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レジェンドメイカーズ  作者: 蒼井村正
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8:「歓迎会 それぞれの事情」

ルシールの歓迎会を開く、「レジェンドメイカーズ」のメンバーたち。

 彼らの口から明かされる、それぞれの事情とは……。

 キャラ紹介回です。

8:「歓迎会 それぞれの事情」

「ルシール・ケイオスのチーム加入と、成長コア発撃を祝して、乾杯!」

 チームリーダーのマコトが音頭を取って、わたしの歓迎会兼、成長制御コアの初撃破を祝う打ち上げパーティーが始まった。

「宴会って、楽しいですよね? 私、このチームに拾ってもらってから、毎日が楽しいです」

 わたしの隣にチョコンと座っている魔道師少女、トモコが、ポツリと漏らす。

「拾ってもらった?」

「ええ。私……前にいたチーム、クビになっちゃったところを、マコトさんに拾ってもらったから……」

 どこか寂しさを感じさせる、保護欲をそそる微笑みを浮かべて、トモコは言う。

「えっ!? どうして? あんなに強い魔法発動できるのに……」

「その、強い魔法のせいなんです。魔力放出の加減が出来なくって、チームの人たちまで巻き込みそうになっちゃって、そういうのが何度かあったから、危ないから、もう魔法は使うなって言われちゃって……」

「トモコぉ~! 魔力だけなら、青でもおかしくないぐらい高いんだから、そんなに凹むなよ! 今日は祝いの席だぜ、しけた顔してないで、盛り上がろうぜぇ!」

「しけた顔なんてしてないですッ! もぉ、ユウジさん酒癖悪すぎですよ! っていうか、酔うの早すぎです!」

 もうすでに酔いが回り始めている赤髪の青年、ユウジの声に、速攻で反撃するトモコであったが、その表情は、少し晴れやかになっている。

「うん。いいチームだ……」

 このチームに入って良かった、と、あらためて実感するわたしである。

「アタシはねぇ、勝手気ままにやらせてくれるチーム探してたら、チームメンバー探してるマコトと会ってね」

 弓使いのミサキが、ほろ酔い加減の様子で自分語りを始めた。

 軽く潤んで細められた目と、赤みを増した頬、テーブルに立てられた肘から手首にかけての引きしまったラインの取り合わせが、妙に色っぽい。

「……まだメンバー一人も居ないって言うから、じゃあ、今入ったら副リーダーはアタシだね? ってことで、入っちゃった♪」

 軽い口調で言ったミサキは、発泡ワインのグラスを傾け、話を続ける。

「副リーダなら、気苦労はリーダーほどじゃないし、チームを裏から牛耳れるかな、って。フフフッ……」

 チームのムードメイカーであるポニーテールの美女は、ちょっと悪そうな含み笑いを漏らす。

「オレもミサキと同じ感じだな~。誰かにあれこれ指図されたくなくって、ソロでやるつもりだったんだけど、マコトに声かけられてな」

 既に酔いが回って、目が据わり始めているユウジも話に乗ってきた。

「チーム結成したばかりでフォワードがいないから、頼むって土下座されて、仕方なく入ってやったんだ」

「土下座はしてないぞ……!」

 即座にマコトがツッコミを入れる。

「ん~、そうだったか? 昔のことなんで、忘れちまったよ」

「昔って、ほんの一ヶ月ほど前なんだけどな……」

 チームリーダーを務める青年、マコトは、酔っ払った軽装戦士のボケっぷりに苦笑する。

 フード付きのローブを脱ぎ、普段着に着替えた彼は、白みがかった銀髪と、端正に整った顔立ちが目を引く好青年だ。

「む、ゴウタ、飲みが足りねーぞ、もっと飲め飲めぇ~」

 ゴブリンと闘っていた時の、切れのいい動きとは打って変わったおぼつかない足取りで、チームメイトのゴウタの隣にドカンッ! と、崩れ落ちるように座り込んだユウジは、マッチョ体系のゴウタに酒を勧める。

「……で、ゴウタはね、元、ダウザーチームにいたんだよ」

 ユウジの絡み酒に、苦笑しつつ付き合っている重装戦士にかわって、ミサキが解説してくれた。

「ダウザー?」

「ええ。鉱脈や水脈の探索とか、埋蔵されたお宝の採掘とかを専門でやる探索チームなんです」

 絡み酒から解放される千載一遇のチャンス! と、ばかりに、ゴウタが会話に加わってきた。

「敵性生物のゴブリンとはいえ、生き物殺すのが嫌で、ダウザーのチームに入ったんだけど、ダウジング関係のスキルが全然伸びなくて、チームに居づらくなっちゃって」

 大柄でスキンヘッドの青年は、自嘲気味な微笑みを浮かべる。

「それを、マコトがスカウトしたんだよね? でも、見つけたのはアタシなんだよ! 身体がでかくて強そうな奴がいる! って、ね?」

 ブルーモードに入りそうなゴウタの様子を見たミサキが、即座に助け船を出した。

「そうでしたね。で、マコトさんに言われて、試しに、戦士系スキル修得してみたら、なんか一杯憶えられて、それで、ダウザー時代に貯めてた資金で、装備一式買いそろえて重装戦士にクラスチェンジしたんです」

「ゴウタはなぁ~、この管区内にいる緑の重装戦士じゃ、屈指のカウンター使いなんだぜ! なぁ、ゴウタ!?」

 いでたちや髪色だけでなく、顔まで真っ赤にしたユウジが、ゴウタの巨体にしなだれかかりながら、呂律の怪しい声を上げた。

「ヘイト集めるスキルの、『ウォークライ』と、カウンターの合わせ技が得意な重装戦士だからね。戦闘ではすっごく頼りになるよ」

 マコトが、信頼に満ちた眼差しでゴウタを見つめながら言うと、重装戦士は照れた様子で微笑む。

 マコトの指揮で、軽装戦士のユウジが斬り込んで敵の連携を乱し、ゴウタがカウンターで迎撃、それをミサキとトモコが中距離から支援、見事に噛み合ったチーム編成だ。

 そこにわたしが加わって、果たして居場所はあるのだろうか? などと、今更ながら、不安を感じてしまう。

「そうだよねー、そこにルシールさんが加わってくれたんだから、アタシたち、チームランキングの上位、狙えるんじゃない?」

 わたしの憂慮を振り払うかのように、ミサキが明るい声を上げた。

「うん。そう思うよ。ルシールさん、頼りない仲間だけど、よろしくね」

 ゴウタが、真摯な口調で声をかけてくる。

「僕からも、あらためてお願いするよ。力を貸して欲しい」

 マコトに真剣な表情で見つめられると、ドキドキしてしまう。

「えっ、ちょ、ちょっと改まりすぎ! わたしは最初からそのつもりだよ。わたしにできる限りのことを、このチームのためにする。そのために加入したんだから。よろしく……」

 本当に、このチームに入って良かった……そう思いながら、わたしは微笑んだ。


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