目覚めは惨めに
どうも著者のでって…ゲフンゲフン、骨鶏烏です。
こいつは処女作なんで色々拙い所が確実に出ると思われますが、温かい目で見てくれると幸いです。
ダメならバックで。指摘、質問はバッチコイです。
オッケーなら是非ともどうぞ。
ガタガタガタ…と窓が風で音を鳴らしていた。
(う、ん…) 「ふあ…」
私は真っ暗な空間で…毛布にくるまったままで目を醒ました。空気が雪が降りそうなくらい冷えているみたいで、毛布から出たくない。
(…でも、仕事もあるし、そうも言ってられないか)
まだ開きかけの眼を拳でこすり、背筋を伸ばし、頬を叩く。そしてまだ温もりの残っている毛布を寝床に投げ捨てた。
窓から差し込む朝の光は、私の眠気を払うには少し弱すぎたみたいだ。
(眠い…)
寝間着からいつもの服に着替えて部屋を出た後、居間のテーブルを見て―――何も置かれてないのに気付いてから扉を開けた。外の光と冷たい風をたくさん浴びて、ようやく頭がスッキリしてきた。
「あら、起きてたのね」
「あ、お母さん。おはよ」
そこに、お母さんが両手に薬草の詰まった籠を両手に提げながら戻ってきた。父さんや弟に比べて早起きな私達は、交代で薬草摘みと朝ご飯づくりをやっている。
ただ、昨日母さんは薬草の方だったから、いつもなら今日は今頃朝ご飯を作っているはずなのに。
「今日は私が薬草を摘む順番だったよね。どうしてお母さんが?」
「それがね、村長から急ぎの用事でお薬を頼まれたの。でも結構作るのが難しい薬なのよ。まだあなたには早いと思って」
…なるほどね。お母さんは村長が、いや村全体が認める程に調薬が上手い。小さい頃に薬を作ってるのを見せてくれた時、色々なものを混ぜてて、きれいな色の薬を作ったのがすごく綺麗で、母さんみたいになりたいって思ったんだっけ。あの光景は今も鮮明に頭に思い浮かべられる。
次の日からお母さんにお願いして調薬と材料の薬草摘みの作業を見せてもらったり、その方法を教えてもらい始めたんだ。(弟はまるで興味を示してくれなかったけど。『父さんみたいな狩人になりたい』って)あれから十年、私もある程度の薬なら作れるようになったけど、それでも母さんには全然及ばない。
つまりは頼まれた薬が私じゃ作れない、または材料が見分けにくい難しい薬ということなんだろう。何時もなら知らない薬は「勉強の為にも」と作業を邪魔にならない程度に見せてくれるんだけど、急ぎだからそれも出来ない。
…ホントだったら、母さんと一緒にその薬を作れたら一番だけど。
「だから悪いんだけど、今日も朝ごはん作ってくれるかしら」
…いや、薬作りの手ほどきをしてもらってるのにそんなワガママは通せない。
「はーい、任せて」
頭の考えを振り払い、笑顔でそう言って家の中に戻ったあと、鍋に水を入れて火を点けた。
そこに昨日干しておいた薬草…今回はエクセとグロッセを千切って入れて、味が出てきたらグルムを加えてじっくり煮込む。これで我が家の朝食、グルムの薬草粥の出来上がり。
量はそんなに多くないけど、やっぱりなにか温かいものを家族で食べるのが一つの楽しみになっているから、こうして粥を作るのはいつも楽しい。
…上からトン、トンと足音がゆっくりと大きく響いてきた。やっと目を覚ましたのか。
「んむ…姉ちゃん、おはよ…」
こっちにまで眠気を誘うような口調と共に、私の弟―――パボが降りてきた。5つ下なのに、狩人の練習として弓と体力作りの特訓を続けているからか、体は私と同じ位…むしろ少し大きい位だ。それでいて腕は締まっているから、その意味では狩人として申し分ないと思うんだけど…。
(朝の弱さだけは致命的だと思うのよ、ホントに)
父親譲りのそれさえなければ立派な狩人になれるのでしょうに…なんて苦言は噛み殺して(言っても通じないけど)、いつもの日課を伝えよう。
「さっさと父さんを叩き起こしてきなさい、もうすぐ朝ごはんよ」
「ん…あれ、今日も姉ちゃんのだったっけ。まぁいいや、起こしてくるよ…ふわ〜ぁ」
その寝ぼけ顔でよく覚えてんな、と再び階段を登るパボを見送った。
ま、パボが来たならもうすぐ父さん引き連れて来るでしょ。いつも朝ご飯のときはしっかり起きているし。
◇◆◇
…ちょっと冷え込んでいたあの日、僅かな違いこそあっても、いつものような日々を送ると思っていた。
――――――
木でできたでかい匙を使って、粥を取り分ける。父さんは多め、パボはめちゃ多めに。濛々と上がる湯気が顔に当たって汗になってくる。
~~~~~
お母さんと私が薬草をとって薬を作り。父さんとパボは狩りに出て獣を採ってきて食材とかに使い。そして家に友達が来るかもなんていう希望を抱いたり。
――――――
よそった粥をテーブルに置いて、匙を置く。弟たちもすぐに来るだろうし、母さんを呼びに行かなきゃ。そう思い、玄関に向かう。
~~~~~
そんな日々が続く、平和な日常。…そんな願いは、あの日。
――――――
突然、強い力が、私を後ろに―――食べ物の詰まった箱に投げ飛ばし、叩きつけた。背中に走る激痛に手で押さえていたら、
~~~~~
メチャクチャにされた。ズタズタにされた。
――――――
バキリ、と恐怖の音が前から聞こえた………血まみれた、鋭い歯に家が喰われる光景と共に。
空いた穴から、その顔が、眼が、私を捉えた。
そうダ
アイツだ
アイツこそが―――
◆◇◆◇◆
「う、ぐぅ………」
うめき声と共に眼を開くと、緑に囲まれた―――恐らく森の中で自分が寝そべっているのだと気づいた。
焼くほどの熱と身体全体にかかっている重苦しさで、体から汗が吹き出てるのが分かる。
…あの夢を、見てしまったからなのか。
(…何故だ。何故、今になってあんな夢を見せられたんだ、私は)
あの時家を、さらに言えば村を襲ったあの化け物は、村のみんなを、そして母さんを喰い殺した。
私とパボは、父の陽動もあって、命からがら村を逃げることができた。…父のその後は知らない。きっと、喰われてしまったんだと思う。
そして森が燃えていると駆けつけていた甲冑の人達と出会い(後で近くの街の兵士だと分かった)、私達は街へ避難出来たんだ。
…あの記憶は、呪いだ。目を閉じる度に来るソイツは、私を苛み、貶めてきた。その時の無力感で、流れる川を見つめ、思いつめては直ぐに目を逸らす…そんな事が何度あったことか。
私は逃げた。頭から追い出そうとした。薬を作る時間も、避難した後に就いた兵士として武術に励む時間も、その一環だった。
ただ一人の子供として、蹂躙されるのだけを見続ける…あの悪夢から逃げようとした。
(今じゃ殆ど見る事はなくなったというのに…クソっ)
こんな絶望を見せたやつに怒りを隠さず悪態をつく。そして、鬱憤を晴らす為、拳で地面に殴りつけて―――
(…?)
おかしい、腕に力が入らない。左腕もちょっと動かしにくい気がするが、それ以上に右腕の感覚が全く伝わらない。
…腕が、なくなってしまったのか?
その懸念は半分正解で半分間違いだった。疑問に思った直後に、右腕から地面を殴った感触は伝わってきた。
…ブニョンと柔らかい、いや人の腕としては柔らかすぎる感触が、だったが。
その感覚に疑問と驚き、次いで恐怖を抱いた私は…すぐにその原因を目で見る他無かった。
木々から洩れた日光が地面を照らし―――
青緑に震える、指もない透明な《右腕》を、私の目はしっかりと捉えていた。
如何でしたか?
これ、出来れば週1間隔で出したいですが、リアルな事とかやる気の問題もあってそうは行かないことが多々あると思います。…出来るだけ頑張りますが。
それでも見たい方は是非お待ちください。
私の妄想を成るだけ形にしていこうと思います。