第4話 悪夢の続き
高機動車の中にあるテレビのモニターでは、まだテロリストが喋っている。
筋肉質な軍服の男で、ベレー帽を被ったヒゲの生えたワイルド風の男だった。
「我々ギーク王国の民は、新たな軍事力を開発した!この力「魔法」の前に人間の軍事力では太刀打ち出来ないだろう!さあ、降伏し従属を申し出るか、あるいは死か、人類よ、選ぶ時だ!」
(魔法?ギーク王国?ファンタジーかよ!いや、そもそも地球上にそんな国は無かったはずだ、ってことはテロリスト集団が勝手に作った名前なのか)
海人はテレビ画面を自衛隊員と一緒に真剣に眺めていた。
つまり、こいつらが、輝樹や健二を殺したテロリスト…
(こんな異世界みたいな事があってたまるか…異世界みたいな…)
彼はぶつぶつと「異世界…異世界」とつぶやき、自衛隊員に「大丈夫か」と問いかけられる。
テレビの画面には、まだ軍服の男が映っていて「デザート・アジール」と名乗っていた。
先ほどまで海人が居た町も写し出され、そこではスキンヘッドの男剣士が暴れている。
彼が振り回す剣の先から、まるでアクションゲームで見るような光る斬撃が飛んでいく。
それらは一撃でビルや一軒家を真っ二つにしてしまい。モニター画面を見る隊員は言葉を失っていた。
「まだ…お父さんとお母さんが!」
海人の家には父と母がいた、どちらも共働きで仕事に出ていた。
「無理だ!今は我慢しろ!」
「今戻っても、巻き込まれて殺されるだけだ!」
「君のように他の隊員が既に保護しているかも知れない」
「信じて待つしかないんだ!」
隊員達に説得されて、海人はとりあえず落ち着いて、目的地までおとなしくしていた。
テレビ画面上では、今も町を破壊する男の姿がある。
彼は副将軍、デネブ・カイトスと名乗っていた。
彼は止まらず、海人への町への攻撃をやめなかった。
そして最後はギーク・ハザードが魔法の詠唱をして飛行船の上から虹色の炎を降らせて来る。
海人の住んでいた町はその虹色の炎に焼き尽くされて、更地にされていった。
目の前の光景が信じられず、頭の中がパニックになってしまう。
「うわあっぁぁぁぁああああ!!!」
テレビの光景に向かって海人は泣き叫んでしまった。
再びギーク・ハザードが電波ジャックしたモニター画面上に現れて話を始める。
「もしも助かりたくば、試験に合格し、麻呂の民になれ!」
(試験?いったい何を…)
すると横の軍服デザートが説明を始める。
「日本各地に、我が軍の試作品を投入した、それらから生き残った者だけを配下として認めよう」
「期限は1月やる、ありがたく思え」
デザートの横から現れた青髪ロングの赤い瞳の女が言った。
「ホッホッホッ♪では、愚民共の無駄な頑張り、楽しませて貰うでおじゃる」
映像はそこで終わった、海人も精神的に疲れ、自衛隊の高機動車両の中で眠ってしまった。
―――そして、目を覚ました―――
海人は混乱する、あの世界はいったい何なのだろう。
もしや本当にあちらが現実で、こっちが夢なんじゃないかと思えてくる。
(自分はもしや、覚めない夢を見てるんじゃないか?
それとも、死の寸前、走馬灯のように過去の景色でも見ているんじゃないのか?)
考えれば考えるほど、精神的にも落ち込んでしまいそうになった
しかし、考えてもわからない、隣には健二が寝ているし、宿にも泊まれた。
相変わらず宿の中に人は誰もいないけれど、食べ物はあったし、なんとかなった。
水も出るし電気も付いた、不自由だと思う事は特にはない。
鏡で自分の疲れ果て、やつれた顔を見る。
(駄目だ、このままじゃ、まずはこの世界を把握しないと)
海人は風呂場で顔を洗い、マントを羽織り、剣を持ち、いつもよりビシッと決めた。
自分の頬をパンパン叩きしっかりしろと気合いを込める。
「健二起きろ、ご飯食べて、さっそく冒険だ!」
「え…?今日も行くの?もう勘弁してよぉ海人氏…」
彼は慌てて飛び起きて、朝食の席へ向かってくる。
自信はないが仮説はいくつかある。
1つ目はこの今の世界そのものが奴らに見せられている世界と言う可能性。
2つ目は俺が夢を見ているか、ショックで頭がおかしくなって、幻覚を見ている可能性。
どちらも考えられる。
後者であれば自分次第だし、前者であれば、もう終わりかも知れない。
しかしゾンビを倒せたわけで、例えこれが奴らに見せられてる世界にしろ、幻覚だったとしても、不思議な力は存在しているわけで、剣を出現させたりゾンビを倒す事は出来たわけだ。
もしかすると、この世界で俺は、強くなっているのかも知れない。
そして前者の場合に、黒幕はあのギークとか言う男ではなく、あれは本当に幻覚で、ただこの世界の魔物に幻覚を見せられているだけって可能性も無いとは言い切れない。
何故なら、俺の頭の中にはあの夢の記憶と、現実世界で何も起こらなかった記憶の両方があるからだ。
ギーク・ハザードとか言う化け物が来ない世界で、健二が家に遊びに来ていた記憶がまさにそれだった。
つまりどちらが現実の世界で、どちらが真実なのか、もはや海人には理解出来なかった。
そもそも現実的に考えれば魔法を使うあんな奴らはファンタジー世界の生き物で、いわばゲームのキャラクターでしかない。
空から炎を降らしたり、ビルを爆破したり、斬撃が飛んだり、剣でビルをぶった切ったり…
あんなのは人間の出来る事じゃないんだ、だからあれはやはり、幻覚か夢として考えるのが正しいだろう。
海人はその情報を、朝食の果物を食べながら健二に話した。
「じゃあさ、この世界にそのギークって奴はいたりするのかな?」
彼が俺と同じ疑問を口にした。
「そうさ、今日はそれを確かめるため、探索の範囲を広めようと思っているんだ。行くぞ健二、この世界が絶望なのか、希望なのか、知らない事には何も始まらない!」
海人の目は昨日のように、自信を取り戻し、装備を整えて出発の準備が完了した。




