なのでNGです。あと48は部費で購入したから、できればこれで何か書きたい」

「なら、このゲームは精神的苦痛効果があると追記しておいてくれ」

「はいはい。………平和なのは良いことだけどね。本物は記事にしにくいからさ」

「………まぁ、ああいった真実というのは闇の中にあってこそな部分もあるからな」

「だなぁ……」


 静かな沈黙が走る、この部活に入るきっかけとなった怪異、入部後に遭遇した怪異等

 この二人と、まだ登場してない一人は既に何度か本物に出会っている。



 その沈黙は避けるべきであった。

 恐怖心がお化けや幽霊を呼ぶように、二人が思い返したあの事件達は空気となり、その空気はその事象に近いものを呼び出す。

 たとえ、その導入がとても明るい人物から出会ったとしてもだ。


「おい!! 学校の近くのコンビニポテト半額だってよ!!」

「だから買ってきておいてやったぜ!!」

 器用に両手に抱えたコンビニの袋を散乱しているオカルトグッズの上に置く。

 彼は二人と同じくオカルト部員ではあるが書籍や物に対してはあまり敬意を払わないタイプだ。勿論それが災いして怪異に巻きこれた事もあるが無事生還できるほどには悪運が強い。

 もちろん散乱させたままにしている二人も悪いのではある。


「唐揚げは?」

「コイツ直接言葉で………1個20円な。」

「残念ながら超能力者じゃないからな。…3つほどもらうぞ」

 お金を受け取り、唐揚げを渡す。ちょっと冷えているようだが部室にある電子レンジで問題ないだろう。

 ちなみに、オカルト部には電子レンジ、冷蔵庫、テレビ、PC、ゲーム機、等あまり部室にふさわしくない物ばかりだが、これらもちょっとした経緯で入手したものばかりだ。勿論この中にも怪異であった物もある。

 時代や使う物品が変わろうとも怪異はうまく身を隠し常に人間は怪異と隣り合わせという事だ。


「まいどー お!そうそう。お前らに渡したい物があるんだ。」

そう言ってさっきまで唐揚げやポテトが入っていた袋から何かを漁っている。


「なんだ、またホラーゲームの名を借りた虚無を見つけたのか?」

「これ以上クソゲー調査はNG」

「ある意味お前がそういうのばっかり持ってくるから、このオカ研がゲーム研究会として見られてる所あるんだぜ?主にクソゲーを探求する方面で」

 散々な言われようであるが彼が時折持ってくる物は本物が混じっており、大体は活動報告書に書くにはピッタリな物ばかりだ。

 しかしこの所プレイしていて苦痛を感じるようなゲームばかりを持ってきたらしい。

 ある意味これらも怪異が関わっているのかもしれないが、三人はそれに気づかなかっただけかもしれない。

 彼らとて必ずその怪異に気づけるとは限らないのだから、


「ちげぇよ!!最近、部活日誌に困っていると聞いたからな。んで、ちょっと前に罰則で野球部の掃除させられた時にあるものを見つけてな」

「なんでもー?人を集めるおまじないだってよ。部員不足の俺達にピッタリという事だ。」

 ようやく、袋からちょっとした紙束を取り出せたようだ。湿気と油でギトギトになっているが、二人はあまり気にしてないようだ。

 きっといつものことなのだろう。


「罰則って何やったんだお前………」

「一般男子高校生がそれをやったら怒られるが、そこにはロマンがあったんだ……」

「反省はしている。ただ後悔はしてない。あと犯罪行為もしていない。」

何をやったかは言わなかったがなんとなく察した二人は紙束を受け取る。


「そりゃ、先生から怒られるわ。……きったないなぁ。油ものとは別けておけとあれほど」

 多少ベトベトで不快な思いをしながらも目的のページを探す。


「しかし、人を集めるまじない。ねぇ………」

「なんだろう。成功しそうな気がするっちゃするけど、なんだろうこれは………」

 懐疑的な言葉だがその瞳は興味津々だ。なにせ久しぶりのオカルト部の活動ができそうな状況下なのだ

見逃さ無い手は無いだろう。


「人を寄せる、というのは例えば招き猫や風水における玄関に正しいものを配置する、みたいなものがメジャーだな」

「後関係ありそうなのは、ムカデ信仰とかだな。」

「でも『おまじない』という括りでだと、そういうのはなんか珍しいな。」


「あるいは『人払い』の呪術を逆転させている、という線もある。今回のはどういう路線なのかは知らんが」

「霊だのなんだのの『あちらの側』にいるモノを寄せるまじないは結構あるんだが、人寄せはよくわからないな………」

二人の熱い考察が入る。どれも可能性の一端を担うものだし考察の中にも


「……考えても仕方がねぇなら実際にやってみようぜ!!」

この悪運の強い男空条茂雄 通称モブオは何も考えていなかった。


「お!乗り気だな。じゃあ俺はこの半額ポテトを買い足して一緒に掃除した奴らに配ってくるから!んじゃ!!」

そう言って廊下を走っていく、騒がしい奴だ。


「オレたちに丸投げかよ…爽健美茶もついでに買っといてくれ」

「多分聞こえてないな。気を取り直してやろう」


目的のページを改めて探し開く、


◇◆◇◆◇◆◇◆


おまじない

まず、指定する幾何学的ユークリッドな絵を描く。次に人形、又は人型の紙を絵の中心に置き次に呪文として『友人よ。深き親しき友人よ。記録と記憶の中に住む友人よ。今、親しき友人の為に姿を表し給え』

と唱える。次の日、人型が消えていたら成功、人知れず人が来るようになったり、君達の知り合いが協力してくれたりするようになる。


◇◆◇◆◇◆◇◆


「だってさ、隣のページはさっきの油でわからなくなってるね。どのページも1ページ1おまじないだから問題ないけど」

「だといいがな。」

「こっちは人形の方を用意しよう。紙でもいいってことは基本的に人をかたどったものならなんでもいいんだな」

コピー紙とハサミを持ち尋ねた。

「そうみたいだな。これには祭りとかでよく見るあれとか神社でみるあれとかが書かれてある。」


 わかった。といい丁寧に紙を切り始めそれを確認した後、積み上がった本と机を横にどけチョークで模様を書き始めた。

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