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第12話 花魁・朝霧ママの人生相談「初恋の人が忘れられない」

 皆様、いかがお過ごしでありんすか? あちきは朝霧あさぎり花魁おいらんの生まれ変わりでありんす。今宵は、いつも一緒のあげまん巫女ちゃんが、事情があってお休みでありんす。巫女ちゃんの代わりに、このお方がおいでくださいんした。


 こんばんは、仲間田由紀恵です。今日は、巫女ちゃんの代わりにやってまいりました。よろしくお願いします。


 ゆうぎ……、いや、仲間田さん、お久しぶりでありんすねえ。


 朝霧姉さん、ここでは夕霧と呼んでくださいましな。私も、花魁の生まれ変わり、夕霧でありんすから。


 そうかえ? 確かに、仲間田さんと言うよりも、やっぱり夕霧の方が、あちきにはしっくりくるでありんすよ。


 私も、朝霧姉さんと呼ばせてくださいましな。前に一度、ここに来させていただいた時には、ほんの少ししかいられませんでしたから、また来たいと思っておりました。袈裟代から連絡がありまして、自分の代わりに出てほしいと頼まれて、喜んで引き受けたのでございます。


 そうかえ、そうかえ……。おんしが来てくれて、感謝いたしんす。いつも袈裟代のハイテンションに、圧倒されっぱなしでありんすが、今日はおんしと二人で、ゆったりと番組を進められそうでありんすよ。


 私も、いつもお二人の放送を聴いています。朝霧姉さんと袈裟代のコンビは漫才の掛け合いみたいで、聴いてていつも楽しいですよ。私には、袈裟代みたいな感じは出せないので、袈裟代じゃなくてがっかりしているファンの皆さんに、申し訳ないなあと思います。


 そんな事はないでありんすよ。夕霧には夕霧の良さがありんすから。さあ、お葉書を紹介いたしんしょう。


 朝霧ママ、巫女ちゃん、こんばんは。いつも巫女ちゃんには、元気を頂いています。


 そうでしょうねえ……。袈裟代は、聴く人に元気を与えますものね……。今日は袈裟代じゃなくて、申し訳ないです……。私なんかが来ても、誰も楽しくないですよねえ……。


 夕霧、そんな事はないでありんすよ。袈裟代は袈裟代、夕霧は夕霧、それぞれの魅力があるのでありんすから。では、続きを。実は私、初恋の人の事が忘れられません。それぞれ別の人と結婚をして、子どももいるのですが、この前偶然再会しました。


 彼は幼馴染みで、私より二歳年上なのですが、私の中学時代のテニス部の一年上の先輩と結婚しました。その頃から美男美女のカップルで、この先輩なら許せるかなと思ったのですが、この前子どもを連れて三人で買い物をしていたところに、ばったりと出会ったのです。


 あら、初恋の人とばったり? それって偶然じゃないのかも。もしかして運命? そうよ、運命なんじゃない?


 ……まあ、そうかも知れないでありんすねえ。続きを……。懐かしくて立ち話をしていたら、後ろから来た人にぶつけられて私が転んでしまった時、彼が右手を差し出して起こしてくれて、ちゃんづけで呼びながら「大丈夫?」って言ってくれたんです。彼の大きくてがっしりとした手の感触が、今でも残っていて……。


 まあ、優しくて紳士な人だわ。ニコッて笑ったら、きっと白い歯が零れて……。体を鍛えていて、胸板なんかもきっと、すごく厚いんじゃないかしら?


 ……うん、たぶんそうかも……。私は、父の言う通りの結婚をしました。夫は優しくて良い人なんですが、心の隅に、初恋の彼の事がずっと残っていたんです。忘れたくても忘れられない人で、この前、手を握った時に、秘めていた感情がまた燃え上がってしまって……。


 忘れたくても忘れられない……良いわ、そのフレーズ。私もわかる、その気持ち……。なかなか忘れられるもんじゃないわよね。逆に、無理に忘れなくても良いんじゃない?


 ……う、ううん……。先輩なら許せると思ったけど、心の奥底では私が彼の奥さんになりたかった。彼の子どもを産みたかった。彼の太い腕に抱かれて眠りたかった。そんな思いが消えません。どうしたら忘れられるでしょうか?


 (ため息混じりに)ああっ、良いわっ、その感情……。初恋の人を今でも思い続ける、その気持ち……。うん、うん……良いと思う……。


 夕霧は、かなりこの人に感情移入しているようでありんすねえ。


 だって、私もわかりますもん、この人の気持ち……。忘れたくても忘れられない、初恋の人……。たとえその人が振り向いてくれなくても、思い続けたいその気持ち……。すごくわかる……。


 (潤んだ瞳で、朝霧の顔をじっと見つめる夕霧。哀切な想いで見つめる夕霧を見て、昔の事を思い出しながら)うん、うん……夕霧の気持ち、あちきもよくわかっているでありんす……。


 (涙を拭いながら、涙声で)でもね、朝霧姉さん! 心配しないで、私は大丈夫! 昔の思い出は大事に残しておくけど、今の家庭を壊そうとは思っていませんから……。はい、私は大丈夫ですから……。きっとこの人も、私と同じで、家庭を壊そうとは考えていないと思います。初恋の人を忘れなくても良いから、今の旦那さんと、新しい素敵な思い出をいっぱい作ってほしいですね……。


 (思わずもらい泣きをしながら)うっ、ううっ……。そうかえ、そうかえ……。おんしのその思いが、この人に届くと良いでありんすねえ……。


 ……さあ、あちきたちも、新しい思い出を作っていくといたしんしょう。それでは、今宵はこの辺で、おいとまいたしんす。忘れらない恋を抱える全国のリスナーさんたちが、幸せになりますように、お祈りいたしんす。ごきげんよう。


それではまた、お会いしましょう。仲間田由紀恵でした。

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